警告
- 所謂炎上に関する記事です。
- 加筆修正の際は、他所のそれら同様然るべき慎重さ・冷静さ・中立性をお忘れなく。
- 本記事は項目肥大化とその内容に伴い、パルワールドの本記事から隔離したものです。騒動に関して、該当記事への追記はお止め下さい。
概要
株式会社ポケットペアが制作したオープンワールドモンスター育成ゲーム「パルワールド」のアーリーアクセス開始に伴う一連の騒動。
2024年1月19日の全世界同時解禁から8時間で100万本の記録的な初動売上を出し、2月1日月時点で1200万本の王台を突破(Xboxge-mupasuを含めると1900万)。
steam同時接続最高記録はCounterStrike2を追い抜き歴代2位となった(2018年のP.U.B.G以来の200万人超)。
こうして商業的には間違いなく大成功を収めた一方で、
様々な作品のキャラデザやゲームシステムを堂々と模倣する姿勢・方針に関しては、
- 「考えなしの単純な引用の張り合わせのみで制作コストを削減するのはいかがなものか」
- 「他作品からの引用だとして、それが『オリジナル』となるのであれば、今後のクリエイティブ業の衰退に繋がる恐れがある」(これが一連の騒動の一番の根幹ともなっている意見である)
という意見も上げられ、このため、
- 「オリジナリティとは、そして著作権とは何なのか」
- 「何をもって『パクリ』と『オリジナル』の線引きとするか」
といった、多くのクリエイターにとって創作の根幹を揺るがしかねない大論争に発展することとなった。
「パル」のデザインに関する波紋
特に露骨な模倣を受けたユーザーの母体が全世界で1000万を超えるであろう「あちら側」のファンからは大量の問合わせが寄せられ、SNS上の投稿には過激な不買運動や、製作側のスタッフに対する誹謗中傷や殺害予告とも取れる一線を越え掛けたものも出た。
これを受け、代表・溝部拓郎氏が誹謗中傷を止めるよう呼び掛ける事態ともなっている。
検証動画?
海外では「パルの3Dデザインがポケモンのアセットを引き抜いている」と主張する検証動画まで出た。
ただし、これは一般人の検証であり、
- 検証用に引っ張り出した本家本元の3Dモデルは一体どこから出て来たのか
- パルワールド側の3Dモデルは未実装データであり、やはりどこから出て来たのか
という致命的な問題がある。
内容面も主観に偏った判定や印象でこじつけしており、輪郭線やメッシュ割れが一致しているかどうかには触れていない。
模範元への風刺?
溝部氏が過去に任天堂ハードを揶揄するようなツイートをしていたり、『パルワールド』が発売前にポケモンを殺害して解体する2次創作動画をパロったショート動画を投稿するなどしており、ポケモンファンの間ではこのことも批判の槍玉に挙げられることが多い。
同社は以前から既存のゲームの要素を融合させたゲーム作品を作り続けてはいたものの、デザインという1番人目に付く部分を借用したり、上述のモンスター解体動画など露悪的な宣伝に手を出したのは今回が初。
キャラの類似性も含め、これらの状況から、肯定論者・否定論者共に、パルワールド側が意識してゲームを制作していたのは明白だという点では見解が一致している。
一部では、「茶化したり風刺したりする、所謂スタンダップ・コメディとしての意図もあったのではないか?」という説もある。ただ、そう仮定した場合、意図的な模倣及び挑発行為を行ったことを認めることとなるため「デザイン借用は芸術に付きものであり、そのことで腹を立てるのはお門違いである」という後述の擁護論とは噛み合わなくなってしまうことから、仮にポケットペア側にそうした意図があったとしても表向きはそのことを認めることはないと考えられる。
反論
パルワールドが叩かれている一方、
- 「モンスターとの直接的な戦闘や、モンスターの解体・調理など、あちらでやりたくてもやれなかったことを出来る。寧ろそうした要素をタブー視して一向にやらせてくれなかったり、描写を曖昧にしてお茶を濁しているあちらが悪い」
とポケモン側の保守的な作風を逆に批判するユーザーもちらほら見られる(ただ、確かにあちらもあちらで多くのユーザーが不満を感じる点も少なくはないものの、大抵はシステム面の不便さや不具合の多さ、ストーリーの稚拙さなどに関することが多く、作風にまでダメ出しをするのはお門違い、それがやりたいなら最初からそっちをやればいいのに、という意見も多い)。
上述の通りキャラデザだけを見て毛嫌いしている面は強く、ゲームシステムはデザインの模倣元とは異なる面が多く(オープンワールドクラフトサバイバル)、やってみればこれはこれで面白いと評価する声も増えつつある。
また、これとは別に、「キャラやコンテンツ模倣は以前から大なり小なり行われて来たもので、パルワールドだけが殊更に非難されるのはおかしい」「少なからず模倣的な要素を含むからといって、その都度コンテンツを潰す様なことをして行けば、逆にクリエイターが委縮して創造の自由性が奪われてしまい、それはそれでクリエイティブ業を衰退させることに繋がる恐れがある」という反論もある(詳細は後述)。
特許権侵害問題
株式会社ポケモンの声明
パルワールドが果たして著作権的に合法か否かの議論がネット上で大きく紛糾する中、2024年1月25日に『ポケットモンスター』の版権管理及びIPビジネスを手掛けている株式会社ポケモンが公式声明を出した。
株式会社ポケモン公式コメント |
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お客様から、2024年1月に発売された他社ゲームに関して、ポケモンに類似しているというご意見と、弊社が許諾したものかどうかを確認するお問い合わせを多数いただいております。弊社は同ゲームに対して、ポケモンのいかなる利用も許諾しておりません。なお、ポケモンに関する知的財産権の侵害行為に対しては、調査を行った上で、適切な対応を取っていく所存です。弊社はこれからもポケモン1匹1匹の個性を引き出し、その世界を大切に守り育てながら、ポケモンで世界をつなぐための取り組みを行ってまいります。 |
コメントが発表された当初、大多数のファンは「何かあったらこちらで対応するから、ファンは騒ぎを大きくしないでほしい」という意味であると解釈し、これ以上騒ぎ立てるのは株ポケ側にとっても迷惑になるという論調が強まっていったことから、パルワールドに関する議論は次第に下火となり、一時はネット上からも完全に忘れ去られていた。
しかし……
裁判へ
それから約8ヶ月後の2024年9月19日、任天堂知的財産部と株式会社ポケモンが共同で『パルワールド』を提訴したことを発表した。
提訴内容は任天堂および株式会社ポケモンにより複数の特許権の侵害があるとしてポケットペアを提訴、侵害行為差し止め及び損害賠償を求めるというもの。
ここで勘違いしてはならないのは侵害行為として訴訟されたのはパルのデザインといった著作権ではなく、ゲームシステムやゲームプログラム(例として挙げると捕獲アイテムを投げて対象を捕まえるというゲームシステム)等の特許権であるということは留意しておくべきであろう。
その後、11月8日にポケットペア社のHP上で侵害したとされる特許の詳細が公開され、併せてゲームの差止め及び特許の登録日から訴訟の提起日までの間に生じた損害の一部を損害賠償として求めるとする訴訟の内容も公開された(リンク)。
ちょうど、ポケットペアは翌週から始まるTGS2024で『パルワールド』のブースを出展予定であり、プレイステーション5版試遊台も設置することが決まっていた。さらに、提訴の約1ヶ月前に、ポケットペアはソニーミュージックやアニプレックスとの合弁企業である「株式会社パルワールドエンタテインメント」を設立し、グッズ販売やメディア展開等より多角的な分野への進出を発表したばかりであった。
元々、任天堂は余程のことがない限り特許権を振りかざして特定ゲーム会社を訴える様な行動に出たことはなく(任天堂に限らず、大手ゲームメーカーは今後のゲーム業界の発展のためにある程度の特許無断利用は黙認している節がある)、ゲーム業界やファンの間では、パルワールド側の一連の挑発的な動向が任天堂及び株式会社ポケモンの逆鱗に触れたのではないかとする説が有力である。
また、パルワールドエンタテインメント出資会社であるソニーミュージックとアニプレックスは、プレイステーションシリーズを発売しているSCEIと同様、ソニーグループに属する企業であり(アニプレックスはソニーミュージックの傘下なので、ソニーの孫会社ということになる)、任天堂にとってはある意味競合関係に当たる。自社ゲームを模倣したかのようなゲームを支援するソニーグループ側への牽制も兼ねて今回の裁判に踏み切ったという事情もあったのであろう。
また、これにより、1月に発表された声明も、一部の過激なファンを鎮静化させるという目的の他に、パルワールド側にこれ以上挑発的なビジネスを行うことを控えるよう呼びかける、一種の最後通告としての意味合いがあったことが明らかとなった。
なお、任天堂は米国でも日本と同様の特許出願を行ったことが明らかとなっており(参考)、ファンの間では米国でも同様の訴訟準備を進めているのではないかという見方が有力視されている。
ただ、米国の特許許諾基準は日本のそれと比べると遥かに厳しく、今回申請された特許のいくつか(その内の1つは、上記の捕獲アイテムに関するものであった模様)は、特許申請に必要な条件を満たしていないとして拒絶されたとのことである。
ただし、最終拒絶ではなく、出願内容訂正の猶予が与えられており、訂正した上で改めて申請すれば受諾される可能性もある。また、任天堂が米国で取得した特許は他にも多数存在し、それらは、パルワールド発売よりもかなり前の2022年に出願されたものとなっており、内容的にパルワールド訴訟でも利用可能と見られていることから、仮に今回出願した特許が最終拒絶されたとしても、米国国内でパルワールドを特許権侵害で提訴することは可能であると考えられる。
ポケットペアの声明
一方、ポケットペア側は、今回の訴訟に対して
- 「パルワールド運営及び提供において、中断や変更の予定はない」
- 「訴状を受領次第、必要な対応を行う」
- 「ファンの皆様のため、そしてインディーゲーム開発者が自由な発想を妨げられ萎縮することがない様、最善を尽くす」
- 「今後の訴訟手続を通じて、当社の見解を主張していく」
と発表し、現時点では任天堂及び株式会社ポケモン側と全面的に争う姿勢を示している。
纏めると、「大手ゲームメーカーが特許権を口実にインディーの自由な発想に基づくゲーム創作を潰そうとしているから、自分達はインディーを代表して徹底抗戦する」という趣旨である。
過去の経緯
当初、ポケットペア側は法的問題はクリアしているとの見解であった。
そもそも、作品を世に出すに当たっては厳しい審査が必要となり、配信前にあまりにそっくりすぎて没になったパルもいる様であるが、逆にいえばそれ以外は「直ちに法廷に持って行かれる様なものではない」という専門家のお墨付きを得ていたということである(本作はタイトル発表から2年半かけて世に出たので、法的に問題ないという主張が事実であるとすれば、開発中にあちら側が世に出した作品との兼ね合いもあったはずで、一定の交渉が行われていたのでは?>とも推測されていた)。
「見た目が似ている」という視点から裁判に持ち込めるかどうかについては、訴訟以前から多くの専門家が懐疑的な反応を示しており、事実2020年に発売された『Temtem(テムテム)』が訴訟時点でも健在である。
今回の訴訟の焦点もあくまで特許権であって著作権ではない。これは、上記の事情から著作権絡みで争っても勝てる見込みがないと任天堂及び株ポケ側が判断したからであると考えられる。
また、海外有志が制作した人間キャラとパルを“あちら側”のキャラに丸ごと置換えてしまうMODに関しては、速やかに任天堂及びポケモン公式によって使用禁止され、『パルワールド』側も既に当時からMOD導入には慎重な姿勢を取っていた(大手MOD共有サイトは既にアップロードを認めないところも出ていた)。
この様に、一応、パルワールド側も露悪的な商法こそしていたものの、“あちら側”に対して一定の配慮をしている部分はあったといえる。
訴訟への反応
国内
今回の訴訟に対する反応のほとんどが「想像通り」とのことであり、驚きの声は少ない。寧ろ著作権ではなく特許権侵害での訴訟に踏み切ったことに驚く者も少なくなかった。要するに「やっぱりな」である。
少なくともパルワールドがポケモンを意識したゲームであることは、誰が見ても疑い様がないため、訴えを起こした任天堂側を批判する声は極めて少なかった(全くなかった訳ではなく、特に任天堂アンチのはちまでは海外における反応もあり特許ゴロであるという論調を積極的に展開している)。
その後にポケットペアによる訴訟に対する声明文が公開されると、その声明内の
- 当社(ポケットペア)は小規模なインディーゲーム開発会社です
- インディーゲーム開発者が自由な発想を妨げられ萎縮することがない様、最善を尽くす
等の文面が、読んだ者にインディーゲームメーカーとしての立場を盾に、任天堂を「インディー業界全体の敵」と露悪的に見せようとしているかの様な印象を与えるという指摘が出る様になった。
これにより、それまで自体を静観していた他インディーゲーム開発者からは「勝手にインディーゲーム代表を気取るな」と顰蹙を買うこととなってしまった他、2ヶ月で692億円もの莫大な売上を上げたことや、ソニーやアニプレックス等の大企業と蜜月関係を築き、IPビジネスを展開予定だったことを挙げ、「これで今更インディーゲームメーカーを名乗るのはいささか無理があるのではないか」との批判、疑問の声も強まってしまった。
加えて、この主張の是非は置いておくにしても、訴状も受取っていない段階で被告側が原告側に対してこのような挑発的な声明を出すのは裁判においては絶対にやってはいけない悪手である。これは裁判官も含めた第三者からの心象を悪くするのは勿論のこと、最悪の場合は裁判の結果にも(被告側にとって悪い方向へ)影響を及ぼす可能性もあるためである(民事裁判において何かしら声明を出す際に「コメントは差し控える」「訴状を読んで対応を検討したい」等の淡白な内容が多いのもこれが理由)。
そのためポケットペアの企業としての法的対応能力に対する疑問の声まで上がることとなった。
なお、パルワールドPS5版の日本国外での発売及びTGS2024への出展は予定通り行われており、特にTGSブースは大盛況であったという。一方で、今回の訴訟の影響からか、当初PS5版の日本での発売は無期限の延期となっていたが、2024年10月4日に唐突に発売が開始された。
国外
一方で、国外では逆にポケットペアを支持し任天堂・株ポケを批判する声が強い。
これは、海外ではフェアユースの概念から著作権への意識が日本と比べて低く、本作のパクリ疑惑への問題意識が元より希薄であったことが影響している(だからこそあそこまで海外を中心に大ウケし、爆破的な売り上げに繋がったとも言える)。
またそれにに加え、任天堂がポケモンやスーパーマリオなどのブランドを自社ハードで独占していることに不満を感じている他機種ユーザーが多いこと、更に今回の特許権侵害訴訟を『大手ゲームメーカーによるインディー会社に対する特許ゴロ行為』という見方があることが関係していると思われる。
この問題でもそうであったが、国や地域によって価値観が異なれば、問題の見方も大きく変わってくるということの好例であるといえるであろう。
その他
提訴から間もない10月10日に、ポケモンシリーズの制作を手掛けているゲームフリークが大規模なサイバー攻撃を受けたことを公表した(詳細はこちら)。
時期が近かったこともあり、一部のポケモンファンからは「海外のハッカーがポケットペアを提訴した任天堂・ポケモン側に対して報復や嫌がらせのために行ったものではないか?」とする見方もあったが、不正アクセス自体は提訴前の8月に行われたもの(時系列のソースの一例であることが明らかになっている。
要するに単なるニアミス)であり、一般人の知り得ない水面下のやり取りを考慮するのではなければ完全にお門違いな理屈と言える。
社会的影響
YouTuberや実況者界隈では、ホロライブのように実況動画を積極的に配信する向きがある一方、にじさんじのように“あちら側”に配慮してか『パルワールド』の配信を一切行っていないケースもある。また、芸能事務所の中にも、“あちら側”の逆鱗に触れることを恐れ、所属タレントに対してSNS上で『パルワールド』に関する話題を挙げたり、プレイ動画を投稿しない様通達を出したところもあるという報道がある(参考)。ただし、ソース元は自他ともに認める低俗ゴシップ誌で到底信用できるようなものではなく、実際、ホロライブは後に任天堂絡みの仕事もしているため、パルワールドに関する実況動画を上げたことで任天堂やポケモン側の心象を損ねたということはなかった様である。そもそも誰がプライベートでどんなゲームをプレイしようが、それは個人の自由であり、当然ではあるがゲーム会社側が介入すべきものではない。
また、パルワールド自身が模倣される側となるという珍事も発生した(リンク)。
パクリか?パロディか?オリジナルか?
この2つの区別は曖昧ではある。
ゲーム・漫画・アニメ・映画といったエンタメコンテンツ、引いてはそのデザインにおいて、特定版権作品のパロディやオマージュはそんなに珍しい話ではない。
企画書や設定資料に参考としてキャラデザやモーションなどの元ネタを記してあったり、「良く見れば分かる人には分かる」様にさりげなく忍ばせることは良くある話である。
そもそもの話、元ネタが存在しない完全なオリジナルなど極めて稀である。
多くの場合、既存の作品、辿って行くならば古くから伝わる神話や昔話、実在の物や生物、現実に起こった事件などに何かしら影響を受けたり、参考としたりしている。これもまた一概に「パクリであり著作権侵害である」と断言出来ない一因となっている。
何なら『ポケットモンスター』自体も、他社が確立させたCRPGというジャンルから生まれたものであり、CRPG自体がTRPG模倣とでいうべき存在である。
ただし、何かしら既存版権作品を元ネタとする場合は、表面上からは分からない様にリビルドされることが普通である。
例えば、任天堂の作品でいえば、ポケモンやマリオシリーズの場合、デザインや能力等にウルトラ怪獣・ゴジラ・ガメラ・ライダー怪人・海外のカートゥーン作品等が元となっていると思われるものが見受けられるが、それらもちゃんとアレンジを加えており物議を醸すレベルとはなっていない。
また、ポケモンに寄せ過ぎて物議を醸したケースは以前にも存在したという指摘もあるが、今回の場合は絵のタッチや色彩から引用元が容易に連想出来ることが問題とされている。
とはいえ余りにあからさまなパロディは一種のギャグやリスペクトとして寧ろ好意的に見られることもまた然りである。ただ、同時にやり過ぎて公式を激怒させたケースや、特級呪物と化して封印されたケースや、ネタ元に寄せ過ぎて炎上したケースもやはり存在する。
パルワールドがこれを意識しているかどうかは不明であるが、この辺りもパクリとパロディの線引きを難しくさせる要因となっているといえよう。
また、創作は長い歴史の中で無限に等しい膨大な数のキャラが日夜、誕生し続けているため見た目が被らないキャラを生み出すのは最早不可能な数が存在しているため、「ありふれた表現の一致」として著作権レスになってしまっているデザインは多く存在する(ポケモン公式もインタビューで、ポケモンカードに関わったイラストレーターもこのことを言及していたことがある)
参考:京都アニメーション第1スタジオ放火事件の「「パクられた」に関して」
参考:さいとうなおき先生がバルワールドについて言及している動画
他作品への影響(とばっちり)
龍が如く8
発売がパルワールドの丁度1週間後と近かったことや、ミニゲームの中にポケモンのパロディである「スジモンバトル」「不審者スナップ」があったことから比較対象として挙げられ、流れ弾を喰らう様な形で「スジモンバトル」がトレンド入りしてしまった。
ポケモンが上記の公式声明を出した際にジョーク気味に「スジモンの方が対象なのではないか」といわれたり、提訴発表の際も「スジモンは任天堂に筋を通したから許された」「スジモンを仲間にする時もアイテムを投げるのではなくお歳暮を渡して誠意を示すだけであるから、特許権侵害とならなかった」とネタとされたりもした。
なお、『龍が如く』シリーズは、これに限らずミニゲームに様々なパロディをぶっこんでくることに定評がある。
しかし、これらは槍玉に挙げられるどころか寧ろネタとして好意的に受止められることが多い。
これに関しては、「メインはシリアスな任侠もので、これらのパロディはあくまでおまけ」というスタンスを徹底しているからである。
加えて、前作で主人公がドラクエ大好きを公言し、「勇者」を自分の理想像として語るなど、他作品へのリスペクト精神を高く持った上で、ブラックな要素をほとんど含まない明るいパロディを送り出したことで、「前作を見る限り今回も元ネタを貶めるような表現はないであろう」とファンから一定の信頼を得ていたのも大きかったと考えられる。
『パルワールド』の1件が「スジモン」に飛び火したことに関しても、過去作の迷台詞に準えて、「誓ってパクリはやってません」とネタとされた末、「どんな内容なのか気になってきた」「そこまで引き合いに出されるくらいならむしろやってみたいまである」という意見が出るなど、発売元のセガにとっては寧ろ宣伝の上でプラスに働いた面が大きかった。
いずれにせよ、「あからさまなパロディ過ぎて、一種のギャグやリスペクトとして寧ろ好意的に見られた」パターンの好例と言える。
ゴッドイーターシリーズ
過去に「モンスターハンターのパクリ」と揶揄された経緯があったことから飛び火。今更の様にトレンド入りしてしまった。
担当Pであった富澤祐介氏も反応を示しており、「当時も議論はありました」としながら「現代には現代の議論と、リスペクトが、ジャンルや業界を成長させてくれると期待します」と語っている。
また、モンハンシリーズプロデューサーの1人であった小嶋慎太郎氏も、「別に個人的には気にしてなかった。マネされてやっと2人前であると思ってたし。元祖として負けるつもりはさらさら無かった。(中略)それおもろいゲーム作ったら良いじゃん。と思ってた。」と元祖であるからこそいえる良い意味で挑発的なコメントをしている。
2024年3月7日、PS4版三部作を纏めたトリロジーパックが突如配信開始されたが、このとばっちりと関係あるかは関係者のみぞ知る…
類似の騒動
『パルワールド』発売と同時期にX広告を載せていたゲーム。
こちらはまだ事前登録受付中であるが、広告に描かれたキャラや選択画面がこれまたポケモンを彷彿とさせるものとなっており、『パルワールド』に便乗したのではないかという疑惑がもたれている。
勇者のものは魔王のもの
2024年3月24日にDLより配信開始された。
ワンクリックごとに土を掘ってダンジョンを作り、その過程で生まれる魔物達を使って勇者を撃退するドット絵風RTS。つまり、アレっぽい作品。
アレ自体が「勇者と魔王」の定番の構図のパロディの何番煎じでありながら独特なゲームシステムでシリーズ化した作品であるため、パロディのパロディと言う立場になる。
本家の方が5年近く続編が出ていない、処女作ライク+買い切り型となると更に昔になってしまうため、ある意味しかたないか。
ロストアーカディア
まんまアレとアレを足して2で割った様な世界観であるが前者はポストアポカリプスだからそれっぽくみえるだけといい訳が付き、後者に至っては仮面ライダー……特にバトルロイヤル物であった作品の模倣みたいな物であり、例え元ネタが丸わかりでも独自の要素があるなら訴えないという紳士協定が結ばれている状態である。
本騒動や上記のキノコ伝説が落ち着いて少し経ってから事前登録を開始したゲーム。これまたキャラデザがポケモンのそれに似ている………。しかも後者に至っては「ゲットだぜ!」などとどこかで聞いたようなフレーズも。ある意味「ポケモンを堂々と模倣すること」が今年のブームとなっており、そのことを象徴しているのかもしれない。
最後に
このように様々な疑問点を抱えている『パルワールド』であるが、現在ではポケモンとはまた違った面白さを持つゲームであることがゲーム界隈にある程度認知されている。
そもそも、発売5日半で全世界800万本という超大手でも容易に成し得ない偉業をインディーズがいとも簡単に成し遂げたという点に関しては、「うわべだけではない何か」がないと説明できないことは間違いなく、その点に関しては十分評価されて然るべきであろう。
一方で、『パルワールド』側が公式主導で、模倣元とそのファンが不快感や「著作権侵害」を感じるような露悪的・挑発的な宣伝をすることを選択し、実行した(「模範元への風刺?」の項にある通り、意図的に選択した結果と考えるのが妥当)挙句、模倣元を本気で怒らせて裁判沙汰にまで発展してしまったのもまた事実であり、そういった意味では『パルワールド』は一種の炎上商法を行っているとも言える。
「炎上商法で売れたただのパクりゲー」と一蹴するか、「様々な作品の長所を組合わせてさらに昇華させた画期的な作品」と見るのか。
この『パルワールド』というゲームをどう評価するのかはあなた次第である。
関連タグ
ブレスオブザワイルド ARK:Survival_Evolved モンスターハンターシリーズ
同様に法廷まで行った例
- ドンキーコング、ユリ・ゲラー:任天堂が過去に法的争いになって来た著名な事例の中でも最も知られているケース。
- ティアリングサーガ・白猫プロジェクト:こちらは任天堂と裁判になったケース。
- PUBG:世界的にヒットしたFPSバトルロワイヤル。中国で制作された『荒野行動』とゲームシステムが酷似していたため裁判となったが、決着が付かないまま和解。両者は今も運営を続けており、結果的に共存に至っている。
和解、もしくは自然消滅
- デジモン、妖怪ウォッチ:ポケモンとの比較対象に挙がることが多かったコンテンツ。最終的にはそれぞれ違った作風により共存している。
- ドラゴンクエストシリーズ:当初はポケモンの方がこれのフォロワーゲームとして生まれた節もあり、後にはDQ側が逆輸入する形で模倣するケースも見られた。
- プロジェクトKV:ブルーアーカイブの元スタッフが立上げたプロジェクトであったが批判が殺到し、完成することなく僅か1週間程度でプロジェクト自体が消滅したケース。詳細はこちら。
模倣側の勝利(?)
模倣が多過ぎて一ジャンル化、訴えようがなくなった例。
上記の社会的影響の通り、元祖にとっては名誉、有名税ではある。