天野陽菜
あまのひな
「ねぇ、今から晴れるよ」
CV:森七菜
概要
東京で暮らし始めた主人公の森嶋帆高がある日偶然出会った、長い黒髪を二つ結びにした17歳の少女。
誕生日は8月22日(小説版、144ページ)。つねに明るく快活に振る舞うことを忘れない気丈さの持ち主であり、現在はとある事情によって小学生の弟である天野凪とふたりだけで暮らしている。
”祈る”ことで空を晴れにできる不思議な力を持っており、都市伝説の世界では「100%の晴れ女」という触れ込みのもとにその存在をささやかれている。
いままで勤めていたアルバイトを突然辞めさせられ、生活費を稼ぐためにやむなく違法な仕事の紹介を受けようとしていたところを帆高に助けられた陽菜は、彼を元気づけるために自身の力を明かす。そして、その力を目の当たりにした帆高のアイデアによって、街の人々に「晴れ」を届ける晴れ女としての仕事を始めることになる。
人物
容姿
つやつやとした長い黒髪を二つ結びにしてふわりと垂らした、黒目がちな大きな瞳の少女。(小説版、68ページ、116ページ、157ページ)
作中全体を通してノースリーブのパーカーに水色のショートパンツという出で立ちで登場しており(小説版、74ページ、95ページ)、よく動く表情やころころ変わる声のトーンなどと相まって、彼女のまとう快活さをよりいっそう強調している。(小説版、8ページ)
なお、10代の後半にしては幼い顔つきや白くて華奢な体躯、作りたてのように滑らかな頬や唇などが醸し出す雰囲気は、彼女と初めて知り合ったときの帆高をして「とても年上には見えない、せいぜい同い年か、なんなら一つ二つ下かと思っていた」というような、実年齢との隔たりを感じさせるものとなっている。(小説版、12ページ、78ページ、99ページ、122ページ)
性格
陽射しのような明るい笑顔を絶やさない、にこにことした快活な性格の持ち主。(小説版、78ページ、157ページ)
年上の人間と接する際にはしっかりとした受け答えのもとに礼儀正しい行いをとっているものの(小説版、114ページ)、親しい間柄の人と一緒にいる際にはころりとした笑顔や寂しげな表情などをくるくると変えており、「虹色の嵐に吹かれているようだ」という目まぐるしい印象を与えている。(小説版、100ページ)
また、弟とふたりだけで暮らしている現状としっかりと向き合い、「私は——早く、大人になりたいんです」と自立する覚悟を口にするなど、苦境にめげずにまっすぐに未来を見つめるたくましさも併せ持っている。(小説版、161~162ページ)
家庭環境
彼女が暮らしているアパートは、山手線田端駅の南口の先にある細い坂道の上に建てられている。(小説版、90~91ページ)
そのアパートの二階の一番奥にある陽菜の部屋は、決して広くはない空間に多くのものがあふれ返っているにもかかわらず不思議と雑然とした印象を与えない、色とりどりのハンドメイドの調度品に囲まれた楽しげな空気を漂わせたものとなっている。(小説版、92~94ページ)
家には両親はおらず、現在は弟の凪とふたり暮らしを送っている(小説版、94ページ)。彼女たちの母親は一年前、長い闘病生活の末に亡くなっており、陽菜はその日からずっと自身と凪の生活のためにアルバイトに精を出すことを常としていた。(小説版、138ページ、149ページ)
「晴れ女」の力
概要
空に向かって”祈る”ことで、雨雲を退けて天気を晴れにすることができる不思議な力を授かっている。
雨雲を退けて晴れを呼べる範囲は彼女の周囲のごく限られた一帯で、晴れにできる時間もおおむね1時間程度であるものの(小説版、114ページ)、彼女が望めば時期・場所を問わずいつでもどこでも天気を変えることができる。
その存在は決して有名なものとして大々的に知られているわけではないが、オカルトや都市伝説の世界では「100%の晴れ女」という触れ込みのもとに、その噂を確かにささやかれている。(小説版、45ページ、59ページ)
経緯
陽菜の持つ「晴れ女」としての力は生まれつき備わっていたものではなく、物語の一年前に彼女が巡り合わせたある体験が大きな契機となっている。
一年前のある雨の日、数か月ものあいだ意識を取り戻さない母親に寄り添っていた陽菜は、不意に病室の窓から見える景色のなかでただ一点だけ、ぽつんと光の差し込んでいるビルの屋上があるのを目にする。誰かに呼ばれたかのように無意識的に病室を抜け出し、その光の差す廃ビルの屋上にたどり着いた彼女は、降り注ぐ陽光が屋上の一角にある小さな鳥居をまっすぐに照らしていることを認め、そこに向かって歩き出す。
鳥居をくぐる直前、両手を合わせながら「雨が止みますように。お母さんが目を覚まして、青空の下を一緒に歩けますように」と強く願った陽菜は、鳥居をくぐったその瞬間、自らが広大な青空の真ん中に浮かんでいることを知った。その大空を漂う過程で、彼女は積乱雲の頭頂に広がる緑の草原やそのあいだを回遊する水の魚たちなど、これまで誰も知りえなかった「世界の秘密」を目にするとともに、自分自身の意識が風や水、雲や大空といった世界の事象と一体になっていくのを知覚している。(小説版、10~14ページ、170~171ページ)
そしてその日以降、「空と繋がった」特別な人間のひとりとなった陽菜は、”祈り”を通して自らの意識を世界に遍在(へんざい)させ、雨や風、雲と一体になって自らの意思を空に届けることができるようになっている。(小説版、123~124ページ)
「晴れ女」の伝承
陽菜のような「空と繋がった」特別な人間は、古来から「天気の巫女」として崇められており、人々の願いを空に届けることのできる存在として神聖視されていた(小説版、139~140ページ、142ページ)。しかし、天気の巫女たちの強大な力には同時に重い代償も伴っており、「最後は人柱となって空に還る」「力を使いすぎると神隠しに遭う」「天地(ガイア)と一体になってしまう」等といった悲しい運命も背負わなければならなかったと伝えられている。(小説版、48ページ、142~143ページ、180~181ページ)
主要キャラクターとの関係
森嶋帆高
離島から家出して東京にやってきた16歳の少年。
陽菜は帆高のことを「帆高」と呼んでおり、対する帆高は「陽菜さん」と呼んでいる。
まだ陽菜がアルバイト先のファストフード店で働いていたころ、3日連続で来店してポタージュだけを頼んでいた帆高のことを気の毒に思い、彼のために店側に無断でハンバーガーを差し出したのがふたりが出会ったきっかけである(小説版、34~35ページ)。それからひと月後、辞めさせられたアルバイト先に代わる新たな収入先を探すためにやむなく違法な仕事の紹介を受けようとしていたところを、偶然通りかかった帆高になかば連れ去られるような形で助けられる。一時は追いつかれて窮地に陥るも、帆高が隠し持っていた実弾入りの拳銃を発砲したことによって双方ともに茫然となり、その隙をついて陽菜は帆高とともに逃げ切ることに成功する。(小説版、67~72ページ)
逃げ切った先の廃ビルのなかで、陽菜は一歩間違えれば相手を殺害していたかもしれない帆高を激しく非難するが、同時に身寄りのない家出少年であった彼の身を案じ、彼を励ますために廃ビルの屋上に上がって自らの持つ不思議な力を明かした。驚きを隠せない帆高に改めて自己紹介した陽菜は、重ねるようにして自身は来月に誕生日を控えた17歳であることを告げ、「年上には敬語ねっ!」と念を押すようにしながら彼と握手を交わしている。(小説版、72~79ページ)
その後日、陽菜は彼女の家を訪れた帆高から、陽菜の持つ晴れ女の力を使い、晴れを必要としている人たちに天気を届けるという「晴れ女ビジネス」を提案される。陽菜は最初こそ渋っていたものの、その後は順調に料金やWebサイトのデザイン等の調整を重ね、終日をかけて事業体系の完成にこぎつけている(小説版、98~104ページ)。そして、さっそく舞い込んだ翌日の依頼を皮切りに、都内に暮らす老若男女からのさまざまな依頼を帆高とともにこなし、確かな実績に裏付けられた事業の信頼を広く得ることに成功している。
陽菜は「晴れ女ビジネス」における一連の活動を通して、自身の生きる意味を見つけるきっかけを与えてくれた帆高に深い感謝を寄せており(小説版、207ページ)、とらえどころのないからかい混じりの振る舞いのなかにその本心を少しだけ含めながら彼と接している。(小説版、125~126ページ)
天野凪
陽菜の弟で、都内の小学校に通っている10歳の小学生。
陽菜は凪のことを「凪」と呼んでおり、対する凪は「姉ちゃん」と呼んでいる。
一年前に母親が亡くなって以降、陽菜は生活費を稼ぐためにずっとアルバイト漬けの生活を送っており、凪はそんな姉に対して自身の無力さを申し訳なく思うとともに、「姉ちゃんには、もっと青春っぽいことしてほしいんだよね」という応援の気持ちも抱いている。(小説版、149ページ)
また、陽菜が帆高とともに「晴れ女ビジネス」を立ち上げた際にも、翌日に控えた初仕事を成功させるための手伝いとして帆高お手製の巨大てるてる坊主を着用し、晴れを祈る姉のそばで駆け回りながら応援をしている。(小説版、105~106ページ)
関連イラスト
ノースリーブパーカー&ショートパンツ
浴衣姿
外部リンク
ネタバレ注意
のちに、本当の年齢が15歳であることが判明する。(小説版、216~217ページ)
母親を失っても弟と暮らすのに施設に入ることを嫌がったため、年齢詐称をしてアルバイトもしていた。しかし、そのアルバイトも嘘がばれてクビになってしまう。そのため、スカウトマンの木村に誘われて胡散臭い仕事に手を出そうとしていた。