概要
タイガーマスクに登場する敵組織「虎の穴」が、打倒タイガーマスクのために送り込んできた覆面レスラーの一人。
ひどいいかり肩で目鼻も口もなく、首の長いのっぺらぼうのように見える異様な体格と、首部分にアルファベットの「NO」と読める無数の小さな穴が開けられているのが特徴的。
無口でまったく喋らず、キュッキュッという奇怪な音を鳴らしながら常に頭をゆらゆらさせている。
この頭は鉄のように固く、頭突きが得意技。
作中での活躍
虎の穴は覆面レスラー世界一を決める「覆面ワールドリーグ戦」の開催を発表、タイガーマスクにも参加を要求。
ある貧しい孤児院で目にした盲目の少女に手術を受けさせるべく、そのための優勝賞金10万ドルのために、日本プロレスを裏切って世間から非難を浴びながらも、タイガーはリーグ戦参加を決意する。
出場レスラーが全員自分への刺客であり、殺意全開で襲ってくるであろうと知りながら。
ミスター・ノーはその一番手として登場。
強烈な頭突き攻撃でタイガーを苦しめたが、その異様な石頭の秘密に気付いたタイガーはミスター・ノーの首に集中攻撃を加え、遂に頭を引き千切ってしまった。
あまりの凄惨な光景に絶句する観客に、タイガーは引き千切った頭をかかげながら高笑いする。
「はっはっはっ、キラー・コワルスキーは耳を削ぎ落としたというが甘い甘い!
これぞ世紀の大反則なり!」
無論、これにはトリックがあった。
実はミスター・ノーの正体は、肌色の人口皮膚を着ぐるみとして着込んでいた小男の黒人レスラーであり、頭の部分には鉄球が仕込んであった。つまり常に頭上に鉄球を乗せていたから重みでゆらゆらしていたのだ。
そして首の部分の「NO」の文字の穴は呼吸用の空気穴だったというわけである。
しかし、試合後に虎の穴のマネージャーであるミスターXは、ミスター・ノーは元々は選手ではなく荷物持ち役で連れてきた補欠レスラーを数合わせで入れていただけだと嘯いた。
あれほど苦戦した相手が補欠であり、さらに強い相手がまだ6人も残っている。タイガーはこれから始まる地獄の死闘に不安を覚えながらも、闘志を燃え上がらせるのだった……。
余談
モノクロの原作でもかなり怪しいビジュアルだったが、アニメでは全身が肌色でさらに首が長く描かれ、どう見てもアレにしか見えないとして、ネタキャラ扱いされることが多い。
しかしこの、頭に鉄球を仕込むという常軌を逸したギミックは、まさにこの「覆面ワールドリーグ」の本質を表したものといえる。
同じく人工皮膚の体毛が全て麻酔薬を仕込んだ針になっているザ・ドラキュラや、覆面自体が凶器というかもはや武器になっているザ・ゴールデンマスクなど、勝敗以前にタイガーを殺すことが目的なので、完全に何でもありなのである。
その多彩な殺し屋レスラーとの死闘、盲目の少女のために汚名をかぶってでも戦うタイガー、最後に現れる謎の助っ人レスラーなどのエッセンスにより、「覆面ワールドリーグ戦」編は多くのファンから支持される人気エピソードだという。
なお、アニメ版の正統続編「タイガーマスクW」で、このミスター・ノーと同じ姿のレスラーが登場している。
試合シーンまでは描かれなかったが、タイガーマスクの遠い後継者である主人公「タイガーマスクW」との対戦を控えている場面で物語が終了した。