概要
物語の舞台となる架空の町。
現実のアメリカ・ニューヨークのマンハッタンにあり、劇中でもケネディ空港の廃墟が登場する。
過酷な環境から避難するために町の大部分はドームでおおわれているが、ドーム内部で暮らせるのは富裕層などの有力者のみで、それ以外の人間はドームの外を「アウト・オブ・ドーム」というスラム街として暮らしている。
ドーム建設会社である電力会社パラダイム社が実権を握っており、シティの人間にとってパラダイム社は町の全企業、自営業の親会社であり神にも等しい存在である。
ドームの中では人工太陽が設置され環境が整えられており、人間とアンドロイドが共存している。木や動物は失われたメモリーとして宝石よりも価値がある。
キリスト教を主体とする文化は否定されており、教会は廃墟と化しクリスマスはパラダイム社の創立記念日「ヘブンズデー」に、クリスマスプレゼントはパラダイム社の施しが変化したものとされるなど、宗教観念もパラダイム社が支配している。
街の中心部セントラルドームにはパラダイム社の本社ビルがそびえたっている。
一方で、パラダイム社社長アレックス・ローズウォーターはドーム外の人々を蔑視しているためドーム内外の軋轢は消えることがない
パラダイムシティの特徴として街全体が記憶喪失であることがあげられる。40年前に発生したメガデウスを用いたジェノサイドと見られる「何か」のために、それ以前の記憶、資料の大半を失ってしまったのである。この失われた記憶は通常「メモリー」と呼ばれる。劇中ではイギリスの地名が出てきたり英語が公用語であるにもかかわらずヨシフラ・ヤカモトインダストリーでは漢字が堂々と使われている一方でフランス語やロシア語などの文字の情報は失われている模様。
しかし、実際には終盤でビッグ・イヤーが言及した通り、「40年前の記憶がない街」という"設定"で何者かが作り上げた「舞台」であり、そもそも40年前の「何か」などは最初から存在していなかった。
街の住人達は「役割に関するメモリーだけを持った人物」と「40年前の『何か』をも知る人物」という二つの役柄に分けられ、さらにその上でそれぞれの役割を演じていたにすぎなかった。街の住人はロジャー・スミスを含むその殆どがアンドロイドに近い存在であり、個々人の役割に関するメモリーのみを持たされて街に配置された可能性が高い。言ってみればこの街は超巨大な舞台の上に敷かれた大掛かりな装置であり、ロジャーたちはそこで与えられた劇を演じる役者。そして視聴者は、彼彼女らが右往左往していく様をテレビの向こう側という席で視聴していくのである。
街の上空は常に厚い雲に覆われているが、実際にはその上に空などは存在せず、一つ一つがメガデウスサイズという舞台照明が照らしていた。(そのうちの一つはビッグデュオ・インフェルノの激突で破損している)。
シティの地下空間は非常に恐れられており、一般人は容易に近づかない。地下の奥深くはネクロマンディオと設定されており、歯車やゼンマイなどの機械仕掛けで作られ、メモリーの原因となった小さなセットが置かれ、集合的無意識が存在する。
パラダイムシティの全ての住民は本当は真実を知っているが、舞台の上では忘れているだけであるのだが、時折ふとしたはずみにキャラクターは舞台の上では知らないことになっているメモリーを思い出し、それを行動に移したり、話したりする。
エンジェルが『メトロポリス』を著し、この世界を演出していたと思われるが、ビッグヴィヌスの存在、メモリーに現れる戦争の顛末、ロジャーの正体など謎のまま。さらにはゴードンの語る話もどこまで本当なのか分からず、パラダイムシティが再生されたところで物語は完結したが、。Act:24の描写からすると、パラダイムシティという舞台のもとになったイメージはエンジェルの記憶=メモリーである可能性が高い。