「私の名はロジャー・スミス。この記憶喪失の街には必要な仕事をしている。」
概要
cv:宮本充
「THEビッグオー」の主人公。
黒揃えのダブルボタンスーツに身を包み、漆黒のセダン「グリフォン」を駆る青年紳士。
ネゴシエーター(交渉人)を名乗ってあらゆる厄介事の交渉や調停を請け負うことを生業とし、相棒の少女型アンドロイドと共に、記憶を失った街「パラダイムシティ」で巻き起こる難事件に挑む。
交渉人という仕事には強い誇りを持っており、例え途上で雇い主が死亡してしまっても事件を追い続け、イーブン以上に有利な条件を勝ち取るなどプロ意識は高い。
しかし、人の身で解決できない困難や身の危険が立ちはだかれば、謎多き巨大ロボットの操縦者「ドミュナス」となって障害を取り除く、探偵活劇とロボットアニメの主人公を組み合わせたようなキャラクター。
常に上等の服装で身を固め、会話には余裕と教養を覗かせる絵に描いたような紳士だが、意外と頭に血が昇りやすく、親しくなった人間相手には遠慮なく物を言う一面も。
また他人から束縛や支配を受けることを激しく嫌い、「屋敷に無条件で入れるのは女性だけ」「スミス邸に住む者はみな黒服を着ろ」など独自のルールを掲げる変わり者でもあり、仕事がなければドロシーに起こされるまで惰眠をむさぼりたがるなど、三枚目気味な所も見せる。
趣味は砂時計の作成と収集。黒服好みなのも、仕事柄ではなく個人的なこだわり。
交渉人だけあって基本的にはコミュニケーション上手なうえ、元軍警察出身で激しいアクションを演じたり体重130㎏もあるドロシーを支えるなど身体能力も高い。
苦手なものは、彼自身の出自にも関わるらしきバーコードとトマト。
愛すべき『自由』の人、最高のネゴシエーター
ファーストシーズン最終話でアンドロイドの『R・D』が躊躇無く人を殺し、与えられた殺人命令に従うことを「雨の中、傘をさすくらいに当たり前な行動」と言い切ったのに対し
「雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい…自由とは、そういうことだ!」
と返すのは、ロジャー・スミスという人物を象徴するワンシーン。
「世界の過去」が覆い隠され数々の謎が散りばめられた劇中でも、ロジャーはトップクラスに謎が多い人物だが、普段の彼はキザな余裕を漂わせて恰好良くキメてみせる紳士であり、自らの仕事に誇りを持つ社会人であり、ところどころで隙を見せながらも自力で立ち向かわんとする青年である。
そんなキャラクター造形は、世界や他人との関係性に悩むナイーブな少年が主人公となる当時のロボットアニメのアンチテーゼであり、自分のルールや拘りを信じつつ、他人とコミュニケーションを取り協調しようとするロジャーは、自分にも周りにも等しく『自由』があることを認め、一人で思い悩むのではなく調整や両立を目指して行動する自立した自由な男とも言える。
ドロシーの奇矯な言動に頭を抱えながらも夫婦漫才じみた温かさのあるやり取りができるのは、ロジャーが悪い意味でのナイーブさを持たず、やはりお互いがお互いを認め合い心を開いているからだろう。
ただ、ロボットが登場し活躍しなければ成立しないロボットアニメの宿命ゆえかビッグオーを召喚しての問題解決が必要な事態が毎度のように起こるので、「交渉しない交渉人」だとか「交渉人(笑)」とか「エセ紳士」などと呼ばれてしまうことも。外部出演で「およそ交渉と呼べるものではないな」「ここではネゴシエイターとしての私は不要なようだ」と発言したこともあり、プレイヤーから「交渉(物理)」と弄られるのがもはやお約束となってしまった。
もっとも、作中ネゴシエーターとして依頼された仕事はきちんと全うしている。
無人機械や言葉の通じない巨大生物などはともかく、ロジャーが“依頼者を代行して双方が納得できる結果を導く調整者”であることを取り止めてビッグオーの鉄拳を振るう相手は、思い通りにならないからとコミュニケーションを放棄し、人間一人では止められない一方的な「力」を振るい始めた者なのである。
「強大な力による破壊を、見過ごすわけにはいかない!」という台詞の通り、お互いのルールや利害を調整し、その上で可能な限り両立させる「ネゴシエーション」を自分の生業と見定めたロジャーからすれば、力あるがゆえの身勝手を『自由』と履き違え、周りを踏みつけにしたり押し退けたりする者達は野放しにできない存在。
そんな彼らが一方的な力をもって押し進むなら、それを押し止められるだけの力をぶつけて見せるのだという宣言が、開戦の一声「BIG・O! Showtime!」なのかもしれない。
最終話、世界のリセットを開始する“世界の演出者”との『史上最大のネゴシエイション』を成功させたロジャーは、未来へと向かい出したパラダイムシティーに第1話冒頭と同じモノローグ(当記事冒頭の台詞)を呟きながら愛車を運転して消えていく。
このモノローグは当初、ネゴシエーターとしてのロジャーの簡単な自己紹介だったが、彼が物語を駆け抜けた先でその肩書すら超えて世界を救った『最高のネゴシエーター』となった事で、自分の存在自体を端的に表す言葉に昇華したようだ。
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余談
ロボットものの主人公としてスーパーロボット大戦に出演する際は、作品にもよるがキャラ特性として「ネゴシエイター」という能力が付加されることがある。
いわゆる原作再現系の能力で、戦闘時には「ロジャーと交戦する相手の気力を下げる」という効果がある。精神コマンド「脱力」程ではないものの、戦闘を有利に運べるスキルとなっている。
また、ステージクリア時に「撃墜された味方ユニットの修理費をゼロにする」という効果もある。修理業者相手に費用を踏み倒すのは紳士の振る舞いとは言えないので、保険会社の類と交渉して費用を出させているのだろうか?
しかし、第2次スーパーロボット大戦Zと第3次スーパーロボット大戦Zでは自軍の中で1人だけシステム上気力を下げられてしまうキャラがいたり、このスキルのせいで自軍最強クラスの資金稼ぎ役と名高いジュドーやアンジュと組めないのではないかなどと言われることも。
容姿や特徴、特にオールバックっぽいが独特な形状になっている髪型などがカプコンのゲーム「逆転裁判シリーズ」の成歩堂龍一と似ていると、ネタにされる事もある。