<たとえ、40年前に起きた何かがなくとも、人というものは闇を恐れる存在である事に変わりは無いはずだ>
<人は、その恐れから目を背け、自らの歴史の記憶すらも、その存在が無かった事の様に振舞っている…>
<人は、過去の記憶を断ち切って生きていけるものだろうか?>
<自己の立つ場所が、いったいいつから、どこから繋がっているのかも知らずに…>
<私は、新聞記者として生きてきた。真実を掘り出して記事を書く…しかし、この街では、真実など新聞記者ごときが触れられるものではない事がよくわかった。それに、本当に知らなければならない真実は、この街の誰も知ろうとしていない。私は知りたい! 知らなければならない事を…!>
「マイクル・ゼーバッハはもうこの世から消えた。飼い主にはそう伝えたまえ!」
「飼い主に報告するがいい。もう心配せずとも、哀れな新聞記者は二度とこの街に現れないとな!」
概要
THEビッグオーの登場人物。ロジャー・スミスの前に度々現れる怪人。
本名はマイクル・ゼーバッハ。
トレンチコートとベストの服装で長身痩躯な体型だが
元は新聞記者であったが、パラダイムシティの「真実」を追っている間に狂気に取りつかれ、ついにパラダイムシティの人々が40年前の記憶を無くすきっかけとなった『何か』を始めとした「真実」を知るに至り、その代償として狂気に心を蝕まれた。
全身を覆う包帯は、「真実」への糸口を探す過程で発見したメガデウス・アーキタイプの発掘の際に火傷を負った為に巻いた物。
その経緯よりキャラモチーフをミイラ男と勘違いされ易いが、本当のモチーフは透明人間。『元の姿を失う事で逆に存在感を増す』と言う透明人間の矛盾した在り方を反映された事で、“真実を追う人間”から“真実を啓蒙する怪人”になり、更には「ある事情」を切っ掛けとして“真実へ辿り着いたこの世ならざる者”へと至る変遷を遂げた。
本編第1シーズンの頃には既に元々の名前を捨てており、自分の探し当てた「真実」をパラダイムシティに住む全ての人々に知らしめるべく暗躍。
パラダイムシティでも屈指の危険人物で世に「真実」を知らしめる為ならば手段を選ばない姿勢からロジャーと対立し、シティを支配するパラダイム社からも存在をやっかまれている。
暴走したアーキタイプとビッグオーの戦いに巻き込まれて一時は消息不明になっていたが、後に退職金の小切手を渡しにきたロジャーを仮面舞踏会のパーティに招き入れピエロの姿で現れ、酒池肉林に耽る人々の姿を嘲笑って街の現実を突きつけようとする。
ロジャーから渡された高額の退職金の小切手を見た際には「あの男も大したものだ」と小躍りし、小切手を燃やしてしまう
「私は確かに退職金を渡したぞ。燃やすのはもちろんお前の勝手だがな」
「いーや、燃えるのはこの腐った街だ」
「なにっ?」
「ドームという偽りの空などこの世界には不要なのだ。40年前この街で起こった真実を全ての人間は知らねばならない」
「それを今からこの私が行うのだビッグデュオを使って」
シュバルツがそう言い放った直後、パーティの参加者が苦悶の声をあげ仮面が発火。彼らは次々と火だるまになってビルから転落死する。
仮面をつけなかったロジャーは難を逃れたものの、殺戮劇のどさくさに紛れシュバルツは逃走。
ビルから飛び降り、ビッグデュオの名を叫ぶと、それに応え現れた空を飛ぶ赤い『ザ・ビッグ』ビッグデュオを自ら駆ってロジャーに挑む。
機動力の差でビッグオーをあと一歩まで追いつめるが、シティの構造を活かしたロジャーの機転に二度目の敗北を喫する。
その直後、半壊かつ無人の状態でありながら動き出したビッグデュオが完全に機能を停止したのを見届け、再び行方を晦ました。
第2シーズンでは「ある事情」により直接姿を現す事はないものの、独白・回想・幻影等の形で登場する事が多く、彼が書いたと思われるビラがシティにバラ撒かれ、それに呼応するかの如くメガデウス・リヴァイアサンが登場する等、物語の各所で存在感を発揮している。このエピソードにおける長台詞での彼の独白は必聴もの。
そして、パラダイム社の手で修復されたビッグデュオ・インフェルノの戦いに際しては…。
最後は無粋な真似に走った脇役を排除したビッグデュオと共に、世界の「真実」へ到達。
それが本来なら創作物の登場人物が見てはいけない物であったのを悟るや、「とんだ喜劇だ」と笑いを漏らしつつ「真実」の中へと消えて行った。
<ハハハ…これは、喜劇だ。私が求めていたのは、真実のメモリーとは…!!>
人物像
元々は新聞記者として真実を追い、そこで得た物を人々に伝え還元する事に何処までも真摯かつひた向きであろうとする情熱と信念を持ち合わせる人物であった。
反面、そうした自分の在り方を押し通す為なら正道以外の道にも容赦無く踏み込んで突き進む無謀な面も併せ持っており、ゼーバッハ時代はドーム内に居住する妻帯者と言う地位を持ちながら、アウトオブドームの安アパートに取材拠点のオフィスを構える二重生活者として活動していた。
シュバルツと化して以降は、上記の無謀な面が狂気によって増長し暴走。真実に目を背け一時の安寧に耽る人々を敵視し、挙句パラダイムシティの事も『腐った街』と吐き捨てて破壊しようと目論む事実上のテロリストへと堕した。自らの目的のためなら手段を選ばず、敵は無論、無関係な者まで殺害するような残忍性も剥き出しにする。
自身が炎に包まれて「真実」を知った経験に因むのか、こうしたテロ行為では火を用いた仕掛けで相手を火達磨にする手口を好む。
因みに、一人の男の思うがままに動かされるパラダイムシティの空気に馴染めず、社会から一歩離れた所に居場所を置いた経歴はロジャーと似た物だが、それでも相対する者と自分の価値観を両立させようとするロジャーに対して、自分の得た「真実」(=価値観)を誰かへ強引な方法で押し付けようとするシュバルツは結局身勝手な悪党へ成り下がっており、それ故にロジャーとは相容れず敵対する事となった。
そうした邪悪で不気味な怪人としての存在感を見せつける一方、ビッグデュオを見付けた際には周りを駆け回ったり、パラダイム社より集めた真実の代価として提示された破格の退職金の小切手を道化師の姿で貰って小躍りする等、価値のある物を手に入れると年甲斐も無くはしゃぐコミカルな反応を見せる事もある。
コミック版
2巻にてマイクル・ゼーバッハとして初登場。
帽子を被って髭を生やした中高年の男性で、目元は影で隠れている。
当初は探究心から暴走する荒っぽい新聞記者でしかなかったが、メガデウスの出現する現場で記憶を無くしてしまう事に気が付き、最後に自分がアーキタイプの操縦者だった事を自覚、そのままアーキタイプと共に炎の中へと消えていった。
そして――
「哀れな新聞記者マイクル・ゼーバッハは死んだ」
「私の名は…… シュバルツ・バルト 」
シュバルツ・バルトと化して、暗躍を開始する。
3巻ではよっぱらいオヤジと酒を酌み交わすロジャーの意識に介入し、ロジャーを煽ってビッグオーで暴れさせている。
続く4巻で邂逅。このときロジャーも初対面にも係わらず彼をシュバルツバルトと知っていた。
ある若いシャンソン歌手に歌を提供し、それをパラダイムシティで大ヒットさせる。
やがてそれはシティ全体を呑み込む社会現象に発展し、歌詞にあった「天使が空から降りてくる」という一節が、一種のオカルト信仰の様に膨らんで大きな騒動となる。
同時にある日のラジオで天気予報が放送され、明日の晴れの予報が流れる。パラダイムシティは年中曇っている為、こんな報道自体が異常事態と言えるのだが……。
そしてその日、シティ一高いビルに市民が大挙して押し寄せる。
そこに現れたのが、ビッグデュオを駆るシュバルツだった。
そこからロジャーもビッグオーを呼び、二体の「ザ・ビッグ」による死闘が始まる。
“シティの真実”を知らしめんと暴れまわり、空中からの機動力で優勢に戦いを進めるが、反撃に出たロジャーとビッグオーに押し返えされていく。同時にロジャーもシュバルツの論理に破綻を見出し、追求していく。
負けじとシュバルツも「メガトンミサイル」を使って「40年前の出来事」の再現を試みるが、ビッグオーがミサイルをロケットパンチで掴んでそっくり返してきた為、その爆発に巻き込まれてビッグデュオもろとも姿を消した。
だがこの一件でメガトンミサイルの爆発を見た老人達の一部が、過去のメモリー(記憶)を取り戻し、パラダイムシティに大きな波紋を呼んでいく事になる。
そして最終6巻。
エンジェルの駆るビッグファウとの戦いの中、心の折れ掛けたロジャーの精神に再び登場し、彼に“不可思議な力の存在”を問いかけ、反撃への意思を与えた。
外伝『LOST MEMORIES』でも、ある映画ブームの裏で、シュバルツの影がチラついていた。
このときは映画の主人公である透明人間を真似たファン達が、シュバルツバルトの群れとなった様な描写が差し込まれている。
作品全体を通し、アニメ本編でのトリックスターとしての立ち位置よりも、より怪人・宿敵としての立場が強く描かれており、ロジャーとはカードの裏表の様な関係を築いていた。
外部出演
現在、スーパーロボット大戦D、スーパーロボット大戦Zシリーズでの出演が確認される。
『D』では敵組織ルイーナとともに行動しており、言動も怪人的な見た目も異様に馴染んではいるが組織の一員になっていた訳ではない。
馴染んでいたのはルイーナが破滅その物を呼び込むための駒であったことと、シュバルツの自分が信じた物へ強く傾倒してしまう価値観がルイーナの都合と噛み合ったからであろうか。「真実」を知りそれを他者に知らしめるのを自らの使命と考えるシュバルツは、得た「真実」の操り人形に成り下がる危険性も孕んでいるのである。
一方、Zシリーズではパラダイムシティがシリーズ根幹の設定に組み込まれた結果、シティの「真実」を知るシュバルツは断片的な形でヒントを提示し続ける人物として大きな存在感を放った。
そして『Z』で一度戦死した後、『第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇』で再登場。より鮮明な「真実」の記録を垣間見せつつZ-BLUEに挑むも、その「真実」を乗り越える覚悟を決めたZ-BLUEに敗北。これで自分の見た記録は所詮過去の物に過ぎなかったのを悟り「新聞記者に明日の記事は書けんよ。ここから先の真実は、君が自分の目で確かめてくれ」とロジャーを激励しつつ、ファイナルステージの光の中へと消えていった。
余談
シュヴァルツヴァルト(Schwarzwald)は実在の地名であり、ドイツ語で「黒い森」を意味する。
シュバルツ自身、こう名乗ったのは「暗い森は人間が恐れる闇の象徴」だからだと語っている。
ドイツとフランスとの国境、バーデン=ヴュルテンベルク州(Baden-Württemberg)オルテナウ地区(Ortenau)に位置する山地で、近隣にゼーバッハ(Seebach)という町もある。