シャアとガルマのくだりで言うと、お互いにライバルであり仇でありといった拒絶し合うふたりが、
どうやって表面上にせよ、親密になるのか。その「学園もの」っぽい心理ドラマのエピソードを
楽しんでもらうのもいいですし、「BL」っぽい表現を楽しむのも大歓迎です。
『アニメディア2016年7月号 機動戦士ガンダムTHEORIGIN作者 安彦良和インタビューより』
概要
アニメ作品『機動戦士ガンダム』、またはその派生作品の登場人物であるシャア・アズナブル×ガルマ・ザビのカップリングの略称。
(なお、ガンダムエース連載の転生現パロ?派生作品である『シャアの日常』においては、それぞれシャアに"西"、ガルマに"牙流馬"と漢字名をあてたキャラクターとして登場しているため、『シャアの日常』におけるシャア・アズナブル×ガルマ・ザビのカップリングを指す場合は、"西牙流"と表記されることが多い。)
『機動戦士ガンダム』(ネタバレ注意)
「シャア…今夜はつきあえよ」
シャア・アズナブル(本名キャスバル・レム・ダイクン)は、ジオン共和国の創始者であった父ジオン・ズム・ダイクンをザビ家の手によりに暗殺されて亡命し、亡き父に成り代わって以後ジオン公国を支配しているザビ家に復讐を誓った青年であり、ガルマ・ザビはこのザビ家の末弟で、士官学校の同期としてシャアと親交を深め、ともに研鑽を重ねてきた友人であった。
宇宙世紀0079年1月、地球連邦政府に対しジオン公国が独立戦争を仕掛ける形で「一年戦争」が勃発。
シャア・アズナブルはジオン公国の宇宙攻撃軍に所属する少佐であり、パーソナルカラーの赤色に塗装したモビルスーツ(いわゆるシャアザクなど)で戦場を駆けては、その度に輝かしい戦績をおさめ、「赤い彗星」の異名で呼ばれるようになっていた。
同年9月、シャアは連邦軍が極秘に開発したモビルスーツであるガンダムと、ガンダムを乗せた戦艦であるホワイトベースの奪取もしくは破壊を命じられ、苦戦しながらもこれらを地球のジオン勢力下に降下させることに成功する。
この時、ジオン公国の地球方面軍司令として北米を拠点にしていたのがガルマ・ザビ大佐である。
ガルマ散る
ガンダムを追って地球に降下したシャアとガルマはしばらく共闘することになるのだが、ガンダムとホワイトベースは予想以上に手強く、連敗を重ねてしまうばかりで、戦果は得られなかった。
そしてある時、シャアにガルマが乗るガウ空母をホワイトベースの射程範囲内に誘導して、彼を戦死させられるかもしれない、またとない復讐の機会が巡ってきてしまい・・・
シャアはガルマを謀殺してしてしまうのである。
「君はいい友人であったが、君の父上がいけないのだよ…フフフ…ハハハハハハ!!」
「シャア…、謀ったな!!シャア!!!!」
シャアに裏切られたことを知ったガルマは、ホワイトベースを道連れにすべく、炎上するガウ空母の舵を自ら取り、「ジオン公国に栄光あれー!!」と叫びながらホワイトベースに体当たりの特攻を仕掛けるも、間一髪のところでかわされ、爆発四散するガウとともに死亡する。享年20歳、宇宙世紀0079年10月4日の出来事であった。
優しくナイーブな美男子でジオン国民から人気のあったガルマの葬式は国葬として大々的に執り行われ、兄であるギレン・ザビはそこで国威発揚・戦意高揚のための演説を行った。
シャアはガルマを助けられなかった罪を問われて左遷され、バーでお酒を飲みながら静かにこの葬式の中継を聞いていた。
「諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ!何故だ!!」
「坊やだからさ」
という台詞はこの時のものである。
ちなみに、この「坊やだからさ」という台詞は解釈がファンの中でも議論が大きく分かれており、単純にガルマが愚かな坊やだったから死んだのだ・・・、という意味をであるとする場合と、シャア自身が殺したガルマへの友情と復讐の空しさに気づき、自分が事前にそれに気づけないほど坊やだったからガルマは死んだのだ・・・と自嘲するいう意味であるとする場合がある(岡田斗司夫のひとり夜話より)。
「ガルマ…私の手向けだ。姉上と仲良く暮らすがいい」
その後、ガルマを殺害して復讐の空しさに気づいたシャアは、これまで復讐のために生きてきていたにも関わらず、復讐を中止し、ニュータイプや人類の革新という新たな目標を見出して奮闘するのであるが、最終話ではニュータイプとしてアムロに完敗し、同時に戦場から逃げ出そうとしていたガルマの姉キシリア・ザビを殺害することになる。
6話で登場し10話で死亡し、その後完全に物語の外に出てしまったかと思われておきながら、最終43話でアニメ『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブルの最後の台詞を攫っていくガルマ・ザビとは・・・。
『機動戦士ガンダムTHEORIGIN』
「君の…宮殿だ」
宇宙世紀0068年、ムンゾ自治共和国の指導者であった父ジオン・ズム・ダイクンを喪ったキャスバル・レム・ダイクンは、母アストライア・トア・ダイクンを国に残し、妹アルテイシア・ソム・ダイクン、ザビ家の政敵であったジンバ・ラルとともに地球に逃れ、それぞれエドワゥ・マス、妹はセイラ・マスと名を変えて養父テアボロ・マスの家に身を寄せていた。
しかし、ジンバがザビ家への反攻を画策したことにより、刺客からの襲撃を受け、ジンバは死亡。エドワゥとセイラも刺客から命を狙われるが、これをなんとか退けて生還する。
その後、マス一家はこの襲撃事件を受け、ザビ家への恭順の意を示すためにサイド3と近いサイド5、ルウムのテキサス・コロニーへ移住することになる。
テキサス・コロニーでエドワゥ達が住む家を工面してくれたアズナブル一家には、エドワゥとそっくりの容貌をした鳶色の瞳(エドワゥは青い瞳)の一人息子のシャア・アズナブル(本物)がおり、エドワゥ、セイラはすぐに彼と仲良くなったが、平穏な日々は長くは続かなかった。
母アストライアがサイド3にて病死したとの報せが入ったのである。
…エドワゥは両親の仇を討つため、妹を守るために、ザビ家への復讐を決意するのだった。
国防軍士官学校へ
宇宙世紀0074年、エドワゥは、ガーディアンバンチのジオン自治共和国国防軍士官学校へ進学することになったシャアを騙して衣服を交換し、刺客の目を欺いて、彼を刺客に暗殺させ、そのまま士官学校へ入学する。
そこで偶然にも、同期として士官学校へ入学していたザビ家の末弟ガルマ・ザビと邂逅したのである。
眼底色素に異常があるからと偽って目の色をバイザーで隠し、シャア・アズナブルと成り代わったエドワゥ(以下シャア)は、学業でも訓練でも群を抜く成績の優秀な生徒であった。しかし、ジオン自治共和国を統治するザビ家の一員として誰にも負けたくない、と努力を続けてきたガルマは、これを快く思わず、彼を強くライバル視していた。
ガルマはムキになって努力し、シャアは素直な彼が一生懸命に噛み付こうとしてくるのを眺めたり、時にいなしてからかったりして楽しんでいた。
重装行軍訓練にて
宇宙世紀0076年、士官学校で過酷な重装行軍訓練が行われた。
30kgもの装備を身につけ、50kmの距離を踏破して日暮れまでに学校へ帰営する訓練である。
身体能力に秀でたシャアはいつものように速すぎるほどのペースで岩山を踏破してゆき、学業は優秀なものの体力がないガルマは、それに追いつこうとすぐ後ろを必死で歩いていた。
重装行軍訓練の途中には降雨タイムが設けられており、学生達は降雨の間、それぞれ現在地で休憩をすることになっていた。
シャアは岩陰を見つけて雨に濡れないよう上手に休憩していたが、ガルマは隠れる場所を見つけられず、地面に大の字で寝転がり、雨に打たれながら休憩をしていた。
「…こっちへ来いよ。ここは濡れなくていいぞ?まだ20kmもあるんだ。風邪をひいてへばっちゃうぞ。特に君のようなヤワな坊やは…」
「うるさい!誰が坊やだ!!僕に指図するな!!」
シャアは挑発されて地団駄踏んで怒るガルマを眺めて微笑み、そのまま寝たふりをすることにした。
やがてシャアが眠ったと思ったガルマは、少しでもリードを稼いでおきたいと雨の岩場をそろそろと歩き始め、足を滑らせて崖から滑落してしまう。
こっそりと後を追いかけ、ガルマの滑落に気づいたシャアは驚き、ゆっくりと崖を降りて、彼の様子を確認しにいった。
怪我で動けなくなっているガルマに「大丈夫か?」と声をかけるシャアだったが、卑怯な手でシャアを出し抜こうとして失敗したガルマはそれを跳ね除け、「触るなぁっ!!僕に触ったら殺すっ!!いや、いっそ殺してくれ…あんまり惨めだ…耐えられない……」と泣き出してしまう。
それを聞いたシャアは腰の装備からナイフを取り出すと、落ちていた木の枝を削り、ガルマの四方に突き立て、布で覆って彼が雨に濡れないように即席のテントを作るのだった。
「君の…宮殿だ」
2人は雨の中で微笑みながら見つめ合い、その後、友情を深めていくことになる。
2人の友情
重装行軍訓練の翌日、ガルマは自身が所属する第1寮の部屋を移動し、第3寮のシャアの部屋へ押しかけ、晴れて2人はルームメイトとなった。
成績優秀で仲のいい2人は学生達の羨望の的であり、女学生達には「男の友情ね」「いいわぁ♡」と噂されるほどであった。
卒業間際、シャアは地球連邦の軍監に反抗し、軍監にかけていたバイザーを殴り飛ばされるという事件を起こす。(バイザー事件)
これはシャアが自らの成績を下げ、ザビ家の男として皆に認めてもらいたいがために必死で努力を重ねてきたガルマを確実にトップの成績にさせるための行動であったが、なんとガルマはシャアを守るために声をあげ、一緒に軍監に反抗したのである。
ザビ家の御曹司が声をあげたことにより、軍監は自身の非を認め、事態は収まったのだが・・・成績を落とされて皆に失望されるかもしれないにも関わらず、シャアを助けることを選んだガルマの行動はシャアにとって予想外であった。
その晩、シャアは勉強で疲れて机に突っ伏し眠ってしまったガルマに近づき、ガルマの肩から落ちたガウンをそっと肩にかけなおしてやる。
シャアの心理描写は作中であまり明確に描かれることがないため、それぞれの場面で彼が何を考えているのかは基本的に受け手の解釈に委ねられるのだが、シャアはガルマへの復讐を忘れたわけでもほだされたわけでもない。
ただ、ガルマに対していつか殺す復讐相手だが、体を冷やして風邪はひかせたくない・・・という微妙な感情を抱いていることが窺える。
なお、このシーンのシャアはORIGINのアニメでかなり怖い顔に描かれており、シャアの優しさは全てガルマを陥れるための罠であると解釈しているファンもいるが、ORIGINの監督である安彦良和のアニメ版絵コンテでは単純に"あくまで無表情"、ガウンをかけて自分のベッドに戻る途中 シャアがガルマを振り返るシーンでは"おやすみ坊や、という感じで"と記載されているのみなので、怖い顔をして睨んでいるわけではないようである。(機動戦士ガンダムTHE ORIGIN III Blu-Ray DISC collecter´s Edition初回限定生産に付属の絵コンテ集より)
暁の蜂起
「シャア…一緒にいてくれないのか?」
宇宙世紀0077年、地球連邦のミスによりジオン自治共和国の農業ブロックの一基が破壊される事故が起こり、ジオン自治共和国の国論はさらに反連邦へと傾いていた。サイド3のマザーバンチであるズム・シティでも民衆の暴動が発生しており、地球連邦はその鎮圧のために近くにあるガーディアンバンチの治安部隊を強行輸送して、ズムシティを制圧しようとしていた。
「ガルマ…きみは自分の手で歴史の歯車を回してみたくないのか?」
シャアはこのズムシティの制圧を阻止すべく、ガーディアンバンチの地球連邦軍兵営を奇襲・制圧して武装解除させるための作戦を立案し、ガルマを煽動して学生隊を武装蜂起させたのである。(暁の蜂起)
蜂起の当日、緊張と恐れから手が震えて戦闘服の胸元フックをかけられないガルマは「シャア…このフックが変だっ、うまくかからないっ」と半泣きでシャアを呼んだ。シャアは何も言わずに近づき、そのフックを代わりにかけてやった。ガルマは「ありがとう…」と呟き、シャアの両手にそっと自身の手を重ねた。2人は見つめ合う。
「シャア…一緒にいてくれないのか?」
「無理だ。手はじめに潜入して撹乱する。あとは模擬戦の時の要領だ…」
そこへシャアの以前のルームメイト、ムラタが現れ、戦場でバイザーは不便だからとヘッドギアをプレゼントしてくれる。ヘッドギアを装着し、「どうだい?」と聞くシャアに、ガルマは頬を染めつつ面白くなさそう顔で「まあああ…まあまあだね」と返すのであった。
(アニメ版ではシャアの元ルームメイトはリノ・フェルナンデスというキャラクターに変更されており、ヘッドギアを渡すのも彼になっている)
ムラタからヘッドギアを受け取り、装着したシャアは戦車に乗り込むと、先鋒として他部隊よりいち早く出撃していた。そして、シャアと別れたガルマは指揮官として戦場へ赴く学生達の士気を高めるための演説を行っていた。
シャアは戦車の中でガルマの演説を聞き、先ほどまで衣服のフックもかけられないほど手を震わせていた臆病なガルマが、恐れを隠し、勇ましく演説しているのを感じて、少し微笑むと、(挫けるなよっ!坊ちゃん!!)と心の中でこっそりガルマを激励するのであった。
その後、学生隊の蜂起は多くの犠牲を払いながらも地球連邦軍の兵営を制圧せしめ、駐屯していた一個連隊の武装解除をさせることに成功した。
この事件は熱狂的な歓喜をもってジオン自治共和国の市民達に迎えられたが、のちに人類最大の悲劇、世に言う"一年戦争"の発端となるのであった。