概要
筒井康隆があえてミステリー小説に挑戦した作品。1975年から1977年にかけて合計4編が新潮社の文芸雑誌「小説新潮」にて発表されている。
その名の通り大金持ちのぼんぼんの刑事・神戸大助が、父・喜久右衛門から託された資金を生かして事件解決に結びつける、と言う内容。
4編で打ち切られたのは、筒井がトリックを考えるのが苦手だった上、彼自身が作品のマンネリ化を恐れたがゆえであった。
2005年・2006年にドラマ化、2019年にテレビアニメ化しているが、設定はそれぞれ大幅に改編されている。
なお、筒井も演者としてカメオ出演している他、主演はどちらも筒井が所属するホリプロの俳優が務めている。
主な登場人物
神戸大助(かんべだいすけ)
主人公。大金持ちのぼんぼんだが、自分が金持ちであることを鼻に掛けない、いい人、のはずなのだが、金銭感覚が相当壊れている。
神戸喜久右衛門
大助の父。いわゆる金の亡者で、その人非人振りは、妻(大助の母)が、自分の事で心痛するあまり寿命を縮めてしまってもなんとも思わなかったほど。
しかしあることがきっかけで改心している様で、警察官になった大助が、犯罪捜査によって自分の築いた財産を食いつぶしてくれることに期待している。
テレビアニメ
テレビドラマ
本作を原案としたテレビドラマシリーズが東宝の手によって製作されており、2005年1月から3月にかけておよび2006年4月から6月にかけて、テレビ朝日系列局で放送されている。いずれも全10話。なお、第2シリーズのタイトルは「富豪刑事デラックス」。
主人公を女性の神戸美和子に置き換えるなど、原作とはかなり異なった部分があるが、原作者の筒井の許しを得ている、のならまだしも、脚本の下書きを見た筒井が「俺の書いたものはおとなしすぎた。ドラマの方が破天荒になってて素晴らしい」と思ってしまい、挙句の果てには「こうしたらもっとメチャクチャになっちゃうかもね」と、自分から番組関係者に入れ知恵を付けることもあったという。
神奈川県のとある町が主な舞台、と言う設定がある。
主な登場人物
神戸美和子(演:深田恭子)
演じている人が演じている人だからか、「原案」の神戸大助よりひどい天然ボケキャラになってしまっている。「あのー、ちょっとよろしいでしょうか?」とおどおどしながら言ったあとコストを掛けすぎた捜査アイデアを提出したり、真犯人を追い詰めたのは良かったが「たったウン億円ぽっちのために人を殺すなんて・・・」と吐き捨て、結果周りを唖然とさせている。
また、事件が解決すると、自分は用済みとばかりに、「では、失礼致します」と言ってさっさと帰ってしまう。
ただし推理力は高い。さらに捜査のためにダミー会社を作っても金に糸目をつけずに優秀な人材を集めちゃうものだから結果信じがたい収益を上げてしまう。
神戸喜久右衛門(演:夏八木勲)
美和子の祖父に変更になっている他は基本「原案」に沿っている。
美和子の、起業家としての才能に困惑するあまり「このジジイ不孝者!!」とキレてしまうことがしばしば。
鈴木松江(演:市毛良枝)
喜久右衛門の秘書。美和子以上に天然ボケなところがある一方、実は喜久右衛門は必要以上に彼女を恐れている。
鎌倉熊成(演:山下真司)
布引幸四郎(演:寺島進)
美和子の先輩の一人にして理解者。ヤッチャンの様な風貌の持ち主(だからか、この人が取り調べをすると、容疑者からのクレームが付いてしまう)だが、刑事としてはまとも。
狐塚虎彦(演:相島一之)
美和子の先輩の一人。美和子のことを快く思っていない。
美和子が帰る際には「こらー! 勝手に帰るなー!」と突っ込みを入れる。
西島誠一(演:載寧龍二、現在のさいねい龍二)
美和子の同僚。美和子をしばしば助けるため、彼女にとっては王子様の様な存在なのだが、肝心の本人が朴念仁なため関係は全く進展していない。
神奈川県警のお偉いさんに対し笑顔で捜査本部のダメっ振りを暴露してしまうことがしばしばある。
瀬崎龍平(演:筒井康隆)
美和子の活躍振りに不快感をあらわにする男。これには深い訳があった。
「富豪刑事デラックス」には登場しない。