練習機
れんしゅうき
練習機とは
一般には読んで字のごとく、『飛ばし方を練習するための航空機』。
例としては、アメリカでは一般に型番の頭にTrainningの「T」を付ける。それ以外の国でも名前や型番のどこかに「T」の付いたり、ロシア式ではUchebnoの「U」が付く。なんとなく複葉・単葉のプロペラ機のイメージがあるが、ジェット機パイロットの養成後半では、タンデム化などで訓練用に改造された実機を用いることも多い。
訓練用とは言え、武装すればそのまま戦闘機や攻撃機に転用(=COIN機)できるため、予算の乏しい発展途上国での需要も絶えない。実際にBAeホークや、アルファジェットでは空軍戦力補助のためにも実戦能力が求められ、実戦・訓練兼用のような型も存在する。
操縦しやすく、かつ緊急時の対応も練習できるように無理が利かなくてはいけない。さらに、初心者故の手荒な操作にも耐えられる頑丈さも無ければならない。扱いやすいだけではダメなのである。
作るのが簡単なようで、実は奥の深い航空機である。
戦闘機の複座型
F-2BやSu-33UB、ラファールB等のように、性能や任務では単座で十分なのだが、あえて複座型とすることで機種転換(簡単に言えばパイロットが慣れるための訓練)用の練習機としても使えるようにした戦闘機もある。
開発経緯によっては戦闘に投入することもでき、「二人目がいる」という点を利用して、爆撃・空中給油などの用途に使用されることもある。
大型練習機
練習機の中には、ボーイング737のような大型機もある。
これは各種航法機材を搭載し、飛行して実際に現在地を割り出してみせるという、航法訓練のための練習機となっている。INSやTACAN、VORといった無線航法・電波航法に対応した装備を搭載し、教官の監督のもと実習生が現在地を割り出し、後で答え合わせするのである。
日本ではかつて「機上作業練習機」という、航法・通信・爆撃・射撃・写真撮影・観測などを訓練するための機を用意していた。
日本の練習機
日本では、航空自衛隊の初等練習機T-7や、ブルーインパルスにも採用されている中等練習機のT-4が有名で、また戦後日本最初の独自開発機は富士T-1と、これも練習機である。
なかでもT-7は、戦後アメリカから貸与されたT-34「メンター」を基に日本独自の発展を遂げてきた機で、陸海空3軍で様々な派生型がある。
T-3:T-34「メンター」のエンジンを換装し、時代に合わせて性能向上を図ったもの。
T-7:T-3の後継で、エンジンをターボプロップに換装。運航費用の安さと扱いやすさがウリ。
LM-2:T-34の客室を拡大し、4~5人乗りとした連絡機。部品のほとんどが流用できる。
KM-2:海上自衛隊によくある並列複座式コクピットに改造したもので、操縦訓練用。
T-5:KM-2がT-7に準じたもの。「簡単すぎて練習にならない」と言われるほど操縦は易しい。
様々な練習機
・アメリカ
T-6「テキサン」:練習機といえばコレと言われるほど。多くの飛行士を育成した『炎の老兵』。
T-33:航空自衛隊でも長くおなじみだったジェット練習機。これも扱いは素直で易しい機。
T-37「ツイート」;並列複座の大型機用練習機。のちにA-37にも発展。
T-38「タロン」:1961年以来、未だアメリカで現役の練習機。NASAでも運用中。
T-7「レッドホーク」:T-38に代わるアメリカ空軍の複座高等練習機。導入予定機数は351機。
T-50「ゴールデンイーグル」:ロッキード・マーチンから技術的支援を受けて開発された超音速ジェット練習機。
T-45「ゴスホーク」:BAeホークを基にした海軍用の着艦練習機。
T-6「テキサンⅡ」:ピタラスPC-9を基にした最新型の空・海軍用初等練習機。
・イギリス
DH.82「タイガーモス」:こちらも多くの飛行士を育成した機。サンダーバード6号とも。
BAC「ジェット・プロボスト」:イギリス発のジェット練習機で、のちにCOIN機にも発展。
BAe「ホーク」:ジェット教育過程を一手に引き受けるべく開発された練習機。多くの国で採用された。
・フランス
フーガ「マジステール」:珍しくV字尾翼を採用した練習機。アルジェリアやコンゴでは実戦にも参加。
・独仏共同開発
ダッソー・ドルニエ「アルファジェット」:1970年代初頭に開発され、実戦部隊の補助用に武装も可能。
・ロシア
Yak-130「ミットン」:ロシア空軍の複座高等練習機。導入予定機数は200機。
・ブラジル
EMB-312「ツカノ」:ブラジル国産の初等練習機で、様々な国に輸出されて武装も可能。
関連動画
・アメリカ
【Boeing T-7 Test Restarts Engine Mid-Flight】(英語)
※ボーイング 公式YouTubeチャンネル『Boeing』より転載(ボーイングはアメリカ合衆国の航空宇宙機器開発製造会社)
【T50A: Mission X】(英語)
※ロッキード・マーチン 公式YouTubeチャンネル『Lockheed Martin』より転載(ロッキード・マーチンはアメリカ合衆国の航空機・宇宙船の開発製造会社)
・ロシア
【Yak-130 Presentation movie】(英語)
※イルクート 公式YouTubeチャンネル『IRKUT Corporation』より転載(イルクートはロシア連邦のイルクーツクを拠点とする統一航空機製造会社傘下の航空機メーカー)
記述した内容が虚偽か判断する材料(公開情報)
ボーイング 公式サイト『T-7A Red Hawk』(外部リンク)(英語)
※ボーイングはアメリカ合衆国の航空宇宙機器開発製造会社
ロッキード・マーチン 公式サイト『T-50A for Advanced Pilot Training』(外部リンク)(英語)
※ロッキード・マーチンはアメリカ合衆国の航空機・宇宙船の開発製造会社
イルクート 公式サイト『Yak-130』(外部リンク)(英語)
※イルクート(IRKUT Corporation)はロシア連邦のイルクーツクを拠点とする統一航空機製造会社傘下の航空機メーカー