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T-2

てぃーつー

1960年代後期に流行した「超音速練習機」の日本版。航空自衛隊に超音速機が配備される事になったため、そのために必要な(だと思われた)超音速練習機として開発された。だが通常の練習機ならともかく、超音速性能は練習機には過剰であり、結局このような練習機は廃れてしまった。
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超音速=特別な環境編集

1960年代、アメリカではN-156の練習機型(T-38)が超音速練習機として使われていた。これを受け、航空自衛隊でも「パイロット養成のために超音速練習機は必要」との結論が出た。

当時の航空自衛隊ではF-104が採用されており、次期F-XでもF-4の採用が決まっていた。これを受け、「T-33では実戦機との性能差がありすぎる」として超音速練習機が採用される事となった。


当時はF-5不採用にもめげず、ノースロップが盛んにT-38の売り込みを図っていたが、『国内の開発能力の向上と要求仕様との不一致』という理由で国内開発が決定した。

F-4導入までには間に合わない見込みだったが、幸いにもF-4は複座だったので転換訓練には実機を使って開発完了までの「つなぎ」にする事ができた。

当時、欧州ではイギリスフランスジャギュアを共同開発し、費用対効果の向上に成功していた。

これを受けて、日本でも『共通の機体にすれば費用対効果が上がるのではないか』として練習機支援戦闘機を共通で開発することとなった。


『似ているだけです』(開発が別という意味で)編集

開発にあたって特徴的だったのは

  • 武装できること
  • 簡単な改造で支援戦闘機にもできること

であり、戦闘機の補助として使われる事も前提とされていた。

エンジンはイギリス製ターボファンエンジン「アドーア」の双発とされ、図らずも(?)英仏共同開発のジャギュアの影響がみられる。


なお、確かに見た目は似ているものの、実際にはT-2はジャギュアをそれほど参考にはしていない。どちらかと言うと、F-4の影響が大きい。

T-2には日本の得意分野のノウハウがふんだんに導入されており、例えば主翼は複合材を利用してより軽量に仕上がっている。

また、T-2は練習機を元に支援戦闘機型である三菱F-1を開発したのに対して、ジャギュア攻撃機を元にして練習機を開発している。


もっとも、両者とも求められていた能力が似通っていたので外見も似通ったものになるのはある意味必然である(エンジンも同じなのは、当時このクラスで使えるエンジンの選択肢がなかったという事情がある)。とどのつまり収斂進化なのである。


評判について編集

推力対重量比はF-104と大差ないため、上昇力や加速の良さが特徴である。ただし、小さな主翼から察することができるように低速・低空は苦手なようだ。


このことはT-2が採用されたブルーインパルスの演技にも影響している。

推力や上昇力を生かして力強い大胆な演技を見せた反面、小回りが利きにくいのでなかなか会場上空に戻れず、演技と演技の間の時間が長くなってしまったのである。

これは後継のT-4採用で解決を試みている。


このT-2は武装の有無によって前・後期型に分類され、非武装が前期型、武装型(バルカン砲装備型)が後期型となる。

識別は非常に明快で、砲口が開けられて「いない」のが前期型、開けられて「いる」のが後期型である。

前期型は主に操縦訓練に、後期型は射撃のような実戦訓練に用いられた。


目的達成度編集

価格は1機19億円(派生型の三菱F-1は26億円程度)。生産数は全96機である(三菱F-1は77機で合計すると173機)。

これは量産効果が発揮されて安価だったとされ、『費用対効果を上げる』という目的は十分に達せられた。


『超音速練習機』の意義編集

結論から言ってしまうと、練習機に超音速性能は不要だった。

超音速飛行はさほど特殊な飛行ではなかったために実戦部隊の戦闘機で行うくらいで十分であり、『練習過程の時点で超音速飛行を練習する』事に大きな利点は無かった。

これはアメリカ空軍で同じく超音速練習機だったT-38でも、同じような結果が報告されている。

例えるなら、これから車の免許をとってレースに挑もうという練習生のためであっても、教習所内から出ない教習車に時速100kmの巡航速度は不要だったということである。


結局、後継機であるT-4では超音速性能は不要とされ、諸外国の練習機でも同様となっている。

そして、T-2は2006年に最後の機体が退役し、ここに史上初にして最後の日本の超音速練習機の歴史は終わった。


その後の世界の動向編集

ただし世界的に見ると、超音速練習機はまだ完全に廃れた訳ではない。


例えば、韓国T-50(2002年初飛行)は、同じく超音速性能(とF-16への効率的な移行)をセールスポイントとし、軽戦闘機型FA-50へと発展した。

中国でもJ-7戦闘機をベースに開発したJL-9が配備され、アメリカでもT-38の後継機に選ばれたのは、超音速性能を有するT-7Aレッドホークであった。

他にもトルコインドでも超音速練習機を開発する動きが見られる。


これらに共通するのは、T-2と同じく軽戦闘機への発展を視野に入れている事

F-5Mig-21を運用していた中小国の戦闘機買い替えや、戦闘機(攻撃機)と練習機を別々に配備する余裕の無い途上国空軍の需要も狙っているのだ。

ただし軽戦闘機に発展させても、所詮は「練習機に毛が生えた」程度の性能であり、搭載量や電子機器が貧弱になってしまうのだが、現代の軽戦闘機とは元よりそういうものなので、途上国向けとしては仕方がない面はある。

問題なのは、このせいで練習機としては異例な高額になり、目的と価格には到底釣り合わないどうにも中途半端な性能となってしまう事で、先述のT-50を除くと海外への売り込みは苦戦が続いている。そのT-50も練習機型より軽戦闘機型FA-50の方が売れており、やはり練習機としては割高というのが現状となっている。


長年に渡り数多くの練習機を輸出してきた老舗メーカーを抱えるイギリスイタリアでは超音速練習機を開発しておらず(あっても急降下すれば一応音速を超えられる程度)、ターボプロップ練習機のパイオニアであるスイスに至ってはコスト重視でジェット機に近い機動性を持つターボプロップ練習機を開発しているのとは対照的である。


また、懐にある程度余裕がある国なら、軽戦闘機化した練習機よりF-16MiG-29の中古機を買った方が得という選択肢もある。

ただし、近年のウクライナ侵攻により中古のF-16とMiG-29はウクライナに提供された事で在庫が減っており、戦闘機を買う余裕もないので安い軽戦闘機を購入する……といったケースも出ている。


いずれにせよ、軽戦闘機としてはまだ需要があるのだが、練習機としては高価格すぎて費用対効果が悪すぎる……というのが超音速練習機の現状である。


関連タグ編集

練習機

三菱F-1:本機をベースとして開発された支援戦闘機。戦後日本初の国産戦闘機でもある。

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