「オメラスって知っているか? ある小説に出てくる理想郷のことだ。」
概要
season1の第九話で東和夫が倉木尚武に「元公安のOBとして助言しといてやろうと思ってな」と言って話し始めた理想郷のこと。
season1の第九話で初めて【オメラス】と言う言葉が出てくる。
season2の第二話では、倉木の部屋に不法侵入した際にも、前回の続きを話している。
season1
東
「オメラスって知っているか? ある小説に出てくる理想郷のことだ。①
オメラスは自然に恵まれ 独裁者もいなければ身分制度もない。
誰もが 何不自由なく暮らしている 幸せな町だ。」
「ところが その町のどこかに 光の届かない 固く閉ざされた地下室があった。
まるで下水道のようなその地下室に一人の子供がずーっと閉じ込められている。②
その子は,ろくな食べ物も与えられず,体は汚物にまみれ,ずっと みじめな生活を送っている。
実は その子の存在を オメラスの住人たちは全員知っていた。」
「だが 誰も助けようとはしなかった。
なぜなら その子を閉じ込めておくことが理想郷が保たれる条件だったからだ。
オメラスの すべての幸せや美しい自然は
その子の犠牲の上に保たれているとみんなが理解していた。」
「たった一人の子供を地下室に閉じ込めておくことで
他のすべての人々が幸せに暮らせるならと住人たちは見て見ぬふりをしているんだ」③
倉木 「何が言いたい」
東
「同じだろ? 今の この世の中と オメラスは
国家という体制を維持するために臭いものにフタをする
そして 子供を閉じ込めた地下室の門番 それが公安なんだよ」④
「それが真実だ。 そうやって この国は秩序を保っているんだよ
だが俺は そんな仕事に嫌気が差した。 だから公安を辞めたんだ」⑤
「倉木 お前も 俺と同じ考えに必ず たどり着くはずだ」⑥
要約
↑のセリフを要約すると、
【オメラス】とは、ある小説に出てくる理想郷のこと。
そこは、とても幸せな街だがその街の地下には一人の少年がみじめな生活をしていた。
その少年の存在を住人は全員が知っていたが、見て見ぬ振りをしていた。 何故なら、その少年を閉じ込めておくことが幸せな街が保たれる条件だから。
解釈
【オメラス】の街を現代日本に、【オメラス】の門番を公安に、変換して話をしている。
- セリフに出てくる「ある小説」とは、後述に記載してあります。
- この台詞はちょうど、新谷が公安に囚われて地下室のような場所に閉じ込められているシーンで言われた。
- 【オメラス】の理念は、多数の人々の幸福のために、少数の人間を犠牲にすること。 (最大多数の最大幸福)
- 【オメラス】は、自分たちが幸せに生きていくために少年を犠牲にしている。 この世も、大義名分のためならば多少の犠牲を厭わない。
- 東が、元公安警官であることは示唆があるが何故辞めたのかについての示唆はない。 この発言からも、過去に何かあったと推測される…
- 東は、ある目的の達成の為に、倉木を事ある毎に自身と同じ道に誘おうとする。
season2
ここからは、本編内での東の会話を書いています。
東
「まだ オメラスの門番でいるつもりか? 倉木」①
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東
「実は あの話には 続きがあるんだ」①
「オメラスの人々はあるタイミングで地下牢の悲惨な子供のすべてを知り
その事実にショックを受ける」
「子供を助けてやりたい。 だが 何千何万の人々の幸福を投げ捨てていいのだろうか」②
「オメラスに住む人々の幸せと 地下牢の子供1人の幸せを天秤にかけ
しだいに事実を受け入れ彼らの涙は乾いていく」③
「だが その中には黙り込んで ふさぎ込んでしまう人間もいた
彼ら 少数派の人々は 一人で美しい門をくぐって オメラスの都の外に出ていく」
「そして二度とオメラスに戻ることはない」
「倉木 門を出て 振り返ってオメラスを見たとき 一体 何を感じると思う?」④
「俺は分かったんだ 理想郷をぶち壊し 偽りの秩序を乱すのが 俺の使命だってことにな」⑤
要約
↑のセリフを要約すると、
【オメラス】の真実を知りショックを受けるが、多数の幸せを犠牲にして子供を助けてもいいのかと悩み、住人たちは事実を受け入れ元の生活に戻る。
しかし、受け入れなかった少数派の人々は、【オメラス】を出て二度と戻ることはない。
解釈
- season1の第九話で語られた【オメラス】の話の続き。
- ただ一人の少年を救うためだけに、【オメラス】に住む多くの住人を犠牲にできるのか?
- 自分の幸せを守るために、その子を犠牲にすることを選ぶ。
- この発言からも、東は門をくぐって【オメラス】を出て行った人間ではないか? 東和夫は、【オメラス】を振り返り一体何を思ったのか?
- 【オメラス】を出たことで感じた嘘でまみれたこの世の乱れを一度ぶっ壊し、秩序を戻したかった?
劇場版
東 「俺は暗黙の掟を破りたいんだ」①
倉木 「暗黙の掟?」
東 「そう オメラスの平和を壊すんだ」②
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東
「復活しだぞ 化け物が①
奴は日本という国が生み出した 化け物であると同時にこの国のバランスを 裏で保っているんだ」
「それが この国のシステムさ」
倉木 「システム…」
東
「奴らは倉木千尋のような、少数の犠牲者を生み出しながらオメラスの平和を維持している」②
東 「システムは壊してはならない。 それが暗黙の掟だ ③
そうやって日本は… この国は 平和を保ってきたんだ
誰も気づかないフリを しているだけだ」
要約
【オメラス】とは、物語の中の話ではなく現代日本にも存在するもの。
そして、その【オメラス】の平和を作り出しバランスを保っているのがダルマである。
多数の人々のために、ダルマらは少数の人間を犠牲にしている。 (生贄)
このシステムは、壊してはいけない。 これは、「暗黙の掟」。
壊せば、システムは崩壊し保たれていた平和は崩され、日本はカオス(混沌)に落ち入る。
解説
- 物語中盤での台詞。 「暗黙の掟」については後続の③で説明する。
- 「オメラスの平和」 = 現代日本の平和
関係
ドラマ内での 【オメラス】の少年は、
真実を隠すために政府指導で公安によって地下に閉じ込められ存在を隠された新谷兄弟や、多数の人々の幸せのために、組織に利用された倉木千尋のことを表している。
しかし、劇場版にて倉木が東に対して「お前は何を失った? いや 奪われたんだ?」と語りかけたことにより、東自身もまた【オメラス】の少年のように犠牲になった人間だったのではないかとファンの間では推測されている。
出典
本編内での東和夫のセリフ「ある小説に出てくる理想郷」は
アーシュラ・K・ル=グウィンの自選短篇集・『風の十二方位』内の「オメラスから歩み去る人々」に収録されている。