概要
藤原文太が「思ってもみなかったところから転がり込んできた」というAE101のグループAのレース仕様エンジンを入手し、ハチロク(AE86スプリンター・トレノ)に積み替えるために手配をしていたちょうど頃、そのハチロクを藤原拓海が須藤京一とのバトル中にエンジンブローさせてしまっていた。これを機会にエンジンを載せ替えるのだが、文太がそのパワーを"封印"したことから拓海は苦戦することになる。
その"封印"とは、「パワーバンドである高回転域を使えないようにする」ことである。やり方は至ってシンプルで、水温計も油圧計も装備しないどころか、最大8000回転までの表示しかないタコメーターもそのままにするなど、とにかくインパネ周りの一切を放置するだけで、エンジン自体に一切小細工すること無く"封印"を可能としたのであった。
そんな簡単なこととは夢にも思わない拓海は「とにかくあつかいづらい変なエンジン」「むしろパワーが出ていないような気がする」とまで漏らしていた。
しかし車のせいにすることなく試行錯誤を繰り返す息子に文太は内心感心していた。
その後「秋名のハチロク」の噂を聞きつけて接近してきた秋山渉を同乗させたところ、それらのメーター類がないことを直ちに指摘された。
このエンジンのすごさを一目で理解できた秋山は、限られた資金と知識を絞ってチューニングしている自分と、苦労もせず金もかけず手に入れたレーシングエンジンを知識不足もあいまって"遅い"と評する拓海に、激しい嫉妬と苛立ちを覚え、拓海に激しいライバル意識を燃やすこととなる。
拓海は秋山と改めてバトルするにあたり、メカに強い池谷浩一郎にメーターの取り付けを依頼する。ところが肝心のメーターを入手できず困っていた池谷に、勤務先であり文太の友人でもあるガソリンスタンドの店長が仲間である自動車整備工場の政志に確認したところ、すでに文太が「10000回転超のエンジンに対応するタコメーター」と「水温計と油圧計」を手配していたことが判明。文太に隠したまま、政志と池谷の協力の下に拓海はメーター類を取り付ける。
しかしメーターで回転数自体は分かっても、使える上限の回転数(レブリミット)は文太に聞かなければ分からない。とうとう拓海は文太に勝手にメーター交換したことを打ち明けるが、文太は怒ったりせず、ただ一言「11000まできっちり回せ!」と言い残した。
これでエンジンパワーを100%活用できるようになった拓海は、秋山との激闘の末に勝利。乾信司とのファイナルバトルのラストでエンジンブローするまで快進撃を続けることになる。
それまで車のチューニングに関して大した知識も関心も持っていなかった拓海にとって、愛車の真の性能も知らずにエンジン載せ換え前と比べて「パワーがない」「扱いにくい」と酷評していた自身の無知ぶりを思い知らされた一件であり、その後の成長に繋がるターニングポイントとなった。また文太にとっても、拓海が自分からハチロクをチューニングしようとしたという部分でも、密かに嬉しい我が子の成長であった。
なお二宮大輝戦では高橋涼介の指示で、逆にわざとエンジン回転数をMAX9000回転までに抑えることで相手を術中にハメている。この時、文太に細工をされていた期間に低いパワーの中で試行錯誤を繰り返していたのが生きている。
余談
頭文字Dの影響で勘違いしている人が多いが、実際のグループAのAE101のエンジンは11000回転まで回らない。
最終年の1993年時点でも9500回転がレブリミットである(当時の書籍より)。
そもそも、拓海のハチロクに搭載された時点で、下記の点でグループAとは異なる形態に改造されている為、厳密にはグループA仕様というのは誤りである。
- 潤滑のドライサンプ化
- エキゾーストマニホールドの交換
- 吸気のキャブレター化
いずれもグループAのレギュレーションでは禁止されていた事である。
また、VVTも撤去したことになっているが、実際には時期によっては使用されていた。