「ランエボ使いこそ峠のキングだ 証明するぜ涼介!!」
「赤城で涼介がそうである様に、ここでは俺が皇帝(エンペラー)だ!!」
声優・俳優 | 田中正彦/ジョーダン・チャン(実写版)、咲野俊介(実写版吹き替え) |
---|---|
搭乗車種 | 三菱・ランサーGSR エボリューションIII(CE9A) |
ボディカラー | ピレネーブラック |
主な外装パーツ | 社外マフラー、純正ホイール(OZレーシング製)※1 |
ナンバー | 栃木58 し 30-395※2 |
※1.TVアニメ版ではブラックに再塗装している。
※2.TVアニメ版とゲーム『頭文字D ARCADE STAGE Ver.3』までは群馬ナンバーだったが、ゲーム『ARCADE STAGE 4』から栃木ナンバーへ変更。アニメもFinal Stageで登場した際は栃木ナンバーとなっていた。
概要
栃木県日光市に拠点を置き、日光いろは坂をホームコースとするランエボ軍団「エンペラー」のチームリーダー。
基本的に親友で右腕的存在の岩城清次とセットで登場する。
高橋涼介とは以前からのライバル同士。
短い茶金髪の頭に巻いたタオルがトレードマーク。加えてドライビングが「年季の入った職人のようにしぶい仕事をする」と形容されているので、一部のファンからはラーメン屋と愛を込めて呼ばれることもある(実際の職業は不明)。
ただキャラデザ上の問題からなのか、他の登場人物と比べても原作とアニメの各シーズンとでは顔立ちがだいぶ異なる印象である。
年齢は明かされていないが、古い付き合いである涼介とタメ口で話をする事から若くとも23歳前後と推測される。
プロのレーシングドライバーを多数輩出しているドラテク私塾東堂塾出身である。
セミプロ達が集まるとされる組織で厳しい指導を受けてきたためか、公道(ストリート)に対するモータースポーツの技術の優位性を信じて疑わない。
そのテクニックはジムカーナ仕込みで、特に中低速区間では『低速域コーナーの鉄人』とも称されるほどの抜群のうまさを見せる。傲慢不遜な清次も京一には頭が上がらないらしく、「俺のエボⅣで勝てないのは、京一のエボⅢだけ」と称賛している。
またS字区間でアウトから被せて並び、インとアウトの逆転するところでインを奪って抜き去る『カウンターアタック』が代名詞的必殺技で、作中でも「須藤京一といえば真っ先に思い浮かぶのがカウンターアタック」と言われているほどである。
ただしこのカウンターアタックへの溢れる自信が、数少ない彼の弱点ともなっている。
愛車であるエボⅢには、ターボ過給によるアクセルレスポンスの悪化(ターボラグ)を解消する為にWRCで採用されている『ミスファイアリングシステム』(※)を搭載しており、涼介曰く「突っ込んでよし立ち上がってよしのドッグファイト御用達マシン」を実現している。
※ちなみにミスファイアリングシステムと言う名称はもともとSUBARUによるものであり、一般的にはアンチラグシステムと呼ばれることが多い。なおアンチラグシステムはWRCの規定に従い市販車の段階で搭載済みであったが、システムを作動させるにはECUの書き換えが必要となる。また三菱自動車独自の機構でエボⅢより採用された『二次エア供給システム』と混同されることが多いが実際は別物で併用でき、その場合はアンチラグシステムの補助として使われる。
※作中で京一は「一昔前のWRCでは左足ブレーキが必須(=減速時のエンジン回転数維持の為)だったが、ミスファイアリングシステムの登場により消滅した」と語っているが、現在の前輪駆動的な技術が求められるWRCでは左足ブレーキは車両姿勢を制御するための必須テクニックとなっており、一周回って古い知識となってしまっているので注意が必要である(作中ではカート上がりの小柏カイが車両制御のために用いていると明言されている)。同じように現在のWRCのうち、最高峰となるラリー1規定ではハイブリッド化の恩恵で、ミスファイアリングシステムに相当するものは装備されてない。
人物
己の信条に反するものに対してはかなり辛辣である。
藤原拓海とハチロクのコンビに対し「そのクルマはもうダメだ」「バトルだと思っちゃいない。これは(ハチロクではダメということを教える)セミナーだ」と頭から否定したり、涼介に対しても「モータースポーツが公道の幼稚なテクニックに劣るはずがない」「4WDが2WDに負けることはありえない」と噛み付いたりしている。
登場直後に吐いた「ハイパワーターボ+4WD。この条件にあらずんばクルマにあらずだ」という名言は、京一のそうした面を端的に表している。
また拓海を挑発して赤城山に来るように仕向けたり、倒したチームのステッカーを切り裂いて見せしめにするなど、ダークな一面も見せる。
小柏カイは京一について「いつも他人を見下しているえらそうなヤツ」と批判しており、地元の走り屋の盟主や先輩として尊敬していなかった。
その一方で武内樹相手にイキりちらす清次を止めて謝るような節度は持っている。
涼介は京一について、「ねちっこく相手の弱点をついてくる」「合理性だけが京一の美学」「テクニックが互角な相手なら確実に有利なチューニングのマシンを準備してバトルにのぞむ」と述べている。
勝つためならえげつない戦略を取るスタイルに対し、「オレはアイツがキライなんだ」「何が何でも負けたくない相手」と乱暴に言い放っており、これを聞いていた史浩も「えらい言われようだな」と若干引くほどであった。
しかし京一の「えげつなさ」はあくまでモータースポーツとしての合理性を追求した結果である。
作中の他の走り屋が見せたような、相手をクラッシュさせるためにわざとぶつかったり、出走妨害や恐喝などの裏工作を行ったりといった卑怯卑劣なマネは一切していない。
もっと言えば、他の東堂塾出身者のようにフェイントを駆使して相手を事故らせようとしたり、相手の車を押しのけてラインを確保したりといったダーティーな手段にも出ることもなかった。
むしろ馬力が低い相手にスタートの主導権を与えたり、地元のいろは坂に来た拓海と対等になるような勝利条件を設定するなど、走りに対してはフェアでクリーンとすらいえる人物である。
これらの点については京一の右腕たる清次も同様で、京一なりの矜持が見受けられる。
京一をボロクソに罵っていた涼介も、赤城での大一番では自分とはドラテクもマシンの性能もほぼ互角であったと述べるなど、京一を認めていないというわけではない。それどころか、拓海が坂本と勝負した際は「勝機があるなら、チンケなプライドに拘らず須藤京一のように勝つべきだ」(大意)と述べているように、ドライバーとして評価してすらいる。
同じライン上に立つライバルに対しての裏表のない気持ち、あるいは絶対に負けたくないという昂ぶった気持ちが罵倒となって出たのかもしれない。
作中での活躍
以下ネタバレ注意
涼介とは少なくとも1年前に一度バトルして敗北しており、この時は黒髪でタオルを頭に巻いていなかった。
涼介へのリベンジの前哨戦として群馬エリア制覇目指してエンペラーを率いる京一だが、副将である清次が拓海のハチロクにまさかの敗北を喫する。
短気を起こして京一の指示に背いた末の敗北だった事もあり、苛立ちの収まらない京一はチームメイトの前で清次に一発ビンタをカマすほどであった。
その後はリベンジ相手として拓海にも目をつけ、秋名ではなく赤城の下りで勝負しようと挑発をする。この時拓海は無視していたが、直後に茂木なつきのある一件で自暴自棄になって結局乗ってしまう形になった。
京一は清次の敗北の反省を活かし、ランエボの力が発揮できるセクションでカウンターアタックを決めてオーバーテイク。
タイヤの管理も冷静にこなして逆転を許さず、最後は元々寿命が近かった拓海のハチロクのエンジンがブローして決着した。
運転技術と関係ない機械のトラブルによる結果とはいえ、拓海にとっては父・文太以外で初めて、かつ作中唯一勝負の結果として敗北した相手である。
そして迎えた赤城での涼介との下りでの再戦では、最強クラスの相手をあえて先行させる作戦『シミュレーション③』を展開(TVアニメ版では対涼介専用の『シミュレーションX』を発動した)。
その後ミスファイヤリングシステムを活かしたカウンターアタックで涼介を抜き去る。
しかし、先の拓海戦と今回とのカウンターアタックの組み立て方から右コーナーに対する恐怖心がある事を涼介に見破られる。
モータースポーツでは対向車を処理する技術は必要ない上に、京一のホームコースであるいろは坂は上下線に分かれており対向車線が存在しない。
つまり、通常の峠の上級者とは違って京一は右コーナーで積極的に技を決めたり相手を牽制する事が苦手だったのである。
涼介に右コーナーで大外から被せられる形でカウンターアタックを封じられて抜き返され、京一は二度目の敗北を喫した。
試合後、混乱していた京一は涼介に半ば頭を下げる形で自身の敗因の説明を求め、涼介は京一の実力を評価しつつ先述の分析結果を伝えた上で「試合前の練習と藤原とのバトルで走り方の手の内を見せすぎたことがお前の敗因だ」と言い残して去った。
ここにエンペラーの野望は瓦解し、京一は涼介の公道バトルへの考え方に感服し認めることとなる。
その後グループA仕様のエンジンに換装したハチロクを引っ提げた拓海といろは坂で再戦。
このときは相手のホームコースに乗り込んできた拓海の姿勢を評価し、「セミナー」ではなくはっきりと「バトル」と呼んだ。
自身の美学として先行後追い方式の拓海に有利な試合条件にし、互角の勝負を繰り広げる。
ハチロクの新しいエンジンには驚かされながらも自身の想定内の試合運びとなり、勝負どころの最終セクションで得意のカウンターアタックを仕掛けるが、拓海に絶対に曲がれないと思われたはずのライン取りを決められて不発に終わり敗北。
自身の技術と哲学の限界を上回る拓海の実力を目の当たりにして、流石に京一も拓海を侮っていた事を認め、ハチロクを「いいクルマだ」と評するに至った。
なおこの時「ヤツ(拓海)は必ず4WDに乗る」という、作品のカタルシスを根本からひっくり返す驚くべき発言をする。そして後に拓海は文太のインプレッサにも乗ることとなり、この予言は的中することとなった。
その後は清次とのセットで、拓海vsカイ戦、プロジェクトDvs藤堂塾戦、最終戦でギャラリーおよび清次らエンペラーメンバーへの解説役として登場した。
特に拓海vsカイ戦では、カイの作戦がインベタのさらにインであることや、後輪駆動同士のため落ち葉が原因で決着が着くかもしれないと予感し的中させたりと、涼介さながらの分析ぶりであった。
そして「ヤツはデカくなる。群馬エリアで留まるスケールじゃない」「いずれは涼介さえも超えていく」と拓海を評価した。
また性格も少し丸くなり、誰かを叱責したり激昂する場面もなくなった。
プロジェクトDが東堂塾と対戦する時には「あそこはまずい」と心配し、自身の同期で現役のプロレーサーである舘智幸が出てきた時は涼介に電話までするような気遣いを見せた。
MFゴースト
本作のパラレルワールド的続編であるMFゴーストにも登場(ゲスト解説としての登場で姿は描かれていない)。
頭文字D本編終了後は全日本ラリー選手権のトップドライバーとして活躍し現在は第一線を退いているものの、今でも国内ラリーの振興に精力的に取り組みながらもMFG運営理事の一人として活躍。
元ラリードライバーの立場で「レース特有の駆け引きやオーバーテイクは専門外」とコメントしていたが、この内容や終始敬語だった事から一部読者からは「拓海や涼介とのバトルが余程身に染みたのか」「プロの世界で揉まれて丸くなったのか」などとツッコまれている。
とはいえ「電気自動車はゴミ」と言い放ち史浩を焦らせるなど、自身の考えに反するものに対して辛辣な一面は健在であった。
余談
原作での初登場時(拓海vs中村賢太戦)は清次と共に口元以外の顔が映されていない状態で描かれていたが、トレードマークの頭に巻いているタオルはこの時はしておらず黒髪であった。
エンペラーの妙義ナイトキッズ襲撃時に原作ではチームを離れて偵察で秋名山(榛名山)を一人走っていたが、アニメ版では妙義山まで同行しリーダー中里毅にヒルクライム一本勝負を叩きつけている。
またこのバトルではハンディキャップ方式は使われず、通常のカウントダウンスタートで始まっていた(清次のエボⅣと中里のR32は同じ4WDターボでさほど戦闘力が離れていないためだと思われる)。
作中印象的だった清次へのビンタシーンはアーケードゲーム『頭文字D ARCADE STAGE』シリーズの「公道最速伝説」モードやストーリーモードなどでも再現されているが、PS2移植版の『頭文字D Special Stage』ではプレイヤーが清次との晴れの日での対戦に勝利した場合に3つの演出パターンが用意されており、150m以上の差をつけて圧勝した場合だと、京一は敗戦を詫びる清次に対して「お前にしちゃあ頑張った方だ」「相手が悪かったな」と労うようなコメントをして清次には手を上げない。
原作とはかなりかけ離れた人物像の設定が多い実写版においても、パンクファッションでエボⅢをデコトラに積んでいる以外は比較的原作に近い設定であった。ただし、辛辣なセリフを清次に取られ気味で、「ハチロクから乗り換えたらどうだ?」のセリフも涼介にとられるなど全体的に地味になっている。
ちなみに原作では清次のエボIVのリアスポイラーに貼り付けていた他チームの切り裂かれたステッカーが京一のエボⅢに貼られている(ステッカーをよく見るとTVアニメ版オリジナルチームのサンダーファイヤーや実写版ではバトルした形跡が無いナイトキッズの物が確認できる)。
最終的に拓海と涼介を相手にした三つ巴のバトルの際には、原作の冷静さとはかけ離れた無理のある追い抜きしかけ、それが原因でコーナーから転落してしまう。
エボⅢはかなりの大ダメージを負うが幸い京一本人には大きな怪我は無かった。