潜水艇
せんすいてい
水中を航行できる艦船としては潜水艦と潜水艇があるが、この二つの語は、
- 潜水艦:軍用で大型のもの
- 潜水艇:民間用、及び軍用で小型のもの
というように使い分けられている。もともと「艇」という語は小舟・ボートという意味なので、民間用だから艇なのではなく、民間用に大型のものが少ないので艇がついた語が選ばれていると思われる。
民間用の潜水艇は、主な目的が観光や海底調査などにであるため、観光用では観覧用の窓が幾つもついていたり、海底調査用では観察用照明やマニピュレーターといった装備や乗組員を水圧から守るために非常に強固な耐圧構造を有しているなど潜水艦とは明らかに装備が異なる。
軍用の潜水艇は、潜水するということ自体については潜水艦に対して劣るものが多く、多くは特殊作戦用である。
商用潜水艇
商船としての潜水艇もごく少数存在する。通商を目的とする商船においては、他のどんな船よりも採算が重視されるため、コストばかりかかって搭載量の少ない潜水艇を採用することはほとんどない。潜水機能という唯一無二のメリットを活用するアイデア自体はいくつかあったものの、実用化されたものはドイッチュラント級2隻のみである。
ドイッチュラント
第一次世界大戦下のドイツにおいて、連合国海軍による海上封鎖を突破し、未だ中立国であったアメリカとの通商を目的とした商用潜水艇。700tの輸送力を持ち、アメリカとの間で二度の往還を達成して史上唯一の潜水艇による通商の成功例となった。海上封鎖により戦略物資の調達が滞っていたドイツと、ドイツの高品質な化学染料を欲していたアメリカとの間で通商を行うことで、高額な建造費用の4倍以上もの利益を一度の航海で挙げた。姉妹船ブレーメンも完成したものの、アメリカへ向けた処女航海の最中行方不明となった。
原子力潜水タンカー
冷戦終結後の米ソにおいて計画された。冷戦によって発展した原子力潜水艦の技術を応用し、アジア、ヨーロッパ、アメリカを結ぶ最短ルートである北極海を、海氷の下を潜航することで通航可能とする計画であった。ルートの大幅短縮によりコスト分の利益を上げると考えられたが、実用化されることは無かった。
麻薬密輸船
珍しい事例として、コロンビアの麻薬カルテルがアメリカへのコカイン密輸を目的として建造した事例がある。警察によって発見された時点で200tの搭載力を持つ潜水艇がほぼ完成していた。Wikipedia英語記事へ