概要
元をたどると東急電鉄が1948年に導入した運輸省規格型電車の3700系。
主要機器は国鉄制式の電空カム軸式自動加速制御のCS5、モーターはTDK-528/9-HM直流直巻電動機(90kw)、ブレーキはAMM/ACM自動空気ブレーキと運輸省規格型の指定機種を採用している。
東急時代は東横線や目蒲線で運用されていたが、1975年までに全廃となり全車が名古屋鉄道に譲渡された。
譲渡に至る経緯
1970年代の名鉄は会長の土川元夫を筆頭にクロスシート指向が根強く、新車はパノラマカーメイン、旧式のAL車やHL車も車体更新と同時にクロスシートへ改装することも珍しくなかった。
ラッシュ対応は長編成化で行っていたが、第一次オイルショックの影響で鉄道利用者が激増し、クロスシート車での運用が限界点に達しつつあった。
現場からはロングシート車の導入が熱望され、ちょうどその頃『民鉄旬報』の第96号に東急が旧型車の売却を行う広告を掲載。それを見た名鉄の役員が会議の議題に取り上げ、購入を決定した。名鉄が購入を決めたのは新車価格の10分の1という売却額と自社3800系と同じ運輸省規格型電車に属する点、モーターがAL車と共通する点などがある。
当初は他のAL車との併結運転や共通運用も検討されたが、弱め界磁制御が東急時代に撤去されており復元も困難だった事、ジャンパ栓の仕様が異なるために併結・共通運用は断念し、元3700系だけで2M1Tの3両編成を組むこととなった。
なお東急3700系は20両しか存在しなかったため、不足分の補充として東急3600系のクハ3671もセットで譲り受けている。
改造
導入に際しては塗装を名鉄スカーレットに変更し、ATSの載せ替え、先頭に出るモ3880とク2880を対象に後部標識灯を取り替え、行先表示板受けを増設、モ3880の貫通幌撤去を実施。
編成中間に組み込まれるモ3880については前照灯・マスコンなど運転台機器の一部撤去を行い、事実上の中間電動車化が行われている。
また第2次導入分については制御車が1両しか存在しなかったため、デハ3713を方向転換して電装解除・制御車化改造を行っている。
運用
並行路線がなく、混雑が激しい犬山線が主な活躍の場となり、2編成併結の6両編成で最混雑時間帯の列車へと集中投入された。
その威力は絶大で、クロスシート4両編成のSR車だと遅延が発生したのに3両編成AL車の3880系だと遅延がウソのように解消したというエピソードも伝えられている。
3880系の実績で名鉄役員の考えも変わり3ドアラッシュ対応構造の6000系の設計・製造のゴーサインが降りる形となった。
2M1TというMT比の高さから起動加速度こそ他のAL車と比較すると優れていたが、全界磁定格速度が低い上に弱め界磁制御がないために中速域以上の加速力は悪かった。このために当初は普通列車運用のみに使用されていたが、後年は急行や準急、正月ダイヤ期間中の豊川線特急に充当されることもあった。
6000系及び改良型の6500系の増備進行で廃車が進み、1986年までに全廃となった。
車体は全車両解体されたが、台車についてはHL車の3780系とAL車の3800系へ、扇風機は車内送風機のない従来車へと転用された。