概要
フルネームはディリータ・ハイラル。
主人公ラムザの親友。後の世では、獅子戦争を終結させてイヴァリースを統一した「英雄王」とされている。「異端者」として歴史からその名を抹消されたラムザとは対をなす、物語のもう一人の主人公。
平民出身の王という「民の理想」を実現した男として、後世に語り継がれる偉大な人物。
しかし、その実態は「平民を利用し捨てる貴族社会を否定する」「その為には全てを利用する」という、二律背反を内包した半ば執念とも言える思いに駆られた男であった。
それが最終的にもたらした本作の「結末」は、プレイヤーに強い衝撃を与えただろう。
人物
黒茶髪のオールバックヘアが特徴の青年。
一人称は第一章では「僕」、第二章では「オレ」となる。
これは後述される第一章で降り掛かった大きな悲劇により、彼の精神的変化をより顕著に示す部分でもある。
第一章でのディリータはラムザの親友で、年齢的にはラムザのひとつ下であるが、冷静な状況分析能力と勘の鋭さを併せ持ち、ときには助言を与えたり咄嗟の機転で援護したりと、彼の良き相棒であり理解者でもあった。唯一の肉親である妹ティータのことを何より大事にしているが、それ故に彼女のことになると普段の平静さを失い感情を抑えられなくなる弱点を持つ。そしてこのことが、後に彼を変貌させる大きな要因となってしまった。
来歴
黒死病により両親を亡くし、一つ違いの妹ティータと共にラムザの父であるバルバネス・ベオルブに引き取られる。
名門貴族であるベオルブ家に迎え入れられた二人は、バルバネスの計らいにより邸宅に住まいながら学校に通わせてもらうなど、平民の生まれでありながら手厚い待遇を受けて育つが、周囲の貴族階級の者たちからは差別的な目を向けられていた。バルバネスの子である四兄妹の末弟ラムザとその妹アルマとは、ハイラル兄妹とそれぞれ同い年であることや、彼ら二人が平民出身の妾の子であるという経緯もあり、身分を超えた友情を育んでいた。
第一章
士官アカデミー時代、当時15歳。先の五十年戦争後、平民出身の自身らを蔑む貴族へのクーデターを目論んだ「骸旅団」の蛮行を鎮圧するため、ラムザと共に戦線に駆り出される。その道中、貴族として家名の再興を目指す騎士見習いアルガスと知り合い、以降はそれぞれの目的で骸旅団討伐のために共闘することになる。
しかし、身分に強いコンプレックスを抱くアルガスは平民でありながら貴族同然の暮らしをするディリータのことを快く思わず、徐々に溝を深めていく。骸旅団の長ウィーグラフの妹でもある女騎士ミルウーダの処遇を巡り、その対立は更に苛烈になっていった。
そんな中、ベオルブ邸にいたティータが骸旅団によって「ベオルブの娘」と勘違いされ誘拐されてしまう。最愛の妹の危機に焦燥、混乱するディリータはラムザから励まされるも、そんな二人を嘲笑するアルガスに激昂し殴り飛ばし、ついに二人とアルガスは決別する。
平原にて夕日を眺めながらしばし語り合うディリータとラムザだったが、このときディリータは、身分の壁がある限り、どんなに願い努めても最愛の人を一人として守れない己の無力さを呪い、自身を『持たざる者』と表した。その言葉に何も返せずにいるラムザを他所に、かつて養父バルバネスから教わった草笛を吹いて心を落ち着かせた。
その後、ラムザたちは独断で骸旅団のアジトへ侵攻。追い詰められた団長ウィーグラフは、自身の敗北と共に潔くティータを解放しようと考えていたが、副官ゴラグロスは己の保身のためにその命令を無視し、ティータを連れてジークデン砦へ逃亡してしまう。
ディリータとラムザも、ウィーグラフを破って砦まで駆け付けるが、そこには先に現場に到着していたベオルブ家の次兄ザルバッグとアルガス率いる一団の姿があった。二人はゴラグロスに盾にされるティータの身など露ほども案じず射撃し、胸を射抜かれたティータはディリータの眼前で息絶えてしまう。ディリータは激しい怒りのままにアルガスを粛清し、ティータの亡骸を抱きながらゴラグロスの起こした爆発の中に姿を消した。
第二章以降
辛くも爆発から生還したディリータだったが、既にその心は大きく歪み変貌していた。家族同然に暮らしていたティータにためらいなく攻撃命令を下したザルバッグ、その命令に従いティータごとゴラグロスを撃ったアルガスの姿を見たことで、自身らの立場のためなら民の命など平然と切り捨てる上流階級を憎悪するようになる。そして、彼らにただ利用されるままの現状を唾棄し、自らが全てを利用する側にならんと強い野心に目覚める。
序章では、表向きはゴルターナ公傘下の「黒羊騎士団」として、オーボンヌ修道院にて保護されていたイヴァリース先代国王の娘オヴェリア・アトカーシャ王女を拉致。このとき、先のジークデン砦の一件で失意に落ち傭兵に身を落としていたラムザと奇しくも再会する。
逃亡中のゼイレキレの滝にて北天騎士団に包囲されるも、追ってきたラムザ一団と共闘することで難を逃れる。ラムザに対し、オヴェリアを利用しようとする南北の公爵たちが内乱(後の獅子戦争)を勃発させること予見し、それぞれがオヴェリアの立場を利用し覇権を握ろうと目論んでいることを伝え、「それ以外の方法」で守らなければ彼女は幸せになれないと諭し、その場は「一旦預ける」という名目で彼女をラムザたちに返し去っていった。
その後、ライオネル領ドラクロワ枢機卿を頼るラムザたちであったが、彼は実は裏でラーグ陣営と繋がっており、オヴェリアを処刑しその罪をゴルターナ陣営に負わせようとする。…しかしこれも、実はディリータやドラクロワが与するグレバドス教会の作戦であり、その後ディリータはオヴェリアを連れてゴルターナの領地へ赴きラーグの計略を伝えた上で、これに関わっていたであろう大臣を粛清、ゴルターナに兵を挙げることを進言する。結果、ゴルターナはオヴェリアを女王に立て、オリナス王子を新王に立てるラーグとの大乱「獅子戦争」を勃発させる。
その功績により体良くゴルターナ陣営に潜り込んだディリータだったが、そんな中、オヴェリアはライオネルにて明かされた、自身が本物の王女の影武者だった事実によって失意にさらされる場に出くわす。利用される立場にある彼女の境遇に亡き妹ティータと同じものを感じたディリータは、自身の過去を明かすとともにオヴェリアに「何者にも縛られない輝かしい未来」を与えると誓い、関係を深めることになる。
その後、ラムザの暗躍に合わせ追い詰められたゴルターナを、オルランドゥの造反とみせかける形で殺害し、南天騎士団の主導権を握る。聖石を巡るラムザとゾディアックブレイブたちの闘いにより、南北および教会の主要人物は次々に倒れ、対立する継承者であったオリナスも他国へ亡命したことで、イヴァリースの覇権はオヴェリアのものとなる。同時にディリータも、平民の生まれでありながら戦乱を終結させた功績を讃えられ、“英雄王”として民の羨望を集めることになる。
しかし、オルランドゥの養子オーランがオヴェリアに明かしたゴルターナ暗殺の真実と、その後にディリータが漏らした「すべてを利用する」という発言から、オヴェリアはディリータに対する強い疑念を抱くようになる。そして、ラムザとアルマが聖天使アルテマとの戦いで消息を絶ったことで、彼女の中の疑念は確固たるものとなってしまう。
結末
終戦から数カ月後、イヴァリース王となったディリータはオヴェリアを探し、かつて二人が契りを交わした教会跡へと足を運ぶ。誕生日を迎えた彼女のために花束を差し出すが、オヴェリアは振り向きざま、ディリータの懐にナイフを突き刺した。
…そうやって、みんなを利用して!
…ラムザのように、いつか私も見殺しにするのね……!
咄嗟にディリータも懐剣を抜いてオヴェリアを刺し、横たえた彼女から後ずりながら呟いた。
ラムザ…おまえは何を手に入れた?
オレは…
FF14でのディリータ
『リターン・トゥ・イヴァリース』にて、その後のディリータについてが触れられている。
実はディリータは、イヴァリースを平定した上でラムザの名誉回復と、再び友として一緒に国を治めることを望んでいた。しかし、ラムザ一団はアルテマを倒すには至らず、その魂を投げうって封印するまでに留まることになってしまった。辛くも生き延びたオーランとアルマの報告によりその事実を知らされると共に、新たな悪意がルカヴィを生まぬよう、次世代の「光の戦士」が現れる遠い未来まで聖石の存在を隠すため、ラムザ自身の名を「歴史から消す」ようにと遺言を伝えられる。
袂を分けた後も、内心では変わらず友と認めていた内情を顕にしながら、受け入れきれぬ事実に膝から崩れ落ち悲嘆するディリータだったが、聖石から現れた在りし日のラムザからイヴァリースの安寧と激励を贈られ、その願いを受け入れた。
その後、オーランはラムザの願いに応えるため、アルテマを倒す「光の戦士」が現れるその日まで真の歴史を隠す一計を案じ、これまでの出来事を綴った『デュライ白書』を著した上で、自らも“異端者”としてグレバドス教会に処刑される道を選んだ。教会にとって不都合な事実が記されているこの書を敢えて禁書に指定させることで、彼らの書庫で「隠匿」という形で安置させた。
…なお、本作のシナリオは原点であるFFTとは異なる部分も多く(実際、上述の内容だとオーランがラムザ一団として最終決戦の場に参陣したことになってしまう)、別次元での物語という解釈もできる。