ミス・マープル
みすまーぷる
来歴
ヴィクトリア朝後期のロンドン近郊の中流階級の家に生まれ、人並みの人生を送るも両親に結婚を反対された事を切っ掛けに独身を貫くことを決めると、ロンドンから25マイルほど離れたセント・メアリ・ミード村へと移住。
但し、この際に反対された男性は、「非常につまらない人間だった」ということが判明しており、彼女自身、両親の判断は正しかったことを認めざるを得ないという結論に達している。
その後は、編み物や刺繍、庭いじり(や人間観察)を趣味として村に閉じ篭るような隠遁生活の様な暮らしを送っているが、意外と活動的で、よくロンドンや英国各地に出かけ、出かけた先で割と気軽に他人に話しかける事も多く(そして事件に巻き込まれるのがお約束)、案外社交的。
人物像
一作目の『牧師館の殺人』では詮索好きで辛辣な性格だったが、その後の作品では詮索好きには変わりはないものの温厚であり、人好きするタイプに変わり、一般にイメージされるような優しい老婦人になっている。
近代教育を受けていない無学な人間だとして謙遜することがあるが、イタリアの寄宿女学校に留学していた経験を持っていり、一通りの教養は備えているらしい。
ドイツでも、
また彼女の家では孤児を引き取ってお屋敷勤めが出来るように教育を施しており、作中登場するメイドもピンからキリまでおり時には使用人の質の低下に嘆くこともある。
エルキュール・ポアロに匹敵する推理力や、いざとなれば自身が犯行を食い止めようとする行動力がある。
しかしながら、元ベルギー警察の警官だったエルキュール・ポアロに比べると、身体的な弱さは否定できず、戦後の設定であるパディントン発4時50分、鏡は横にひび割れてでは、大好きな庭仕事が膝に致命傷を与えてしまうということでドクターストップを受けているほど、身体が弱っている。
現に、1930年代が設定とされる長編牧師館の殺人の時点でおばあさん扱いされている。
また、1960年代(原作でビートルズの名称が出てくる為、この年代である)の長編バートラム・ホテルにてでは、(TVドラマ版ではあるが)ホテルの宿泊客が「90歳くらいに見えるわね」と話のネタにするほどの高齢者である。
年代的には最終作とされる復讐の女神時点で、80歳を越えているというのが一般的な見解。
探偵として
ある日、作家である甥のレイモンド・ウェストらによって作られた“火曜クラブ”で、家を会合の場所と貸し、当初こそは村以外の事は何も知らない無知な老婆とみられていたが、参加者が話す迷宮入りの事件を次々に解決して行き、探偵としての才能を周囲に認知される事となった(ちなみにそれ以前から村の中で起こった小さな事件などを解決しているらしい)。
その後、様々な難事件に遭遇しては解決して行くようになり、少なくとも3つの州の警察署を手の内に抑えているといわれるほどに関係者の間でその名が知られるようになった。
なお、安楽椅子探偵と思われがちだが、大部分の作品では他の探偵もの同じく自分から事件現場に赴いたり、出掛けた先で事件に遭遇したりしている事が多い。
但し、先述の通り、相当な高齢者である為、信用出来る人物に調べ物をしてもらったり、犯行を食い止めるための協力を要請したりすることも多い。
一方で、犯人に襲われかけた女性を助けるために、息を切らせながら急いで庭から階段を駆け上がったりしたり、わざと喉に食事と詰まらせたと見せ掛けて、犯人に犯行の自供を引き出したりと、なかなか精強な老婦人でもある。
推理方法論
「村の~に似ている」というように、まずは自分が知る様々な相手の中から、その事件中の行動や些細な事象が思い起こさせる人物を想像。それをもとに「犯人はどのような人物だったのか」「なぜ/どのようにしてその行為は行われたのか」を推理していくスタイルをとる。
彼女が侮られる原因としては、彼女が「人畜無害な村のおばあさん」に見えるという点が大きい。しかし彼女曰く「村にも多くの邪悪がある」「人間はどこでもたいがい同じ物」であり、人間に対して透徹した見方をもつ探偵である。