「なりたい自分になっていいんだよ」
プロフィール
| 個性 | 氷を操る |
|---|---|
| CV | 根谷美智子 |
概要
エンデヴァーこと轟炎司の妻。轟燈矢、轟冬美、轟夏雄、轟焦凍の母親。旧姓は氷叢。
焦凍が5歳の頃から10年間に渡って精神病棟に入院を続けている。
人物
轟焦凍の母親であり、No.2ヒーローであるエンデヴァーの妻。焦凍の右側と同じ氷を操る"個性"を持つ。
白い髪と黒い瞳を持ち、その外見からはどこか浮世離れしたような印象を感じさせる。
他者を思い遣る優しさと理不尽な現実に屈しない忍耐強さを持つ反面、主体性に欠ける一面もあり、その点では決して届かない野望を自分の意思で追い続ける炎司とは真逆の生き方を選んだ人間だったと言える。
入院前の彼女は炎司が焦凍に対して一際強く執着していたのとは対称的に、4人の子供達に等しく愛情を注いでいた。
彼女自身が自分の望む生き方を選べなかったからこそ、子供達に対しては、それぞれに家のことは気にせず自分の望む生き方をするように促していたようである。
長く入院生活を続けているものの、彼女の存在は現在の子供達の生き方に大きな影響を与えている。
個性
氷を操る個性を持つ。その個性故にか暑がりで、寒いのを好む。
過去回想で一度だけ、幼い焦凍に負わせてしまった火傷を冷やすために使われた。
来歴
焦凍によると、元々エンデヴァーとの結婚は恋愛によるものではなく、自分の目的に都合の良い"個性"に目を付けた炎司と、彼の名声とお金で丸め込まれた親族の思惑によるものだったという。
実際に彼のその言葉は概ね間違ってはおらず、当時の冷は『個性婚（子供に優れた"個性"を受け継がせるための結婚）』であることを理解した上で、実家への経済的援助を引き換えに、炎司との見合いを自分の意志で受け入れたらしい。
この頃の冷に対して炎司は「強く、触れれば消えてしまうように儚い。『氷のような』女」というの第一印象を抱いており、炎司は彼女の中に自分とは対極的な苦悩を感じ取っていたようである。
当時の轟家は、傍目には「厳格な夫と貞淑な妻」というまるで由緒正しい家柄のステレオタイプをなぞったような家庭に見えたことだろう。
当初結婚生活は順調であったが、燈矢のプロヒーローに適さない体質が判明したことをきっかけに、轟家の家族関係は少しずつ狂い始めていく。
冷は5年もの間、夫の理不尽な仕打ちに耐え続けていたが、次第に余裕を失っていく炎司の暴走を止めることができず、また当時燈矢と焦凍に対して彼女が掛けた「なりたい自分になってほしい」という言葉は、2人の息子に対して真逆の結果をもたらすことになった。
冷の存在は末っ子の焦凍にとっては心の支えであったが、彼女自身は炎司と焦凍、そして長男の燈矢との板挟みの中で精神的に摩耗しきっていた。
焦凍は母親に対して「父親に似ている自分の存在が、お母さんのことを追い詰めてしまった」と考えていたが、それにはやや誤りがあった。
冷は家庭での生活の中で、炎司や燈矢の、何かを恐れ憎むような余裕の無い眼差しに晒され続けてきた。
より正確に言えば、彼女は焦凍を炎司ではなく「炎司に似てゆく燈矢」に対して重ねていたのであり、焦凍が燈矢のようになってしまうことを恐れていたのである。
ある日、ふとしたきっかけから錯乱した彼女はやかんの熱湯により焦凍の顔に火傷を負わせてしまうという事件を起こしてしまい、それ以降彼女は長い間精神病に苛まれ続ける。
結婚した当初の彼女は「自分の選べる選択肢は限られていたけど、その先の道では笑っていたい」という決意を胸に秘めていたが、焦凍は後に「記憶の中の母はいつも泣いている」と当時のことを振り返っている。
轟家はいつの間にか彼女が思い描いていた幸せな家庭とはかけ離れたものになってしまっていたのだろう。
炎司によって入院させられて以来、焦凍とは10年もの間全く連絡を取り合っていなかったが、冬美によると悪化と回復を繰り返しながらも徐々に病状は快方に向かいつつあるらしい。
冬美と夏雄は頻繁にお見舞いに訪れており、焦凍とは一年次の雄英体育祭を切っ掛けに数年ぶりに再会し和解した。
その後は焦凍も勉強の合間を縫って病院に通っており、入寮後、焦凍から定期的に送られる手紙は彼女の退院を後押しする力となった。
また、炎司とは連絡を取ってないが、実は炎司も家族に隠して見舞いに来ているようで、病室には彼と出会ったばかりの頃に彼女が一度だけ好きだと言ったリンドウの花が置かれている。
直接の面会こそ叶っていないものの、炎司が自分の過去の過ちを償おうとしているように、彼女も夫の変化を静かに感じ取っているようである。
終章（ネタバレ注意）
超常解放戦線とプロヒーローの全面戦争の後、激しい戦いの爪痕により、社会は混乱を極めていた。
そしてNo.1ヒーローとして戦い続けてきたエンデヴァーは重症により入院しており、それだけでなく彼は荼毘との衝撃的な再会によって心身ともに打ち砕かれ、立ち上がることすらできないほどに疲弊しきっていた。
そんな彼の前に冬美と夏雄、焦凍と共に入院しているはずの冷が姿を現した。
「話をしに来たの」
「轟家のこと」
「燈矢のこと」
かつての冷は、炎司や実家の家族の仕打ちに耐えることはあっても、決して何かに対して立ち向かうようなことはしない人間だった。
敵になってしまった大切な息子と戦う。決意を湛えたその言葉は、炎司の知る彼女とは別人のようだった。
「私たちよりよっぽど辛いハズの子が 恨んで当然の私を再びお母さんと呼んでくれた」
「焦凍がウチのヒーローになってくれたのよ」
冷は焦凍のことを「轟家のヒーロー」と呼んだ。
超人社会では、ヴィランを倒し人々を危機から救う者が「プロヒーロー」と呼ばれている。
焦凍は家族のために敵を倒した訳でも、命の危機を救った訳でもない。それでも焦凍の行動は確かに轟家を救ったのである。
幼い頃、「お母さんを虐めるような人になりたくない」と泣いていた焦凍は、いつの間にかもう自分が一番なりたい自分になっていたのかもしれない。
冷と家族の言葉はエンデヴァーを再び立ち上がらせ、そして燈矢の死と共に壊れてしまった轟家は、再び家族としての一歩を踏み出すこととなる。
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