一般的な「助動詞」
基本的に、助動詞というものは動詞から派生した品詞で、動詞本来の意味を持たず、他の動詞(助動詞に対して「本動詞」と呼ばれる)に対し時制や法(接続法、命令法など)・相(完了相、進行相など)などといった文法的な役割の補足を行うものを指す。動詞としての意味合いをある程度残していたりするものは、「補助動詞」と呼ばれる事もある。
たとえば、英語では、多くの助動詞は可能を表すcanや推測・意志を表すwillなど、本動詞の不定詞と結びついて意味の補足を行い(進行を表すbeや完了を表すhaveなど、不定詞ではなく分詞と結びつく助動詞もある)、時制については基本的に助動詞の語形変化によって表現される。
英語の場合は助動詞を重複して用いることはできず、助動詞ではなく動詞句による類似の言い回しで代用するしかない(たとえば助動詞can、willを同時に使う事は出来ず、ニュアンスによってwill be able toやcan be going toなどの言い換えが必要)が、ドイツ語などのように複数の助動詞を用いる事が可能な言語も存在する。
日本語の「助動詞」
上記は言語学上の一般的な助動詞についての話であったが、日本語の場合は少し事情が異なる。古文(文語体)文法や現代文(口語体)のいわゆる学校文法など一般的な日本語の文法においては上記の一般的な助動詞はすべて「補助動詞」として扱われており、「助動詞」という語は別の要素の名前として用いられているからである。
日本語は名詞の格変化やコピュラなどの一部の文法的要素を、名詞そのものの語形変化や独立単語の使用ではなく、単語の末尾に接尾辞を付け足して表現するタイプの言語である。そういった接尾辞は「~だ」「らしい」などのように活用する(語形変化を起こす)ものと、「~は」「~を」などのように活用しないものに二分される。このうち活用する前者を日本語文法では「助動詞」と呼んでいるのである(活用しないものは助詞)。
なお、上記の一般的な「助動詞(補助動詞)」は動詞とのみ(言語によっては他の助動詞にも)結びついたが、日本語の「助動詞(活用する接尾辞)」は種類により名詞や形容詞、形容動詞、更には助詞や他の助動詞と結びつく事もある(「~だ」のように、むしろ動詞と結びつく事のない助動詞もある)。