概要
フルネームはジェームズ・ノーマン・マティス。アメリカ合衆国第26代国防長官。海兵隊出身で、最終階級は大将。「マッド・ドッグ(狂犬)」や「ウォリアー・モンク(戦う修道士)」などの異名を持つ。
来歴
1950年9月8日にワシントン州プルマンで生まれた。1969年に予備役として海兵隊に属しながら大学に進学し、1971年には歴史学の学士を取得した。
大学卒業後の1972年、正式に海兵隊に入隊し最初は予備役のトレーニングを行う部隊に配属された。その後、湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争に従軍した。特にイラク戦争では、途中からアメリカ海兵隊最大規模の第1師団を率いる師団長として活動した。2010年には中東・中央アジア地域を管轄するアメリカ中央軍の司令官に就任するが、2013年に対イラン政策を巡り当時のオバマ政権と対立し司令官を解任されてしまった。核開発を行うイランをISIL以上の脅威と考えていたマティスと協議による解決を目指すオバマ政権とでは馬が合わなかったようである。この時、マティスは海兵隊も退役している。
2017年1月20日、ドナルド・トランプ政権の国防長官に就任した。トランプからかなり信頼されているようで、人の言うことなど意に介さないトランプが耳を貸す数少ない人物の一人である。同年2月にはトランプ政権の閣僚として初めて日本を訪問し、安倍首相や稲田防衛大臣と会談をした。
人物
「マッド・ドッグ(狂犬)」という異名が表すように時々過激な発言をして物議を醸すことがあるが、その反面で数千冊とも言われる本を読破する読書家で、その知識は軍務でも役立てられたという。また、クリスマス休暇を家族と過ごさせるために部下と仕事を交代するなどの部下思いな一面や、妻子を持たずに軍人として国に尽くしてきた姿勢から国民には一定の人気があり、「ウォリアー・モンク(戦う修道士)」という異名も持っている。
マティスの人気ぶりを窺わせるものとして、国防長官就任時の一連の流れがある。本来、国防長官に軍人経験者が就任するには退役から7年以上期間を空けなければいけない。しかし、マティスは退役からわずか3年しか経っていないにもかかわらず、連邦議会での長官就任を巡る承認決議で圧倒的支持を得て、特例で就任したのである。また、基本的にトランプ政権と反りが合わないマスコミの報道でも、マティスの国防長官就任に関しては割りと好評で、トランプ政権の「良心」や「ブレーキ役」と表現された。
語録
- You go into Afghanistan, you got guys who slap women around for five years because they didn’t wear a veil. You know, guys like that ain’t got no manhood left anyway. So it’s a hell of a lot of fun to shoot them.
訳は「アフガニスタンに行くと、“ヴェールを着なかった”という理由で女性を5年間も引っ叩く奴らがいる。男らしさのかけらも無い連中でしょ?そういう奴らを撃ち殺すのは実に愉快でしたよ。」。中将時代にサンディエゴで行われた海兵隊の討論会での発言で、これに続けて「連中を撃ち殺すのは楽しい。いや、楽しすぎるね。」「私は喧嘩が好きなんだ。」など好戦的なコメントをしたため物議を醸し、当時の海兵隊トップからも「言葉を慎むべきだ」と苦言を呈されてしまった。ただ、これに関する懲罰などは受けていない。
- Give me a pack of cigarettes and a couple of beers and I'll do better.
訳は「私にタバコ1箱とビール2本をくれれば、もっと良い結果を導き出せます。」。大統領に就任したトランプがテロリストなどへの尋問方法として拷問の一種である水攻めを復活させるとしたことへのコメントである。このコメントの直後、トランプはあっさりと水攻めの復活を撤回しており、マティスへの信任の厚さを物語る一例となった。