概要
前作『大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス』以上に子供を意識した明るい話になっているほか、アメリカのバイヤーの要望で新たに白人の子供がレギュラーとして登場するようになった。
また、ガメラを称える主題歌「ガメラマーチ」が新たに採用され、今作以降シリーズの主題歌となった。
一方、大映の経営難が本格化した影響により、前作から予算が約3分の1にカットされ、撮影期間も1ヶ月にすら及ばずわずか25日で撮影を終わらせた(湯浅監督は、なんと一人で本編・特撮の両方を完遂した)。
そのため、ガメラが飛行するシーンで回転ジェットの代わりに後ろ足だけジェット噴射して飛行していたり(足だけを引っ込めて飛行するあの形態ではなく、それまでは回転していたはずの姿で回転せず飛んでいるという状態)、過去の映像を無理やり流用したりと(『大怪獣ガメラ』の映像を差し込んだせいで、カラー映画なのに一部だけ急に白黒になる。設定上は円盤から見た映像ということになっている)、数多くの試行錯誤が見られる。
華々しく流れた「ガメラマーチ」も、その辺の子供たちを寄せ集めて歌ってもらった代物とのこと(にしては結構達者な歌声だが)。さすがにこのことをそのままクレジットするわけにもいかず、存在しないはずの「大映児童合唱団」なるグループの歌唱ということにされた。
湯浅監督をはじめ制作スタッフは「これで(ガメラシリーズを)最後だ、これで終わらせられる」という(ささやかな)願望も含めて本作が最終作になるだろうと考えていたが、思いの他ヒットしたためシリーズの継続が決定した。しかし無情にも予算はそのままにされてしまい、必死の試行錯誤は次回作以降も続くことになった。湯浅氏もこれには参ったらしく、後に今作のヒットを振り返って「映画がヒットしたのに困ったなと思ったのは初めてだった」と語っている。
ちなみにガメラ映画はこの時点で低予算にもかかわらずヒットを連発する黒字作品であり、経営難に苦しむ当時のラッパ…永田雅一政権期の大映にとっては貴重な稼ぎ頭であった。そのため資金繰りのために、なんと、年2本のペースでやらされようとしていた時期もあったが、必死に抵抗して事なきを得た?らしい。
今日振り返ってみると今作は、昭和ガメラ最大の特徴ともいうべき低予算・突貫工事の二要素がいよいよ姿を現した、転換点ともいうべき一作であった。
海外版は上映時間が基準に満たなかったため、バイラス人が見た過去のガメラに関する記録映像の尺(ガメラとバルゴン及びギャオスとの戦闘場面)が日本公開版より多めに撮られており、湯浅監督は後年このことを知ったという。
あらすじ
地球征服を企てるバイラス人の宇宙船が襲来したが、それを事前に察知したガメラによってすべて破壊された。
しかし破壊される間際に送られた映像を見た宇宙船2号機に乗っていたバイラス人は、地球侵略の邪魔になるガメラの排除を目論む。
そのころ芽ヶ崎開眼でキャンプをしていたボーイスカウトの中谷正夫とアメリカ人の少年ジム・モーガンは、潜水艦で探検していたところガメラと遭遇。一緒に海底遊泳を楽しむが、バイラス星人の宇宙船から発射されたスーパーキャッチ光線によって動けなくなってしまった。
ガメラが子供に手が出せないことを知ったバイラス人は正夫とジムを人質にガメラの動きを封じた。
ガメラは頭に脳波コントロール受信機を取り付けられて操られ、日本を攻撃する。政府は閣議の結果、ガメラを攻撃する苦渋の決断を下した。
一方、宇宙船にとらわれていた正夫とジムは、脱出とガメラ救出作戦を画策する。
余談
劇中では、正夫とジムの二人の少年が小型潜水艇に乗り、海中をガメラとともに回遊するシーンがあるが、登場したこの潜水艇は本物で、ロケ地の葉山ヨットハーバーにあったものを借りて、撮影に用いている。
ドイツのUボートを製造したメーカーの製品との事だったが、あまり良く動かず、水中で転覆すると復帰できない代物だったという(危険なのでスタッフが正夫少年役のスタントを行っていた)。
ガメラがバイラスに腹部を攻撃されるシーンは、前作までほとんどアイディアが出尽くしただけでなく、大映本社に対する低予算と重労働へのあてつけだったらしい。
バイラスの宇宙船の内部セットは予算削減の中「一点豪華主義」としてこの部分には相応の予算をかけられて作られたが、宇宙船内のセットは一つだけしか用意できず、内装も整えられなかった。
劇中、正夫らの「この円盤の中、何にも無いなあ」という台詞は、それを逆手にとっている。
評判は良かったが、当時左翼系の組合員から「アメリカを表しているんでしょう」と言われたとの事。
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