「悪いけど、何度やっても、あなたに負けるとは思えないですよ」
概要
『兎-野性の闘牌-』は1996年から2017年まで伊藤誠が手掛けていた麻雀漫画。
1996年に『近代麻雀オリジナル』にて連載開始。2001年からは近代麻雀オリジナル増刊の季刊誌『WINNING』に連載を移動するが、2002年には『近代麻雀』に連載を移動。
麻雀漫画とは思えない美麗な絵柄と、超能力やそれに近い特殊能力を持った個性的なキャラクターが人気となる。2004年にはイラスト集『ビジュアルファンブック』も刊行されたほど。
しかし作者の筆が遅く休筆がちで、1年以上休載な事もあったが、『近代麻雀オリジナル』2017年6月15日号をもって21年の連載に無事幕を閉じた。
前述の通り登場キャラクターが本当に超能力、もしくはやそれに準じた能力を持っており、『哭きの竜』以降当時流行していた「超能力麻雀漫画」の典型である。
ストーリー
いじめられっこの高校生・武田俊(たけだしゅん)が高校生代打ち集団ZOOに入り、麻雀を通して成長していく。
登場人物
高校生代打ち集団『ZOO』
風間巌と馬場券悟らで立ち上げた、山城組傘下の代打ちを担当する組織。若さが持つ「大いなる野性」を高く買っているため、メンバー(『団員』とも呼ばれる)は高校生限定としている。他の代打ちと異なり、負けた場合は無報酬で負け分も負担、勝った場合の報酬のみで代打ちを請けているため、短期間で伸し上がってきた。
団員同士は動物から取られた暗称(コードネーム)で呼び合う。団員のコードネームはその能力や見た目、雰囲気から取られている。
武田俊(トップ画像右側の人物)
本作主人公で、コードネームは「兎」。
初登場時は高校1年生で山城麻雀後山口・山根と共に2年生に進学している。金色に近い茶髪で青い目。作家の母と二人暮らし。容姿を理由にイジメを受けていたが、巌、愛と麻雀の魅力に惹かれ、ZOOに入園する。当初は麻雀初心者だったが、作中で数々の戦いや出会いを通して成長し、山城麻雀後は実質ZOOのエースとなる。
物語中盤からはD・Dの子であることが発覚。D・Dとの血脈の騒動にZOOが巻き込まれたことに負い目を感じながらも、D・Dの一族との決着のために戦いに挑む。
対戦相手のキー牌、アタリ牌を完璧に察知して止めてしまう予知能力と運気支配が特徴。ただしツキはなく、相手のアタリ牌を良く掴んでしまう。
運気支配を応用し、自分あるいはパートナーを最短のアガリへと誘導、宣言どおりの巡目でアガらせる『ショートカット』という技もある。
山口愛(やまぐちあい)
本作ヒロイン。コードネームは「ユキヒョウ」。
母と弟妹と再び一緒に暮らすという目的のために金を必死で稼いでいる。登場初期は俊を不良に5000円で売ってしまうほどの守銭奴なシーンが目立ったが、後に仲間思いな所も目立ってくる。
技巧派で捨て牌を鋭く読む。精神的にも並みの高校生を遥かに凌駕する一面を持つ。特に俊と組むと俊に「ペアなわばり」という能力が発生する。
風間巌(かざまいわお)
ZOOのリーダー。トップ画像の上半身裸の人物で、コードネームは「団長」。
哭きの竜や鷲巣巌並みの驚異的な剛運が武器。
驚異的な配牌とツモ運に加え、防御も鉄壁でそこらの雀士など全く歯が立たない実力を持つ。元々は孤児で、その後弟である風間優ともに山城雷蔵に買われ、しばらくしてから山城組の代打ちから独立してZOOを設立する。
厳つい外見に似合わず、特技は料理。
山城組
山城雷蔵(やましろらいぞう)
広域指定暴力団山城連合会長。消防・警察委員会の委員長ポストを押さえた都政与党を宗教法人の力で裏から操る、政治権力を備えた組織の長。禿頭で甘い物が好物の老人。
スナッフビデオ(本当の猟奇・残虐シーンを特集したビデオ)の愛好家であり、また男色家でもある。風間兄弟、ゴン、イチローは雷蔵の色小姓として育てられた。誕生日は8月29日。山城麻雀終了後は巌と共に処刑場へのエレベーターに乗り行方がわからなくなっていたが、実際は処刑場に到着後、壁を破ってやって来たD・Dの娘、ケイトにより殺されていたことが描かれている。
花牌入り麻雀が得意で、曰く「お前らの花牌を引く運が10だとすれば俺は100」。また、槓をした際の嶺上開花で当たり前のように和了るのも哭きの竜、宮永咲レベルである。
D・D軍
デイヴィット・デイヴィス
通称D・D。自分の子供達からはデイヴ(またはディヴ)と呼ばれる事もある。徒手空拳で一個小隊を殲滅させるほどの力を持つ彼の人体破壊は芸術の域。
全てにおいて優れているが、「恐怖を感じない」という唯一の欠点を持つ。自身の優れた遺伝子をより強く残すため、世界中を渡り歩き子を作った。俊、優、クリス・スミス、ケイト、ロドリゲス、アマンダ、バーニー、ルーシー、ヴィヴィアンの父。大統領や国家主席の子供もいるらしいが本人曰く「劣性」。
作中に登場するバーニーの腕をもってしても摘出不能な脳腫瘍があり、自らの余命があまり残されていないことを知っている。最終戦の前にも既に体調を悪くしており、最終戦の終盤で一度意識を失って昏倒する。俊が素人の見まねながら脈を計った所脈が止まっており、その場で死亡したかと思われたが、ヴィヴィアンと俊が口論している間に何事も無かったかのように蘇生、起き上がってくる。
能力『ゴールデンタイム』は俊のショートカットをさらに進化させたもので、自らの剛運と予知能力を組み合わせ、他者を圧倒する早いアガリ巡目を宣言し、宣言どおりに和了する。
最終戦終了後、隔離部屋で自らの肉体を改造肉食アリに食わせることで、人生の幕を下ろす。
単行本表紙ではドラゴンを比喩した動物として掲げられている。
ネット上でも良く議題になる「麻雀漫画最強キャラは誰か?」というテーマでも、哭きの竜、傀(むこうぶち)、早見明菜(スーパーヅガン)、フランケン(根こそぎフランケン)と共に、必ず最強候補に名前が出るキャラである。