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1日外出録ハンチョウ

いちにちがいしゅつろくはんちょう

「1日外出録ハンチョウ」は、原作:萩原天晴、作画:上原求・新井和也による「カイジ」シリーズのスピンオフ作品(なお大元の原作者である福本伸行は協力の立場)。大槻班長とその仲間たちの地上での一日を描いた作品。キャッチコピーは「カイジの飯テロスピンオフ作品」。

物語

帝愛グループの地の底、日本のどこかも分からない場所、そんな地の底と地上を結ぶのは一日外出券のみ。この漫画はカイジが地の底にくる少し前の話。

地下の強制労働施設で、一日外出券を使い、豪遊の限りを尽くしている者がいた。

その名は大槻。通称ハンチョウと呼ばれる者が一日外出券をまんべんなく使い、地上でどのような一日を過ごすのか、大槻のちっぽけな地上での一日が始まる。

概要

中間管理録トネガワと同じく、カイジシリーズのスピンオフ作品。

24時間という「限られた自由」を、あらゆる知略を駆使して満喫するライフハック漫画である(当初はいわゆるサラリーマングルメ漫画の体で進んでいた)。

…まぁ彼の資金は、シゴロ賽を使ったイカサマチンチロリンや、誘惑した上でぼったくり商品を買わせるなどのアコギな方法で儲けた金なのだが。

わざわざスーツを購入してまで立ち食いそば屋で「昼間から酒を飲める成功者」を装って昼酒を楽しんだり、自分の中に沸き上がった肉欲(=美味い肉喰いたい!!という欲)の悪魔と格闘したりと多種多様な形で束の間の自由を謳歌する姿に、よく分からないけど何となく共感する層も多いとか。

しかし、本編ではあくどい商売でも今作では逆にネタとして納得できてしまうのがまた……

基本的には東京を中心とした街を外出先にするが、他にも名古屋や京都などの都市部、海水浴場やシーズンオフの海辺の町など様々な場所にも一日外出している。

行先自体の選択権はないものの、ローテーションを推測する形で大体の場所は事前にイメージ出来ているようである(または、地下施設の黒服のリーダー格である宮本と親しい仲になって以降は、彼を通して、行先を自由に選択できる様になっている可能性もある)。

尚アニメ版では、事前に希望した場所へ行けるようになっているらしい。

また、地下で自身が営んでいる売店の商品仕入れの為に地上に出る事もある為、道楽だけの外出とは限らない。

果ては夢か現実か、幽体離脱で沼川・石和らと地上に飛び出して外出を満喫する超展開もある。

なお、原作ではカイジが大槻の月収を72万ペリカと推測しているため、地下王国が同じ環境の場合は沼川、石和の3人で外出するだけで2ヶ月以上かかる

加えて外出中に食事や宿泊で使う金も自分で出す事になる為、それだけでも恐らく各員一万円以上(ペリカ換算で10万ペリカ以上)が上乗せされる。

読者からは「やたら外出してるけど、ペリカ持つのかこれ?」といった疑問があったのだが、一時連載休止の告知ではその理由が「実は度重なる外出でペリカを使いすぎた」というものであり、納得というのかなんとも…。しかも二度目の休載の理由がまたしても「ペリカの使いすぎ」である。

懲りてねぇ…このおっさん。

ちなみに連載も間隔を空けて行われている為、おおよそ外出に必要なペリカを貯めこんでいる設定にある意味沿っているともいえる。

この漫画はアニメ『トネガワ』の放送枠をジャックする形で、14・15・18・20・21・22・23話(2018年10月)にてアニメ化を果たした。

何かしら他作品パロディが出る事がたまにあり、「(マンガ)讃歌」では談義の回をいい事にこれでもかとパロディをぶち込んでいる。

コミックスではさらにエピソード間のページに一コマのさらなるオチが描かれていたりする。

大槻一味の意外な側面等から、『ハンチョウ』を読むとカイジの地下チンチロ編(特に大槻らの末路)を読むのがつらいという評価もあるとか…?

2023年現在、カイジのスピンオフシリーズでは完結した「トネガワ」「イチジョウ」と異なり連載中である。

地下労働施設

概ね設定はカイジ本編に則っているが、娯楽が少ない故に時折変な流行が発生する。その震源は様々で、後述の小田切が仕切る「地下映画館」で上映された「ロッキー」の影響で筋トレブームが起きて労働者の大半がムキムキマッチョになってしまい果ては地下ボディビル大会が発生したり、謎のトレーディングカードゲームの流行と何かしら珍ブームや珍騒動がある。過去には何故かダチョウが意味もなく放たれて労働者がパニックになった事もあるとか…。

登場人物

本編にも登場した人物

大槻太郎

CV:チョー

※カイジ本編での大槻は「大槻班長」を参照。

本作の主人公。チンチロやぼったくり販売でペリカを巻き上げる一方で、地上で24時間の中で有意義に楽しむことを目的に外出を堪能する道楽家な面を持つ。

沼川拓也

CV:佐藤拓也

大槻の腰巾着その1。

縛った長めの髪が特徴。本編では参謀役であったが、外出録では大槻や石和の奔放さにツッコミを入れたりする苦労人。当初は一日外出に慣れていないのか、いざ何をしようか思いつかなかったりして大槻の器用さに合わせて外出している。

作中では宮崎県出身で実家は酒屋を営んでいる設定になっている。歳の離れた弟・大生がいる。

ちょっとした切っ掛けで物事にハマる癖があるようで、地下にあった漬け物の作り方の本をたまたま読んであらゆる漬け物に対するチャレンジ心が目覚めてしまい、大槻を軽く引かせてしまったことも。ちなみにその漬物は帝愛No.2である黒崎に食べられて、全て持って行かれてしまった。余程その漬物が美味かったようである。

また変に気難しい部分もあり、キャベツの千切りを味噌汁に浸して食べるところを大槻達にからかわれた時はかなりヘソを曲げてしまった事もある。

推定年齢は35歳。

石和薫

CV:松岡禎丞

角ばった顎とヘアースタイルが特徴。大槻の腰巾着その2。

本編では大槻の用心棒的な存在だったが、外出録では結構おとぼけキャラな大雑把なキャラクターに。沼川は「俺はもう慣れました」と苦笑していたが、イビキや歯軋りがかなり激しい。食に関しては大味で、これといった拘りが無く、とりあえずガッツリ食べれるなら何でもいい様子。作中でも傍らでなにか食べている描写が多い。

幕末ファンであり、実は大槻も大の幕末好きで意気投合した一日外出を行った事がある。意外と涙もろい他に釣りに造詣が深い。

推定年齢は34歳。

小田切

CV:前野智昭

地下労働施設のC班班長で大槻のライバル。

本編では、大槻のチンチロのイカサマを見破ったカイジを腕尽くで組み伏せようとした大槻一味に第三者として詮議を申し出たり、その後のチンチロ勝負における事実上の審判役を請け負うなど、中立の立場を貫きながらも、結果的に大槻を破滅に至らしめるのに助力する形となった。

外出録ではタブレットPCにダウンロードした映画を上映する「地下映画館」やそれに便乗させた大槻と同様のぼったくり販売でペリカを稼いでおり、大槻とは度々しのぎを削り合っている。

とはいえ、大槻達の「マンガ談義」「恋バナ」に入ってくるあたり「わかる話」には食いついてくる模様。

大槻は手堅い商売をする小田切を「レンガの家」で自分は「藁の家」と評していたが、本編の展開を考えるとあながち間違いでもない。

外出録オリジナルキャラクター

宮本一

CV:増田俊樹

地下E班監視リーダーの黒服。

当初は大槻の地下でのやり方に不信感を持っていたが、ある事で意気投合。それ以来大槻一味と交遊を深める仲にまでなってしまった。黒服の中では上の立場にある為か、都内某所の高級マンションに在住しており、自身の誕生日には大槻一味を餃子パーティーに招いているが、その裏である人物によって不思議な事件が起こる事となる…

誕生日の時点で30歳になっている。

柳内

初老の黒服の一人だが、他の黒服と違い料理が趣味の持ち主であり、あの舌が肥えた大槻でさえも舌を巻く程の腕前を持っている。それゆえモノローグでは「鉄人・柳内」と称されている。初登場は第23話「年越」で年越し蕎麦を「十割蕎麦」として打っていた(帝愛の意図とは関係なく、あくまで自分の趣味で)。

後に地下労働施設の食堂の厨房に配置された所、それまで味気ない地下の食事に手の込んだメニューを出して以降、地下の住人達に「飯屋の救世主(メシア)」と密かに呼ばれる事となる。ちなみに殆ど感情を顕さないが、蕎麦の評判や厨房配置継続に密かにガッツポーズをする等料理にこだわりを持っている。特に蕎麦に関しては先述の通りプロ顔負けのレベル。

後に異動による配置転換の決定で地下の食事の質が再び劣化したが、後継の料理に対する熱意を知っており大槻達に蕎麦屋で後継者の川井の成長を見守ってほしいと諭した。

なお、蕎麦にとどまらない食に関しての知識や蘊蓄は大槻以上らしく的確にオススメの蕎麦屋を教えている。

料理の腕と寡黙でクールな渋さを持つカッコよさから大槻には尊敬の念を抱かれている。

牧田

黒服の一人で、二人の息子を持つシングルファーザー。宮本の指導係だった。

国立科学博物館の年間フリーパスを持っているほどの科博愛好家で、大槻達が興味本位でそこに立ち寄り、全体の規模をまったく把握していない大槻達のあまりにも遅い歩みに我慢できず案内を買って出たことで縁が出来る。

二人の息子を大切にしているものの帝愛のハードな仕事で度々遊ぶ約束などを反故してしまうことに申し訳なく思っており、出来るだけ要望を叶えようと奮闘している。

それゆえか世話焼きな面があり、木村のデート用の服選びでは、趣旨を間違えている彼を見兼ねて自らコーディネートしたり、ゴルフ初心者の大槻達が適当にゴルフの打ちっ放しをするのに耐えかねて指導(大槻達はそういう「教え魔おじさん」を呼ぶために敢えて大げさに振る舞っていた)したりしていた。

川井

黒服の一人で、元パチプロ。タラコ唇に無精ひげ。

柳内の後任で地下の給食長に配置された。配置換え当初は柳内の料理に比べれば差は大きく、「繊細さのかけらもない」「料理のりの字も知らなそう」と大槻らには称されたが、出汁取りのコツを柳内に聞くなど熱心な気概を持ち、柳内の意志を継ぐ男。後に新型コロナの影響で一時感染予防のため地下労働者が自炊することになった際も、コスパのいい訳あり食材や調味料などを手配していた。

一方でアニオタな面もあり、後に「鬼滅の刃 無限列車編」を観たことによる「鬼滅ロス」で仕事に手が付かなくなり、一時期著しく料理の質が落ちて(おかずが大根おろしやせんべい、特に酷い時にはご飯がおかずになったことも)労働者達が悲鳴を上げていた。

若手の黒服の一人。

宮本や牧田のことを人一倍尊敬しているが、彼らと仲が良い大槻のことは毛嫌いしており、高圧的な態度を取っている(もっとも、宮本や牧田の方が大槻らと距離感が近すぎるのであって本来は菅の様な対応が黒服としては普通とも言える)。

板井

地下労働施設のA班班長。熊本県出身。

現在は温厚だが、大槻曰く昔はギラついていて、殴り合いの大会を開こうとしたり黒服を盗んで脱走を企てようとして懲罰房に三回も入れられた過去がある。

岩田

地下労働施設のB班班長。大分県出身。

瀬戸内

地下労働施設のD班班長。元イラストレーター。

木村正一

元地下労働施設の労働者。

バブル崩壊の時期、30歳過ぎで地下入りして以降、4半世紀近くも地下労働の日々を送り続け、13話で任期を満了し、地下から開放される事となり、その出所の付き添いを大槻に依頼する。人を疑う事を知らない純粋な性格であるが、何故か大槻達からチンチロのカモにされる事もなく、普通に友好的な関係を築いている。

地下落ちの間、一度も地上に出ておらず、情報も古新聞や古雑誌などで得ていた為か、服装やトレンドが地上と大幅にズレている(「おっはー」、「エアマックス狩り」など)。

地下から抜けた後は、交通整理の仕事をしながら、西武線沿いにあるアパートで暮らしていたが、その後正社員として雇用されると埼玉の新座にあるマンションに引っ越す。たまに大槻達の一日外出の泊まるところ(通称・ホテル木村)となっては楽しい時間を過ごしていたりする。

元労働者であるが、今は一般人になったため黒服達からはさん付けで呼ばれている。

推定年齢は53歳。少なくとも約20年近く地下にいたと思われる。

その他

この作品の舞台背景となる時代は実のところ結構あやふや(※)で、原作である破戒録が掲載されていた頃にはそこまで普及していなかった・まだ存在していなかったはずのガジェット(タブレットPC・ニンテンドースイッチ等)やサービス、マンガ談義で何故か大槻が同じヤンマガ掲載作品の「彼岸島」の「48日後」を知っている矛盾があったりする(同じスピンオフ作品のイチジョウは明らかに現代に近い舞台設定)。

極め付けは第73話で、地上で新型ウイルス(直接明言されてこそいないが描写的にどう考えてもコレ)が流行った為、一時的に外出が禁止されるという時事ネタまで入れられる有様で、どうもカイジ本編とは異なり連載時期に合わせたものになっているようである。

第56話『九州』で唐突に九州にクローズアップしたネタが出たのかというとハンチョウ原作(シナリオ)担当の萩原氏(宮崎出身)と作画の上原氏(佐賀出身)の対話が元になっているからとのこと。おそらく原作では語られなかった沼川の宮崎出身もそこから来ていると思われる。

なお、大中華喰台祭の回は現在の版では諸事情で一部コマが連載時から差し替えられている。実際電子書籍版ではこの差し替え版にいつの間にか変わっていたとされる。

なお、カイジシリーズの原作者である福本氏はあくまでも協力者でありスピンオフに関してはノータッチの立場にあるという。理由は自分がコレに関わるとアレコレ物言いをしたくなるかららしい。なお、作画の二人はフクモトプロダクションのアシスタントであるとの事。

※:カイジ本編ではおそらく舞台設定はまだ連載開始当初の時代で進んでおり、わかりにくいがスマートフォンではなくまだガラケーが主流である描写がある。また、ハンチョウの話中で沼川の懐かしんでいたゲーム機(PS2がモデル)自体まだ世に無かったり、即席で行っていたテーブルトークゲーム「人狼」もその頃は知られていなかった。

直近の時系列でも紙の世帯型被保険者証が存在しており、1人1つの被保険証カードが交付された平成15年以前であるのは確かだが、ついにシンな光の巨人を観に地上に出てきている事まで判明している。

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