概要
TC10巻「人間切断機」に登場する。初出は「小学二年生」誌1975年12月号。
一見、身体を真っ二つに切り分けているようだが、切られている側に全く痛みはない。
それどころか切った断面から一切出血しないのだ。
また双方の切断面に、付属のチューブ入りの専用接着剤(ドラえもんは「かんたんにくっつく糊」と言っていた)を塗り、接着すれば元に戻る。
実態はどこでもドアやとりよせバッグと同様に空間のつながりに働く道具だと推測される。
一見分割されたように見える上半身と下半身は空間を越えてつながっている状態なので、感覚がある上切られた側は自らの意思で離れた下半身を動かせる。
「人間切断機」とはいうものの人間以外も切断できる。
電子頭脳とセットで使用すると意外と便利である。下半身に皿のような形状の電子頭脳をつければ、2つの用事をこなす一人二役が可能になるからだ。
ちなみに上半身のみで移動する際は誰かに運んでもらうか這って進まなければならない。
外観
四角い台座があり、そこから伸びたアームに丸鋸がついている。
切る対象物を台座に寝かせて箱をかぶせて切ると、痛みを感じさせないまま切ることができる。
分割された体の断面は空間でつながっているらしく、その秘密は切る部分へかけるカバーにあるといえよう。
丸鋸の刃が当たるとともに、断面に空間をつくり出血を伴う体の分離を防いでいるのではないかと思われる。
付属の専用接着剤はチューブ状の形状をしている。
切った対象物を元に戻す際に、搾り出して断面に塗って結着させる機能がある。
普通の糊は単純に物を結着させるが、この専用接着剤は生物の肉体の断面を結着させて断面にある空間を解除して元の体に戻す機能があると思われる。
糊を使わない場合、上半身を下半身に載せても固定されておらずずり落ちやすい状態になる。
このチューブは中身を切らしたときのために未来の世界で単品でも販売している。
問題点
頭が上半身にある場合は、下半身には目がないため見えないところに移動した場合、感覚頼りの暗中模索となるため不便となるほかに見えない不安に陥るであろう。
かんたんにくっつく糊を使えば元に戻ると述べたが、裏を返せばかんたんにくっつく糊の粘着かないと元に戻らないことになる。いくら切り口が時空を越えて繋がっているとしても分られた体は吸着することなく小さな反発で いつまでも元に戻らない。
だから、その場に専用ノリがなかったり、何らかの事情で入手が困難だったり、最悪の場合なら生産終了してしまえば代替手段がない限り、永遠に切断されたままでいることとなるだろう。
人工知能を持ったこと故に自我を持ち上半身への不満から反乱を起こし上半身を載せまいと去って行ってしまう。さらに下半身は上半身がないぶん身軽なので捕まえることが困難である。
あらすじ
ある昼下がり、のび太はドラえもんとテレビを見ていたが、そんなテレビがいい所でママから電球の買い物を頼まれる。「身体が2つあったら」と思うのび太に、ドラえもんはポケットから切断マジックに使う機械に似たひみつ道具「人間切断機」を取り出した。
のび太は「このタネは僕知ってるよ、体の上と下は別の人が入るんだよね?」と言うが、ドラえもんは「入らない」と一言だけ。
※ イメージ
『ほんとに切るやつがあるか』
身体を真っ二つにされたのび太は血相を変えて文句を言う。しかし本当に切れるが、切られた本人から出血はなく痛みもないらしい。また、ドラえもんは「糊でくっつけられるから心配するな」と言う。そしてのび太の下半身に皿状の人工知能を搭載、お使いに行かせるとのび太とのんびりテレビを見るのだった。
街を歩くのび太の下半身。電器屋に着くや否や店主に驚かれるが、無事お使いを済ませた下半身は自宅に戻る。のび太はその下半身におやつを持ってくるように頼み持ってこさせるが、ドラえもんと一緒に食べてる最中に下半身もおやつが食べたくなったらしい。それにのび太は「口がないのにどうやって食べるの?」とからかう。
続いて2人はしずかの家に遊びに行くことになり、身体を接着しないまま上半身を下半身に載せた状態(つまり動くとズレるおそれがある)でしずかの家に向かう。その道中、ジャイアンとスネ夫からサッカーに誘われたため、ドラえもんの調停で下半身はジャイアンとスネ夫とサッカーに、上半身はしずかの家に行くことになり、のび太はドラえもんに抱えられ運ばれる形でながらしずかの家へ向かった。
一方、サッカーでは身軽な下半身がジャイアンとスネ夫を翻弄し、蹴飛ばすなどいたずらのし放題。怒った2人は下半身を追い回すが、身軽に動き回る下半身を捕まえられない。
すっかりバテた2人、そしてスネ夫の一言で下半身は気づく。「さっきから気分がいいと思ったら、上に余計な物が載っていないからだ。これまで僕はいつも損してた。テレビ見たり、おいしい物食べるのはいつも上の方で…。僕は重い体を載せて、歩かされてばっかり」と、自身の境遇に不満を抱いた下半身は反抗を始める。
一方ドラえもんやしずかとトランプをしていたのび太だったが、そこにアイドルのももぐちやまえがロケをしているという声が聞こえ、ドラえもんとしずかは夢中でのび太を放って公園へ向かうが、下半身のないのび太は置いてけぼりになってしまう。必死にに這いずり後を追うのび太の前にちょうど下半身が通りかかり、さっそく「こっちだよ」と呼ぶが、下半身は「もう君を乗っけるなんて嫌だよ、僕は自由に暮らすんだ」と言い残してどこかへ行ってしまう。まともに動けず困り果てるのび太は、さらに弱り目に祟り目というか、通りかかったジャイアンやスネ夫には「足(下半身)のやったことはお前の責任」という理由でボコボコに殴られる。
ドラえもんに相談するも下半身だけの状態だと逃げ足が速く、容易には捕まえられない。そこでドラえもんは一計を案じ、のび太に水を飲みまくるよう勧める。しばらくして尿意を催した下半身は公衆トイレに駆け込むが、手がないためそのままでは用が足せないことに気づき、泣く泣く上半身の下へ戻ってきたのだった。
余談
- アニメで放送された際の一部のBGMは「ウルトラマンタロウ」第39話、41話、46話、50話のBGMが使用されている。
- 魔夜峰央の漫画「パタリロ!」ではこの回のパロディと思わしき話が存在している。
- 古典落語に「胴斬り」という似たような噺があり、F先生がこれに着想を得た可能性がある。
- 内容は、ある大工の男が辻斬りに胴体を一刀両断されるが、体が2つに分かれながらも生きていて、しかも双方が別々の人格を持っている状態だった。この体でもできる仕事を斡旋してもらった結果、上半身は銭湯の番台勤め、下半身は蒟蒻屋で蒟蒻玉を踏んで捏ねる仕事をすることに。ある日大工の兄貴分が上半身に会いに行くと、上半身は「目が霞んで仕方がないので、下半身に膝の三里に灸を据えるよう頼んでほしい」と言伝を頼んできた。そこで兄貴分が下半身に会いに行くと、下半身はその話を了承した上で、自分も「上半身にあまり湯茶を飲まないように言ってくれ。小便が近くていけねえ」と言伝を頼む、という物。