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ラインハルト・ハイドリヒの編集履歴

2012-07-07 03:11:04 バージョン

ラインハルト・ハイドリヒ

らいんはるとはいどりひ

ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ(Reinhard Tristan Eugen Heydrich)は ナチス・ドイツの軍人、政治家である。

概要

親衛隊大将や国家保安本部(RSHA)の初代長官、最終的にはベーメン・メーレン保護領総督にまで上り詰めた。

ドイツの政治警察権力を一手に掌握し、ハインリヒ・ヒムラーに次ぐ親衛隊の実力者となった。ユダヤ人問題の最終的解決計画の実質的な推進者であり、その冷酷さから「金髪の野獣」と渾名された。


生い立ち

幼少期のトラウマ

ラインハルト・ハイドリヒはザーレ地方のハレで1904年3月7日に誕生した。文化的にも経済的にも恵まれた中流家庭の生まれである。父はオペラ歌手で母はプロのピアノ奏者であった。

本人も容姿端麗・成績優秀・運動能力バツグンで、少年時代もそうであると思われがちだが、違っていた。

ラインハルト少年は内気な臆病者で、そのことで厳格な親から叱られ、友達も出来ずいじめられた。

いじめられた理由の一つに「ハイドリヒの先祖はユダヤ人というものがあった。

これは事実無根の言いがかりであったが、生涯この噂は付き纏い、ラインハルトを苦しめた。

ラインハルトにとってユダヤ人は到底許されざる存在となり、これがユダヤ人絶滅へと繋がっていく。


軍隊へ

第一次世界大戦が始まり、16歳になると右翼系の少年義勇軍に参加。ユダヤ人の噂を払拭するためである。

ラインハルトはその金髪碧眼と長身、いわゆるドイツ人らしい容姿によって優遇させられたという。

大戦が終わり、1922年にはドイツ海軍に入隊。練習艦「ベルリン」の乗組員となり、後の海軍提督・ヴィルヘルム・カナリスとも知り合う。

やはりここでも「金髪のモーセ」などといじめられたが、能力はずば抜けて優秀だったため、このままいけば有望な出世コースが待っているはずだった。

それは、青年ラインハルトの悪癖によってその道を閉ざされてしまう。

プレイボーイとして有名であったラインハルトはある女性と一夜を共にし、一方的に振った(具体的にどのようなことがあったかは定かではないが…)。ところが、その捨てられた女性から結婚してほしいと迫られるも、「結婚前交渉する女は嫌いだ」と邪見に扱い、断ってしまう。

実は、彼女の父親はドイツの大企業「IGファルベン」の重役で、その父親は海軍司令部とコネを持っていた。一連の顛末を聞いた父親によってラインハルトは軍法会議にかけられる。

反省の色が無いラインハルトは結果、この時の海軍最高司令官だった(後の元帥)エーリヒ・レーダーから「将校として、また紳士として不適切な行為をした」と至極真っ当な理由で除隊処分を受ける。

ラインハルトは自分を首にしたレーダーを、死ぬまで恨むことになる。


ナチスとSSとの出会い

海軍での地位を棒に振ったラインハルトは、後に妻となるリナ・フォン・オステンの勧めで当時勢力を伸ばしつつあったナチスに、1931年入党。そして親衛隊にも入隊した。

ある時、ラインハルトの知り合いの勧めで、SS長官ヒムラーと対面。ヒムラーは当時設立したSSの諜報機関の長を探しており、情報将校であった彼を諜報将校と勘違いし喜んでいた。あらゆる私情を職務から切り離す能力、ひたすら冷静に能率のみを追求する精神、必要とあれば汚い手でも平気で使える神経を、ヒムラーは大いに気に入ったため、諜報機関のトップに任命された。

しかし、ラインハルトが着任したときの機関は粗末なオフィスが本部で、正式な名前すら無かった。おまけに安月給という、あまりにも惨めな待遇からスタートした。

ところが、ラインハルトはたちまち巨大な機関を造りあげた。ナチスにとって好ましくない存在を弾圧するのが彼の機関の主要な任務だったが、ヒムラーはじめナチス幹部の政敵に関する個人的な情報の収集活動も行い、スパイ小説に影響された「C(ツェー)」というコードネームを用いて諜報活動に専念した。

入隊した当時は中尉だったが、同年には少佐となった。翌年、この諜報部門がSD(親衛隊保安諜報部)と正式に命名されSD長官にも就任。そして1933年には29歳の若さで准将、翌年には少将にまで昇進し、ゲシュタポ(秘密警察)の担当責任者を兼任するに至った。


第三帝国に君臨する『金髪の野獣』

1933年、ヒトラーはドイツ首相に就任。国家全権を掌握するに至った。SS長官ヒムラーはミュンヘン警視総監に就任し、ハイドリヒ昇進してミュンヘンの刑事警察政治部局長に任命された。

ハイドリヒはSSをドイツ全土の治安維持のための警察権を一手に担い、ナチスに反抗する勢力を撲滅するための、ナチス政権下の国民を監視するための組織にしようと、ヒムラーと共に行動し始める。

しかし、その警察権はただ一つプロイセン州にだけは及ばなかった。プロイセンはあのヘルマン・ゲーリングのお膝元という地で、ゲーリングはヒムラーとハイドリヒのことを好いても信頼してもいなかったが、この頃SA(突撃隊)の長官・エルンスト・レームと対立関係にあったためにゲーリング一派と親衛隊は同盟関係を結ぶこととなる。

1934年、ハイドリヒはゲシュタポの長官に就任。その2ヶ月後にSSによるSAの粛清が行われた。いわゆる「長いナイフの夜」である。この粛清を立案したのはゲーリング・ヒムラー・ハイドリヒの3人だった。ハイドリヒは粛清対象のリストを作成し、エルンスト・レーム以下多くの突撃隊幹部の委細を調べ上げた。ヒトラーとレームは長年の盟友ともいうべき仲であったが、独裁者の地位をめざすヒトラーにとって、国防軍とSA間に生じ始めた軋轢は解消しなければならない問題だったし、ましてハイドリヒにとってはヒトラーとレームの友情など問題にならなかった。こうして粛清が実行され、約200名以上の人間が殺害された。これ以後、SAは一気に勢力を増大させていくことになる。

1936年、ヒムラーはドイツ警察長官に就任。ゲシュタポと刑事警察は統合されて保安警察(SD)となり、ハイドリヒがその長官に就任した。ヒムラーとハイドリヒの台頭を気に入らない内務相ウィルヘルム・フリックは、SS大将のクルト・ダリューゲを警察長官に推したが、この試みは失敗に終わった。警察はヒムラーとハイドリヒが牛耳り、秩序警察長官ダリューゲはナンバー3の地位に甘んじなければならなかった。やがて秩序警察の権限は大部分がハイドリヒのもとに移されることになる。その後ダリューゲは上級大将に昇進したが、すっかり窓際に追いやられてしまった。

SD長官と保安警察長官を兼ねるハイドリヒの権力は今や絶大だった。内務省も法務省も彼には手出しができなかった。「誰一人彼の前で嘘はつけない」とナチスの最高幹部たちですらハイドリヒのことを恐れ、冷徹冷酷で知られるなSS隊員ですら彼に睨まれると震え上がったといわれる。「金髪の野獣」と呼んだ。

一個人としてのヒムラーは思いやりのある好人物だったと伝えられるが、ハイドリヒは違った。彼はめったに笑わず、人前に出ることを好まなかった。ハイドリヒはフェンシング・乗馬・飛行機といったスポーツに長けて、SSの体育監察官を務めるほどだったが、それでも友人はほとんどいなかった。SSの高級幹部たちと遊興に耽ることはあったが、冷たい美貌の持ち主だったのに、娼婦たちの間でも不人気だった。写真を撮影されるときも、ハイドリヒは狼のような目つきでカメラを凝視するために、彼が笑顔を堪えて写し出された写真は殆ど無いと言ってもよい。

ヒムラーにとって総統ヒトラーは絶対的存在であったが、上司が総統に見せる忠誠心をハイドリヒは侮蔑していた。ハイドリヒはあらゆるイデオロギーを軽蔑しており、ナチスの主義思想を信奉しようとは全くしなかった。ヒトラー暗殺未遂事件のあった1944年7月20日までハイドリヒが生きていたら、たぶん彼はシュタウフェンベルク大佐に味方しただろうと推測するものさえ、ハイドリヒの知人だった人々の中にはいるほどである。



フィクションにおけるハイドリヒ

その冷徹さ・カリスマ性がウリで、主にWWⅡを舞台・モデルにした作品に出ることが多い。

日本においては漫画・小説・ゲーム以外の作品にはめったに出ない上、戦時中に死去してしまう事からヒトラーやヒムラー、アイヒマンに役を取られがちである。


  • 「死刑執行人もまた死す」(1943)

戦時下のアメリカで作られた映画。ハイドリヒの手腕を恐れた連合国がチェコ人のレジスタンスに暗殺を命じ、その暗殺計画に関わるレジスタンス達の切迫した状況と葛藤を描く。

ちなみにハイドリヒが死去したのは1942年なので、死からわずか一年後に作られたものである。

  • 「レートル」シリーズ(1990)

主人公のライバル役の人物・ヴィクトールの叔父として登場。

WW2以後も第三帝国が存在する世界で第三代総統となる。

  • 広江礼威作品

『翡翠峡奇譚』(1993)で総統直属部隊の女魔術師に脅され敬語で命乞いをするという場面がある。また『ブラック・ラグーン』(2001~)では元SS将校の回想で名前だけ登場する。

  • 「策謀」(2003)

アメリカで放映されたTV映画。大戦末期にハイドリヒ主催で開かれたユダヤ人問題の会議『ヴァンゼー会議』を描いたもの。何気ないナチス高官たちの会食の中で、600万人ものユダヤ人の運命が決定されてしまう。

海外映画におけるハイドリヒのような独特のいやらしさを持つ描かれ方をしている。

第四帝国国民に「ラインハルト」という人物が登場する。容姿がよく似ているがどう見ても小物のため別人である。非公式だが作者が「ハイドリヒの子孫」と語ったという話がある。

現代によみがえった、ネオナチと言っていいのかわからない謎の魔力と残虐性を携えた組織聖槍十三騎士団の構成員。戦時中に魔術師に誑かされ、怪しげな組織に入りそのまま生き延びた。人外化したためか百余歳にも関わらずイケメン。ちなみに構成員は全員すごくかっこいい

  • 『神の棘』(2010)

保安本部所属する主人公・アルベルトは上司のハイドリヒからヒトラー政権に反発するカトリック教会の摘発の指名を受ける。そして、アルベルトの親友で修道士のマティアスと再会して様々な陰謀が繰り広げられてミステリー歴史小説。


なお、名前のラインハルトと聞くと某SF小説作品金髪の孺子を思い出してしまうのは、やはり知名度の違いというべきか…。あの作品では軍務尚書あたりがハイドリヒに相当する役柄だと思う、というのは余談。


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