概要
1967年3月26日に放送された回で脚本は金城哲夫氏。
ウルトラマンでは初回放送の中で最も視聴率が高い42.8%を記録している。
この回は「ウルトラマンがいれば科学特捜隊は必要ないのではないか」ということで苦悩するイデ隊員の葛藤と奮起が描かれており、実質彼の主役回ともいえる内容となっている。
登場怪獣
STORY
ある日、銀座の真ん中にあるデパートの真昼間。大勢の人がパニック状態で逃げていた。
押し寄せてくる人込みをかき分けながら警備員たちが駆け付けようとしている間、デパートの定員たちはその得体のしれない物に対して怯えていたが…
子供「ママ、ピグモン!ピグモンだよっ!!」
※実際の映像と異なります。
なんとその正体は多々良島で死亡したはずのピグモンだった。
得体のしれないピグモンに対して警備員たちも手を出せず、止むを得ず科学特捜隊に連絡をする。
駆け付けた科特隊は、思いがけない再会に喜んで出迎えるが、ピグモンは必死に何かを訴えていた。
イデ「あのぉ~どなたか通訳できる方はいらっしゃいませんか?」
アラシ「馬鹿!怪獣の言葉が分かる人がいるもんか!」
基地へ戻った一同は、ピグモンが何を伝えようとのかを解明するため、イルカの言葉を研究している権田博士によってその声を翻訳してもらうことにした。
依頼を受けた権田博士は、早速ピグモンが言葉を発していることを発見するもののその言葉を分析するのはかなりの難題だった。
アラシ「おいイデ!なんだこれは!?」
一方、基地ではアラシ隊員がイデ隊員に対して3日前に頼んでおいたスパイダーとマルス133が修理されていないことで怒鳴り散らしていた。
イデ「ごめん…忘れてたんだ。」
更に文句を言おうとしたアラシ隊員にフジ隊員は、怪獣語翻訳機の製作で連続で徹夜をしているとフォローするが彼は、引き下がらない。
いつもの元気がないイデ隊員は、すぐに修理をすると言い指令室を去ろうとするとそこへハヤタとムラマツ隊長が戻ってきて、ピグモンの言葉が何とか解明できそうだと報告に来る。
そのまま翻訳機の製作と武器の修理を行うイデ隊員のところへハヤタはコーヒーを差し入れに行く。
イデ「ハヤタ、君は何も感じないか?」
ハヤタ「何を?」
イデ「仕事の事さ。我々、科学特捜隊がどんなに頑張っても…結局敵を倒すのは…いつもウルトラマンだ。僕がどんな新兵器を作っても大抵役に立たんじゃないか。いや、新兵器だけじゃない!我々科学特捜隊もウルトラマンさえいれば必要ないような気がするんだ…!」
イデ隊員の告白に対してハヤタは、科学特捜隊だってウルトラマンを助けたことがあるじゃないかと励ますが彼の表情は険しいままだった。
一方、その日の夜。
大岩山で巨大な2つの影が動いていた。
両者は、敵と認識して戦いを始めるがもう一方の唸り声を聞くと急に大人しくなる。
翌日、権田博士と共に基地に来たピグモンは、早速イデ隊員が完成させた怪獣語翻訳機で言葉を通訳してもらう。
ピグモン「”科学特捜隊”ト”ウルトラマン”ニ倒サレタ怪獣タチガ”ジェロニモン”ノ力デ命ヲ復活シテ”科学特捜隊”ニ復讐スルタメ、総攻撃ヲカケル!」
なんと、ピグモンが伝えたのは、一度死んだ怪獣にもう一度命を吹き込むことができる怪獣ジェロニモンの手によって、総勢60体の怪獣が後5時間で復活し、日本に総攻撃を仕掛けるという恐るべき計画だった。
科学特捜隊は、早速ピグモンの案内の元、ジェロニモンが潜伏する大岩山へと向かう。現場には既にテレスドンとドラコの2体が集まっていた。
ムラマツ隊長は、2体を倒すべく二手に分かれて撃つことに。案内をして来たピグモンはジェットビートルで留守番をすることになった。
だが、ハヤタと共にドラコの方へと向かったイデ隊員は相変わらず消極的なままで、空を見上げてばかり。
イデ「ウルトラマンが今に来るさ…」
ハヤタ「バカを言え!棚から牡丹餅式で勝利が得られるか!?ウルトラマンは、我々が力いっぱい戦った時だけ力を貸してくれるんだ!!」
一方のムラマツ隊長は、アラシ隊員とフジ隊員のスーパガンと合わせたトリプルショットでテレスドンを倒すことに成功する。
ハヤタたちもマルス133でドラコの肩を負傷させることに成功したが二人に気づいたドラコは彼らを襲う。
イデ「ウルトラマーン!ウルトラマーン!!」
襲ってくるドラコに対してすっかり怯えてしまったイデ隊員を見てハヤタはウルトラマンに変身しようとするが、これでは彼のためにならないと思い止まる。
そこへビートルに置いてきたはずのピグモンが駆け付けてきた。
ピグモンは、わざとドラコを挑発して自分に標的を変えさせたのだ。
怒ったドラコは、そのままピグモンを叩き潰してしまう。
ハヤタ「ピグモン!」
ハヤタは、イデ隊員と急いでピグモンのところへ駆けつけるがピグモンは目を閉じてそのまま息を引き取る。
ハヤタ「イデ!ピグモンでさえ我々人類の平和のために、命を投げ出して戦ってくれたんだぞ!!科特隊の一員として恥ずかしくないのか!!」
ハヤタに平手打ちをされてイデ隊員はようやく自分が間違っていたことに気が付く。
イデ「僕が間違っていた…くそ…っ!」
戦う決意を固めた彼は、向かってくるドラコに対して新兵器「スパーク8」をスーパーガンにセットして発射する。するとドラコは、バラバラに吹き飛ばした。
手駒を失ったことでジェロニモンはムラマツ隊長たちのチームの方へ姿を現す。テレスドンの時と同様にトリプルショットで応戦するが半重力ガスで宙に飛ばされてしまう。
ハヤタはウルトラマンに変身して3人を助けるとジェロニモンに挑む。
ジェロニモンは、尾の毒針羽根を飛ばして、ウルトラマンを苦しめるが空中で全て羽根をスペシウム光線で撃ち落とされ、飛び掛かられた上に頭部の羽飾りをむしり取られてしまった。
むしり取ったウルトラマンは、無重力光線をバリアーで跳ね返し、そのままリフトアップして、イデ隊員に攻撃をするよう指示を出す。イデ隊員は、ウルトラマンに命中しないように慎重に狙い、スパーク8でジェロニモンを倒すことに成功する。
イデ「やったぁ!やったぞ!!ジェロニモンは俺がやったぞ!!」
自信を取り戻すことができたイデ隊員を見届けるとウルトラマンは、頷いて空へ飛び去って行く。合流したムラマツ隊長たちは彼を称賛し、フジ隊員からは「今日の英雄」と称された。
ハヤタ「英雄はここにもいるぜ。」
そこへハヤタがピグモンの亡骸を抱えながら合流する。
ムラマツ「我々科学特捜隊はピグモンに対し、人類の平和に尽くしたその功績を認めて、科学特捜隊特別隊員の称号を与える。」
ムラマツ隊長は、ピグモンの勇敢な行為に敬意を払い、彼に特別隊員の称号を与える。
アラシ「黙祷――――――ッ!!」
科学特捜隊は、ピグモンの死を悲しみながらも黙祷を捧げ、彼を「小さな英雄」として称えるのであった。
余談
- この回と前の回の監督を務めた満田かずほ氏は、「もっと出したかったんだけど、予算の関係もあって。だから、セリフの上だけでも60匹が蘇ったことにしたんですよ。」と述べている。
- イデ隊員の悩みについては、脚本を書いた金城哲夫氏と満田監督たちスタッフ数人が、怪獣ごっこをしている子どもたちの様子を見て、思いついたことだと言う。
- この回は当初、ゴモラとレッドキングを再登場させる予定だったがゴモラは前の回でザラガスに改造したため登場できなくなり、レッドキングに関しては2度に渡る改修でスーツがダメになったため、テレスドンとドラコに変更することになった。
- この回の冒頭に登場するデパートのおもちゃ売り場では、かつて共演したレッドキングの玩具も確認されており、当時の子供が喜びそうな演出がされている。
- 後に公開された「甦れ!ウルトラマン」では、この回とは逆にウルトラマンの存在意義が失われ、終いには必要ないんじゃないかという発言が出ている(但し、この発言をしたのはアラシ隊員である)。
- この回の後、テレスドンのスーツは保管している内に劣化し、「ウルトラファイト」で使われた際は面影を感じられないほどにくたびれてしまった。そのため、登場予定だった「帰ってきたウルトラマン」では弟怪獣のデットンとして登場し、その後も改修されて使い続けられたという。
- この回で再登場したドラコに関しては生前と姿が全く異なる状態だったがそのことについての発言が全くされていない。
- タイトルの小さな英雄は人々から見たピグモンでもあり、ウルトラマンからみたイデ隊員を含む科特隊の面々の事を指していると思われる。
- ウルトラマンのエピソードの中で屈指の人気を誇る話でもあり、今でも話題に上る事もある。
関連タグ
甦れ!ウルトラマン:本作とは真逆のことになっており、映像の一部が流用されている。ちなみにこの作品でもイデ隊員が活躍する。