サプライズニンジャ理論
さぷらいずにんじゃりろん
概要
サプライズニンジャ理論とは、イギリスの女優・脚本家のフィービー・ウォーラー=ブリッジが広めた(発案者かは不明)とされる理論で、TVドラマ『フリーバッグ』のムック本『The Special Edition』に収録されている、女性舞台演出家ヴィッキー・ジョーンズとの会話に登場する。
「あるシーンで突然ニンジャが現れて、全員と戦い始める方が面白くなるようであれば、それは十分によいシーンとは言えない」というもの。
「ニンジャ」というワードに気を取られそうだが、これは「唐突な展開」の例えであり、爆弾や隕石に置き換えても構わない。
要は「何の脈絡もない乱入者によってぶち壊しにされる展開」にそれまでの面白さが敵わないようであれば、「所詮その程度の物語だった」ため作り直した方がいいかもしれない、という脚本家の心構えや一種のノウハウである。
なおこの提唱には「Tough rule, but an effective one(厳しいルールだが効果的なもの)」と続いており、それまでの流れを無視してメチャクチャにするとカタルシスが発生するのは否定しようがない事実で、それは一定の面白さを持ってしまうという事さえ前提の理論でもある。
サイバーパンク小説『ニンジャスレイヤー』がミームと化している日本では「そんなのどんなシーンだってサプライズニンジャが面白いに決まってんだろ!」というツッコミが入れられているのもその証拠である。
そのままニンジャスレイヤー本編じみた展開に突入してもなんら違和感がないのである。
また、フォビドゥン澁川によるギャグマンガ『スナックバス江』の第148話では、作中でサプライズニンジャの法則を解説して「絶対面白くなっちまわねぇか!?」と言わせたその話の中で実践している。
実際に面白くなっているかどうかはその目で確かめてほしいが、無論、どんな作品であろうとこの手法が一番面白くなり、万人の創作や脚本は全て下位互換だと否定する理論では決してない。
上記の通り「一定の面白さを持ってしまう」事を織り込んだ上で「基準が厳しいルールだけどそのくらいの心構えで話を作らないとね」と続いている。
逆説的に「ウケるからって、伏線も何もない唐突な展開ばっか作るなよ?」という戒めの警句でもある。
物語の品質を保つためには世界観を維持する連続性が必要とされ、その上でニンジャの乱入に負けない面白さが求められるのだ。
類似例
浄瑠璃や歌舞伎の世界では、展開や舞台設定に一切関係のない"大人気キャラクター"の源義経が「現れ出たる義経公!」の声と共に唐突に現れ、「さしたる用もなかりせば、これにて御免」とただ引っ込む(地方や伝承によっては加藤清正であったり、しばらく一緒に劇を見たり、客が声をかけて義経を下がらせたりとバリエーションがある)演出が一般的に行われていた。
「さしたる用もなかりせば」と呼ばれるこの演出は、物語に夢中な客からすれば興醒めになりそうなものだが実際はたいへん好評で、単調になりがちなシーンでも観客がドっと湧いてくれるという、たいへん使い勝手の良いネタであった。
特に義経人気が絶大な東北地方では必ず台本に組み込まれており、なかなか義経が出てこなければ客の方から声をかけて呼ぶ始末であったという。
もっともこの演出は、あくまで本筋を邪魔しない挿入であり、いわばアイキャッチ的な物で義経は物語に介入せず、帰った後は普通に本筋が再開される。
ハリウッド版ゴジラの監督の一人であるマイケル・ドハティ氏は、
「どんなものにでもゴジラを混ぜればより良くなる」
という持論を唱えられており、ファンの間ではこれをサプライズゴジラ理論と呼ぶ声もある。
もっともこちらは「『七人の侍』でも『スターウォーズ』でもとにかくゴジラがいれば最高だろ?ゴジラは神だ」という狂信者の信仰なのでニンジャ理論とは極北に位置する。