概要
週刊誌『パトス』が掲載した篠原重工関連の記事を読んだ黒崎の感想に対して発した。
この後「強きをけなし弱きをわらう勝者のアラさがしで庶民の嫉妬心をやわらげ、敗者の弱点をついて大衆にささやかな優越感を与える。これが日本人の快感原則にいちばん合うんだな。」と続く。
これを聞いた部下の黒崎の「卑しい国民だ」に対しては「だから革命家も独裁者も出現しないんだよ。いい国じゃないかまったく。」と答えている。
一見すると「日本人の性質をついた鋭い一言」のようにも見えるが、日本人すべてが週刊誌好きな訳ではないし、ゴシップ嗜好やそれが引き起こす問題はあちこちの国で起き、革命家や独裁者の出現とも関連性や因果関係が適当(というか後者の方は日本でも、特に悪質な部類が猛威を振るっていた時期がある)で…と、要はそれらしく飾った詭弁に過ぎない。
醜悪なデマカセをヘラヘラ笑いながら垂れる内海と、それを疑うことすらしないイエスマンの黒崎が大衆より利口な気になっているという、「子供のような犯罪者」内海一味の薄っぺらさと幼稚さが浮き彫りになるワンシーンでもある。
一方で、内海は記事に隠された悪意に気づき、革命家云々から「この雑誌がただで企業を持ち上げるわけがないんだから。シリーズの一回目で持ち上げだってことは引きずり落とす用意もあるってことだ。」と更に続けており、パトスが(掲載されている記事を隈なく読んで)どういう雑誌なのかもそれを好んで読む購買層の性根もよく理解した上で皮肉っているのが分かる。
日本人に限定していることで詭弁だと露呈しつつ、日本のマスメディアの本質はしっかりついているのがこのセリフの厄介な点であろう。