この人なら残酷に 僕を殺してくれるだろうか
概要
CV:関俊彦
演:萩原聖人
刺青を持つ脱獄囚の一人。白石の「見た目は普通の男」という言葉通り、物腰が柔らかく口調も丁寧。小柄で少し子供っぽい容姿故に若く見えるが40近いオッサン。
しかし実際には囚人達の中でも極めて凶悪かつ最低な殺人鬼であり、日本各地を放浪しながらこれまでにも百人以上を殺害している。殺した相手の背中に「目」(実写版では「眼」)という文字を付けるのが特徴。
普段は穏やかでやや控えめな性格だが標的に対しては凄まじく豹変し、躊躇なく襲い掛かる。
彼が殺人に手を染めるようになった理由は、幼少期の凄惨な体験にある。
ある日、幼い弟が大きなイノシシに食い殺されてしまう光景を目の当たりにし、そのトラウマによって彼の中に極めて倒錯した性癖が生まれた。弟はイノシシに喰われる際に、最後の最後まで必死で戦い抜き、その様は辺見にとって「美しく命を輝かせる」ものに見えた。そんな弟のように必死に抗った末に殺されたいという歪んだ願望である。
それから事あるごとに衝動に任せて人を殺しては、同じように殺される自分を想像して性的興奮を覚えている。
「殺されたい」という願望ゆえか、殺してきた人間は自分より強そうな大人の男ばかりであり、劇中で弱者や女子供を殺めた事は無かった。これも通常の殺人鬼のように「人を殺す事自体に快楽を感じている」わけではないことが大きいのだろう。
網走監獄を脱獄した後はニシン漁の出稼ぎに交じって社会に潜伏しており、その最中で杉元達と出会う。同じ独房だった白石由竹とは比較的仲が良かった(?)様子。
作中での活躍(ネタバレ注意)
脱獄後もわざと手がかりを残すように殺人を続け、それを追ってニシン漁場に来た杉元らと接触。面識のある白石に顔を確認させるつもりが、訳あって別行動となってしまい、杉元は彼が辺見だとは知らずに親切にしてしまう。
そんな杉元から優しくされる一方で、殺人鬼として同じような匂いを感じ取った辺見は、杉元に恋愛にも似た感情を持って執着するようになる。
少しの間語らった辺見は杉元が自分と解り合える人間だと理解し「この人となら存分に戦える。そして自分を殺してくれる」と確信を抱く。
正体がバレると彼に襲いかかるも返り討ちに遭い、重傷を追う。
「僕もあなたのようになりたいです。だから殺してください全力で抗います。」
そう情熱的に熱心に自分と殺し合いを求める辺見に対し。
「・・・・・・わかった。それじゃあとことん一緒に煌めこうか。」
杉元はただ静かな笑み、辺見の望みを叶えるために銃口を向けるのだった。
生い立ちや信ずるモノは違えど、互いに人を殺しながら生き延び、そして生命をきらめかせる為に戦い続ける者同士。二人の間には奇妙な友情にも似た感情が芽生え、それ故に全てを捨てて殺し合った。
第七師団が迫る中2人は全力で戦うも、歴戦の兵士である杉元との地力の差は如何ともしがたく、辺見は杉元の銃剣を胸に受け致命傷を負う。
しかし、辺見には未練も後悔も無かった。自分を理解してくれる強敵(とも)と、命の限り戦った結果なのだから。
そのまま最期の言葉を交わすとそのまま息を引き取った…
かと思いきや2人の間にシャチが乱入し辺見は連れ去られてしまう。予想外の展開に辺見はショックを受ける…かと思いきやイノシシに食い殺された弟と自分を重ね合わせ、この上ない幸福を感じながら死亡した。
その後死体は無事に回収され、彼の勇姿(?)は杉元の胸に深く刻み込まれたのであった。
実写版では辺見の最期は少し異なっており全力で戦う中でも第七師団から追われて杉元は辺見をおんぶして逃げるが、ニシン漁の作業場から少し離れた所で目隠しをされたため降ろし、杉元にハグしようと(或いは殺されに行こうと)辺見は彼に向かって走っていくが、杉元は(気持ち悪すぎたのか)誤まって銃のグリップで殴って海に突き落としてしまい、そのまま海中でシャチに襲われるという流れになっている。(なお原作では杉元は辺見を回収する時に軍帽以外全部脱いで海に飛び込んだが、実写版では軍帽と上着だけ脱いで服を着たまま飛び込んでいる。)
余談
名前の由来とモデルはおそらくアメリカの殺人鬼「ヘンリー・リー・ルーカス」。数百人を殺したと自供した殺人鬼・・・なのだが、彼の犯した殺人事件のうちで確定しているのは3件までで、後の数百件に及ぶ自供は殆ど彼の吐いた嘘であるとされている。ルーカスは虚言癖の持ち主であり、それっぽくでっち上げた話を真に受けてくれる警察にノリノリで話し込んだ結果こうなったらしい。現在でもルーカスが本物の殺人鬼だったのか、それとも希代の嘘つきだったのかは結論がついていない。
この後の回から次々に登場してくるぶっ飛んだ変態達の先駆けとなった人物で、そんなキャラクターを創造する野田サトル先生の事を(自画像に使っているのもあって)辺見先生と呼ぶ人がいるとかいないとか。
辺見本人も、その突き抜けた変態性と経歴の残虐さが一周回って彼独自の魅力になってしまっており、多くのコアなファンを獲得している。
本編で退場した後も回想シーンでちょくちょく登場しており、特に杉元が刺青囚人たちを思い返すシーンでは空の向こうの存在になっているのにもかかわらず杉元の方へ向かっている。更にアニメの公式Twitterは7月15日の「海の日」にちなんで二人の記念アイコンを配布したことも。
また、ゴールデンカムイのワンドロでは、ファンが「成人向けネタは自粛しよう」という空気に包まれる中、野田先生本人が突如こいつを使ったR-18ネタで参戦するというぶっ飛んだことを仕出かしている。まあその描写自体は本編でも描かれてるぐらい軽いものだが………
とりあえずpixiv百科事典の性質上イラストのリンクは貼れないので、ここでは紹介だけに留めておこう。
ちなみに、実写版演者の萩原氏は本作のオファーを「残りの役者人生でこういう役を演じることはもうないかもしれない」という理由で引き受けており、第2話担当の佐藤洋輔監督との話し合いで「原作を読むも読まないも萩原さんのご自由に」と言われたことで敢えて原作未読の状態で脚本から辺見のキャラクターを分析し表現したとのこと。