概要
海外ゲームのローカライズなどを手がけるGameTomoによる自社開発作品。英語版タイトルは『Sumire』。
2021年5月27日にWindows版(Steam)・NintendoSwitch版が発売された。12月7日にmacOS版(App store)が発売。2022年4月7日にはiOS版がリリースされたがすでに配信終了している。
日本語・英語・中国語(簡体字/繁体字)・フランス語に対応。
日本を舞台としており、和の要素を感じさせる作品だが、開発メンバーの約半分が外国人である。Steamで購入できるデジタルアートブックなどで、スタッフの一人が神戸を訪れた際の経験からインスパイアされたことが語られている。
大好きなおばあちゃんを亡くし、度重なる不幸から心を閉ざしてしまった少女スミレが、ある夜不思議な「お花さん」と出会い、おばあちゃんにもう一度だけ会うため、そしてお花さんに「とびっきりの一日」を過ごしてもらうため、冒険を繰り広げるというストーリー。
ゲームの進行状況に応じて時間が進み、早朝から日が暮れるまでの一日を過ごすことになる。
水彩タッチの柔らかで愛らしいグラフィック表現で、レトロかつ牧歌的な世界観が特徴。ただし、後述するようにホラー要素も見られる。
システムなど
基本的には一本道のサイドビュー型で、右端の自宅からスタートし、左端のゴール地点に行くことでゲームクリアとなる。左右と前後に移動することができ、スミレを操作して道中のアイテムなどを調べながら進行していくことになる。また、地面は弧を描く形になっており、地球が回っているような表現となっている。
ゲームが本格的に始まる際、スミレが「とびっきりの一日」にするための目標を決め、概ねこれに従ってイベントをこなすことで進行する。ただし、一部の目標を無視することも可能。
また、いわゆるサブイベントとして登場人物からの「たのまれごと」をクリアするのも一つの達成要素である。ほかにミニゲームが時折発生し、クリア状況に応じて展開が変わることがある。
目標とたのまれごとの進行状況、マップ、所持アイテムはスミレの持つ「ノート」に記されていく。
進行に影響するいくつかのアイテムのほか、通貨として「コイン」があり、イベントを進めるために必要な場合がある。道端に落ちていることもあれば、たのまれごとなどでもらえることもある。
時々スミレの行動についての選択肢が現れ、それによって「カルマ」の値が変化する(カルマの値はその時のお花さんの色でおおよそわかるほか、ある場所にいるキャラクターから聞くことで確認できる)。おおむね倫理的、正直な言動をとるとカルマが高まり、不道徳、不誠実な言動をとるとカルマが低くなる。選択肢とカルマの状態によって、キャラクターのセリフや、たのまれごとの進行、イベントスチルに影響が出る他、エンディングが分岐する。
ストーリーの進行に加えてたのまれごとやミニゲームの勝敗に応じて「思い出」というトロフィーを取得できる。とくに本筋には影響がなく「チャレンジ」としてタイトル画面から確認できる。
セーブデータは一プレイにつき一つ。完全オートセーブのため、エンディングと思い出の回収には周回プレイ必須となっている。
お花さんの力で、マップから任意の場所を選んで移動できるファストトラベル機能がある。ただし、進行状況によっては使えず、またこのファストトラベルをできる限り使わずにクリアするチャレンジもある。
2021年9月16日の大型アップデートで、クリア後に遊べるミニゲームが追加された。
キャラクター
スミレ
主人公(プレイヤーキャラ)。頭に菫の花を思わせる髪飾りをつけている。「スミ」と呼ばれることも多い。
人見知りで、素直だが心配性な性格。少し前に大好きなおばあちゃんを亡くし、今はパパも離れた街で仕事をしているため、ママと二人暮らし。ママの代わりに家事全般を担っている。
基本的には温厚だが、時折鬱屈した、心の闇の深い部分が見られる。また、作中の選択肢によっては強い怒りを爆発させたり、いたずらに生き物の命を奪ったりなどのインモラルな行動をとることもできる。
お花さん
スミレたちのいる世界とは別の世界から「ふじの木」を通じて現れた花の精霊。本来交わることのない世界の壁を超えてきたためか、一日しか生きられず、スミレに「おばあちゃんと会わせてあげる」ことを約束し、代わりに「とびっきりの一日」を体験させてほしいとお願いする。
街の人々など、スミレの身の回りのことはある程度知っている模様。
陽気でイタズラ好きな性格で、どんな時もスミレのことを応援してくれる。
おばあちゃん
故人。亡くなってからは毎晩のようにスミレの夢に出てきて何かを伝えようとしている。スミレからみて母方の祖母にあたる。
花を育てるのが好きで、家の周りにはたくさんの花が植えられている。
スミレにはとても優しかったが、ママとの関係は複雑なものだったことが示唆されている。
ママ
スミレの母。パパが家を出ていってからは精神的に滅入ってしまっているらしく、家にこもって昼まで寝込んでいる。
なぜか直接話すより前にお花さんのことを知っており、エンディングでおばあちゃんから仄めかされる過去など、気になる描写が多い。パパについては、過去の回想やあるエンディングで姿を確認することができる。
チエ
スミレの「元」親友の女の子。現在はトモ、ユーコとつるんでスミレやボーのことをいじめている。家は街の中にあるブティックで、おしゃれに関心が高い。
前は優しい性格であったようだが…
ケンジ
スミレの友達の男の子。スミレが想いを寄せる存在である。
近々村を出て野球の特待生として遠くの学校に転校することが決まっているが、本人の意志というわけではない様子。
ある場所にボーと「秘密基地」を構えている。
ボー
ケンジの友達の男の子。ぽっちゃりした体型。少々オタク気質なところがある。
カードゲームを自作しており、イベントで遊ばせてくれる他、クリア後にはタイトル画面からも遊ぶことができる。
トモ
チエの友達の女の子。ポニーテールにダメージジーンズのボーイッシュな容姿で、荒っぽい話し方が特徴。
スミレのことを「しょぼ子」と呼んでいじめており、ケンジやボーにたいしても暴言を吐いている。
ユーコ
チエの友達の女の子。ツインドリルヘアにワンピースを着ており、おしゃれが大好き。
長いものに巻かれる性格のようで、チエに従う形でスミレを見下している。チエ・トモに比べるといじめは控えめである模様。
カラスの女王
世界の「秩序」を守る存在と名乗り、お花さん(とスミレ)を妨害してくる。スミレを攻撃しようというよりは、世界の秩序を乱してしまうお花さんを警戒している模様である。「気そらしの舞」を踊られると監視の目がゆるくなってしまうらしい。
マップ
- おうち
スミレの家。山奥にある。おかあさんがいる。
- 田んぼ
スミレの近くの田んぼ。ノートによれば「すっごく静か」。カカシがいるが、カラスにいじめられている様子。
- ふじの木
おばあちゃんが好きだった大きな藤の木。田んぼのそばの小川を越えた先にある。物語で特に重要な場所の一つ。ふじの木を過ぎたあとには森が続いており、神社と小さな祠がある。
- 町
山を下った先にある商店街。文具店、ブティック、郵便局、ファミリーレストランがある。
- 運動場
子供たちの遊び場。野球場は不良たちのたまり場になっている。
- タナカ邸
27年前に事件があったといういわく付きの廃屋。禍々しい雰囲気が漂っている。
- 秘密基地
ケンジとボーの秘密基地。入り口は隠されている。
- バス停
温泉と公園に行けるバスが出ている。また、公園の最奥にはスミレにとってはおばあちゃんとの最期の思い出の場所である「丘」があり、ここにたどり着くのがゲームの最終目標となる。
ホラー要素について
公式の紹介文やSwitch版のスクリーンショットでは明確に示されていないものの、ホラー要素がある。
たとえば、陰惨な事件があったことをうかがわせるステージやそれを語るテキスト、大量の目、また目を思わせる花々、キャラクターの体にキノコや花が寄生するなどのショッキング、グロテスクな表現が度々あり、またゲーム内で事前の警告などはない。
それ以外にも精神的に不穏な描写がいくつかあり「死」を示唆するテキストは少なくない。
ただし直接的なビックリ、ジャンプスケア的な表現や、出血・欠損といった描写ははなく、またホラーパートはストーリーを進めるうえで必ず通る部分ではあるものの、あくまでホラー「要素」であってゲームの本質がホラーゲームというわけではない。
Steam版のスクリーンショットやトレーラームービーなどでは、ホラー演出の部分も少しだけではあるものの映っているため、苦手な人は確認してからプレイするのを推奨する。
関連動画
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