夜の暗い海辺に漂うグリーンの煙…
突如、黒い髭の船長の前に現れた海底の楽園!
それは、パラダイ星人の恩返しだった…
だが地上では、村人への怒りを込めてキングパラダイの報復が続く!
その時、MACは、ゲンは!?
みんなで見よう「ウルトラマンレオ」!!
放送日
1974年10月18日
登場怪獣
星獣キングパラダイ
海棲人パラダイ星人
STORY
MAC本部では、レーダーが謎の反応を捉えていた。反応はseaポイント6724で途絶えたことから、ダンは正体が潜水艇であり、海底へ潜ったものと推測。至急マッキー3号でパトロール中のゲンへ連絡を取り、seaポイント6724付近の海上捜索を要請した。
(場面転換)
時を同じくして、とある漁村の海岸にてトオルとカオルの兄妹が釣りをしていたが、トオルは折角魚がかかったにも関わらず逃げられてしまう。すると、そこへ笑い声と共に立派な髭を蓄え、パイプを咥えた男性が現れた。
彼は餌の付け方が悪いことを指摘し、代わりに餌をつけてくれた。二人が東京から来たことを見抜いたこの男性は、港に停泊していた漁船の船長であり、赤道を越えて遠くまで魚獲りに行ってきたのだという。
トオル達が感心していると、近くで騒ぎ声が。
見れば、村の漁師や子供達が群がっており、そこには緑色の長髪をした少年が棒を持った漁師や子供達にどつき回されながら助けを求めていた。
漁師A「人間じゃないぞコイツは!?」
漁師B「魚が獲れなくなったのはこの野郎のせいだい!」
漁師A「バケモンだ!殺しちまえ、殺しちまえ、殺しちまえ!!」
子供「可哀想だよ!バケモノじゃないよ、星人かも知れないよ?」
漁師B「そんなら尚のこと、殺せ!」
船長「やめろ!乱暴はよせ!可哀想じゃないか!!」
慌てて止めに入ったのは、船長と梅田兄妹。船長は星人を抱き上げ、漁師達から庇う。
そして船長が代わりにと取り出したのは、お守りの珍しいバロック真珠。それも2年前にインド洋でハリケーンにあった時も助かったとお墨付きの一品だった。
漁師らは「一思いに殺しちまわないと碌なことがないぞ」と渋りつつも諦めた。一方のトオルは、星人の子供を見たとゲンに通報。それを受けてゲンが間もなく村に駆けつけた。
トオルがゲンに事情を説明している間に、船長は星人を海辺近くの林へ連れて行った。何処から来たのかと尋ねると、星人は無言で海を指差す。彼が海から来た星人の子であることを知った船長は、誰かに見つかれば今度こそ殺されてしまうと弱る。そこへ、船長と星人を探しにゲンとトオル、カオルの3人がやって来た。船長は星人と共に隠れ、ゲン達が遠ざかるのを確認してから星人を一人で逃すことに。
「人間は怖い」と教えられた星人は、名残惜しそうに何度も振り返って一礼していたが、船長に急かされて走り去って行った。
星人はやがて波打ち際に辿り着き、両手を掲げて光を発する。
ナレーション「浜辺へ流れ着いて漁師達に殺されそうになったパラダイ星人の少年は、海底に潜むパラダイ星人の潜水艇に向かって救援信号を発した!」
海底には、大きな亀のような潜水艇が。信号を受け取った潜水艇は、ゆっくりと浮上を始める。
その夜、浜辺で煙草をふかしていた船長の元へ、あの星人の呼ぶ声が。
パラダイ星人「船長さーん!船長さん、昼間はありがとう!」
船長「まだ逃げなかったのか、捕まるぞ?」
パラダイ星人「大丈夫、船長さん!命を助けてくれたお礼に、いい所へ案内します!2時間後に、この場に来て下さい!」
船長「おい、誰か来た!逃げろ」
パラダイ星人「きっと来て下さいね!」
船長「あぁ…!」
船長が星人を逃した直後、そこへやって来たのはゲンとトオルだった。
トオル「船長さん!」
船長「やあ」
ゲン「探しましたよ!」
船長「あぁ…」
トオル「MACのおおとりさん!」
船長「あぁ、MACの事ならよく知ってるよ。あっそうか、俺が逃した星人のこと?」
ゲン「えぇ…」
船長「あれは悪い星人じゃないよ、俺に恩返しをしてくれるそうだ」
ゲン「恩返し?」
船長「俺を招待してくれるんだ、じゃ」
ゲン「あっ、待ってください!危険ですよそれは!」
船長「危険?」
ゲン「えぇ」
船長「人間の方がよっぽど危険だと思うがね、あんな可愛い星人の子を殺そうとしたんだからね」
ゲン「船長…!」
トオル「船長さん!」
船長「俺はもう船長じゃないんだ、去年は不漁でね…船から降りろと言われてるんだよ」
トオル「本当!?」
船長「魚が獲れなかったんだ…いや、獲らなかったのかな…他所の国の権利を侵してまで…しかし酷いよな、俺だって長い間あの船に乗って、インド洋からアフリカの方まで命を懸けてね…おおとりさんと言ったね?」
ゲン「はい」
船長「俺はあの星人の招提を受けるつもりだ」
ゲン「帰れなくなるかも知れませんよ?」
船長「ハハハ、冗談、冗談!」
ゲン「星人は?」
船長「知らない、昼間逃してやった…じゃ、お休み…しかし、俺がこの辺の漁師だったら、助けてやったかなぁ」
すると、突如悲鳴が。そこへやってきたのは、昼間の漁師。なんと彼が言うには、昼間出会った星人よりも大きな星人が追いかけてきたのだと言う。船長は寝ぼけていると相手にしなかったが、漁師は本当だと主張。親の星人が怒って仕返しに来たのだと言い、すっかり怯えてしまっていた。
ゲンは了承し、トオルを船長と一緒にホテルへ返す。別れる時、近くの草むらで緑色の煙と共に二人の星人が覗いていたことに、気付く者はなかった。海中の潜水艇も浮上を開始する…
(場面転換)
それから約束の2時間後。船長が岩場でパイプをふかしていると、あの星人の子供が呼ぶ声が。見れば、海上にパラダイ星人の潜水艇が浮上してきたのである!
船長が驚いていると、辺りは緑色の煙に包まれ、船長は姿を消した。そして潜水艇は、再び深い海底へ潜りゆく。
船長が連れられてきたのは、窓の外で数々の魚が泳ぎ回る不思議な部屋。壁にかけられたおたふくの能面の目が光り、船長に話しかける。パラダイ星人の女王だ。
女王「ようこそ、船長さん!」
船長「ここは…ここはどこだ?」
女王「我々の潜水艇の、貴賓室」
船長「貴賓室?」
すると、どこからともなく立派な椅子が降りてきた。
女王「どうぞ…」
船長「…どうも」
船長が座ると、椅子はひとりでに浮かび上がる。船長は笑顔でご満悦。
船長「こりゃあ楽だ、雲の上に乗ってるみたいだ!フフフハハ…」
すると今度は、クロスのかけられたテーブルが流れてくる。そこには、あのバロック真珠が置かれていた。
船長「あっ、俺のお守り…」
(場面転換)
その頃、すでに陸上は朝を迎えていた。昨日星人を殺そうとした漁師2人が、林の中で話していた。
どうやら真珠がなくなってしまったようだったが、独り占めする気だと思い込んだ片方と揉みくちゃの喧嘩になってしまう。その時、林の向こうから大人の星人2人が襲ってきた!
2人が大慌てで逃げた先には、ゲン達3人が。ゲンが星人の元へ銃を構えて向かうと、途端に星人達は緑色の煙と共に消えてしまった。立ち尽くすゲンにトオルらが駆け寄る。
カオル「きっと昨日の子供の星人の、お父さんと叔父さんよ!」
トオル「うん!」
ひとまず脅威は去ったので、ゲンは漁師達を安心させようと近寄る。
漁師A「助けてくれ…!」
ゲン「もう大丈夫だ」
漁師B「昨夜、俺を追っかけて来た奴らだよ!」
漁師A「俺達を殺そうとしやがったぁ」
漁師B「あんた、MACの隊員だろ?俺達を助けてくれ!」
ゲン「心配するな!」
トオル「おじさん達、星人の子供を殺そうとしただろ?だから仕返しに来たんだよ、きっと!」
カオル「そうよ!」
漁師B「助けてくれよ、なぁ!」
漁師A「夢じゃなかったんだな…」
ゲン「どうしたんだ?」
漁師A「昨夜、夜釣りの帰りに大きな亀のようなものが浮かび上がるのを見たんだ!」
ゲン「何!?」
(Aパート終了)
余談
本話は水中セットが組まれたため、本話よりopにマックシャークが登場する。
本話はシリーズでたまに見られる「本来無害な宇宙人を過度に恐れる地球人の過ちが大騒動に発展する」物語の一つだが、本話におけるパラダイ星人は明らかに宇宙人側にも責任があるため、一概にどちらが悪いとは言えない話になっている。
- 地上に身を守る術を持たない子供を一人で上陸させている。船長が止めなければ殺されていた。
- 地球人が一方的に攻撃してきたことは事実でも、自分達が勝手に他人の土地に上がり込んだ侵入者であることを自覚していない。
- 地球人に対して自分達の立場を一切説明していない。
- 子供を囮に大人が襲うという卑怯な真似を平然と行う。
- 事前の警告があったとは言え、船長は土産のパイプを吸ったらお爺さんになってしまった。結果的に見れば恩を仇で返したも同然である。
しかし村人達も大人の報復を逆恨みし、再び子供を殺そうとしている。あのとき襲うのではなく非礼を詫びたのなら、パラダイ星人もこれ以上の報復はしなかった筈である。
村人側と星人側、お互い一切歩み寄る姿勢に出ずひたすら暴力に訴えることしかしなかった為に今回の事件が起きてしまったのである。
村人側はゲンに詰め寄られてようやく反省したものの、星人側はその後どうなったのか分からずじまいであるため若干の後味の悪さが残る。
ウルトラシリーズで浦島太郎がモチーフの物語が展開されたのは『ウルトラQ』の6話に続いて2作目。後に本作『レオ』とは別の歴史を辿ったダンことセブンが平成ウルトラセブンにて同じく浦島太郎伝説と闘った。
海底都市(劇中では「潜水艇」とも「宇宙船」とも)内の貴賓室は『スーパーロボットマッハバロン』の「KSS(キス)海底基地」のパーマネントセットの流用。「制作会社が違うのに何故?」と思うかも知れないが、両作品は当時同じ「東宝ビルド」を撮影スタジオとして使用しており、(日本現代企画が円谷プロOBの会社の側面を持つ事も有り)セットや小道具類の融通を互いに行っていた様だ。