スーパーロボットマッハバロン
まっはこれだーぶっぱなせ
前作の『スーパーロボット レッドバロン』が、好評のままオイルショックによるスポンサー撤退の憂き目に遭い打ち切りになった為、改めて特撮ロボット番組として新たに企画されたのが本作である。本作は日本現代企画の単独制作。
『レッドバロン』とのストーリー上の繋がりは無いが、『特撮ロボット戦記バロンシリーズ』と銘打って制作された。
グラムロック全開のオープニングテーマは当時からすればあまりに衝撃的で、21世紀の現在でさえ色褪せないインパクトを持つ。近年では動画サイトなどでこの曲の方から本作を知った層も増えてきている。
視聴率は前作を多少は下回ったものの安定した人気を誇り、商業的には成功した。
だが、放送局である日本テレビの番組編成の都合で一転して冷遇され、全40話の予定が26話にまで縮小され、またしても打ち切りに。結局物語が完結していないまま終了してしまった。
※本項では、作品自体を解説する。
劇中に登場する主役ロボットとしての「マッハバロン」に関しては、当該記事を参照。
ドイツの科学者ゲオルク・ララーシュタイン教授の元でロボット工学を勉強していた嵐田陽一郎博士は、ララーシュタインが世界征服を企んでいると知り、設計していた完成直前の巨大ロボマッハバロンを侵略の道具にされないように爆破。設計図を持って妻子と共に日本に亡命する。
しかし、ララーシュタインのロボット・ハイルV1が博士の乗っていた船を襲撃。嵐田夫妻は息子の陽に設計図を託し、命を落とした。
陽はその後、大企業の経営者である祖父の竜之介に引き取られた。竜之介はララーシュタインの侵略に対抗する為、陽一郎の遺した設計図を基にしてマッハバロンの2号機を建造。私財を投げ打って対ロボット帝国組織・国際科学救助隊KSSを設立。成長した陽にパイロットとしての教育を施した。
しかし、その事を知っていたララーシュタインは、日本にロボット軍団を進攻させるのだった。
KSSの面々と協力者たち
嵐田陽(演:下塚誠)
本編の主人公。
マッハバロンの開発者である嵐田陽一郎博士の一人息子。陽一郎博士がララーシュタインの襲撃により死去した為、祖父である嵐田竜之助により養育される。
マッハバロンのパイロットとなるべく祖父から特訓の毎日を送るが、父母を殺したロボット帝国への復讐心に苛まれており、それと同時にマッハバロンのパイロットである事への歪んだ優越感を持った屈折した性格を持っている。世間知らずで未熟な面が目立ち、当初は他のKSSメンバーの足を引っ張るが、第7話ラストからメンバーたちとのわだかまりが解け、戦いを通じて少しずつ成長していく。
小杉愛とは微妙な関係。
第14話の描写から、KSS海底基地の居住棟の一室に住み込んでいる事が判明。
小杉愛(演:木下ユリ)
KSSの紅一点。戦闘機・KSSバードのパイロットを務める他、キス本部の通信手や村野博士の助手も務めるなど、意外と多芸。小杉健一は弟。
男尊女卑な感覚を持つ陽とは喧嘩が多いが、犬猿の中でありながらデートするシーンもあり、微妙な関係。
かつて水難事故で溺れた友人を見殺しにしてしまった過去があり、人命救助に対して強迫観念めいた使命感に苛まれている。それが故に、自己中心的な面が目立つ陽を認める事が出来ないでいる。
ちなみに巨乳。最終回において、悲劇的な結末を迎える。
岩井明(演:力石考)
通称ガンさん。
KSSバードパイロットチームのリーダーで、KSSメンバーのまとめ役。
自分勝手で世間知らずな陽に対して反感を抱く者が多いKSSの中で、数少ない理解者の一人。陽のマッハバロンのパイロットとしての役割の重要性を理解していると同時に、陽の未熟さもわかっており、陽を導く兄貴分のような存在。
普段はメガネをしているが、戦闘では外している。大柄な体格であり、メンバーの中ではよく目立つ。
携行武器はコルトパイソン。
白坂譲司(演:加藤寿)
通称ジョージ。
KSSバードパイロットチームのメンバー。
陽に対してはライバル的な立ち位置にあり、自分勝手で未熟な陽に対して最も批判的。
しかし、マッハバロンパイロットとしての技量は認めており、作戦行動中の連携行動はしっかりしている。
初期の話において、愛とデートしているシーンが有る。
携行武器はコルトパイソン。
小杉健一(演:内海敏彦)
小杉愛の弟で小学生。KSSの部外者だが、愛との関連から特別にKSS本部への出入りが認められている。しかし、ロボット帝国にその事を逆手に取られ、拉致された事もある。
※第4話と11話では擬装アンドロイド(後述の通り、劇中ではサイボーグとされる)も登場。
村野博士(演:団次郎)
KSSの実質的な指導者。KSSの設立者であり、オーナーである嵐田竜之助の死去後、KSSを総括する立場になる。
陽の父である嵐田陽一郎博士の親友であり、マッハバロンの構成素材である超合金バロニウムを唯一生成加工できる人物である。
常にスーツ姿のダンディーな学者肌の人物だが、組織運営にも長けており、若いKSSメンバーを強く指導していく事となる。
未熟な陽を強く叱責する事が多々あるが、それは父母を失い祖父まで失った陽に対して、肉親的な感覚がある為。陽も村野博士を父親のように思っているフシがある。
最終話ではマッハバロン救出作戦の代償で深手を負いながらも戦列に復帰しようとした愛に「足手まといだ!」と言い放ったのが反って彼女を単独行動を走らせるきっかけとなり、悲劇的な結末へと至らしめることになる。
愛煙家であり、マルボロを愛飲している。
携行武器はブローニング。
花倉刑事(演:深江章喜)
KSSに常駐する警視庁の刑事だが、所属部署は不明。正直、警察官としての技量は微妙。
別名・発明刑事と呼ばれており、本職そっちのけで発明に勤しんでいる節がある。彼の発明品は大抵は役に立たないが、まれにピンチを打開する切り札になる事がある。
自作の発明品が満載された専用の原付バイクで常に移動している。
嵐田陽一郎博士
マッハバロンの開発者にして、嵐田陽の父親。
かつてララーシュタインと共同でマッハバロンの開発を行っていたが、ララーシュタインの世界制覇への野望を察知し、その危険性を感じて、共同開発中のマッハバロン1号機を爆破し、ララーシュタインの元を去る。
その後、日本への帰国途中、太平洋上にてロボット帝国の侵略ロボットに襲われ、乗っていた旅客船もろとも抹殺される。嵐田陽はその際の唯一の生存者である。
嵐田竜之助
嵐田陽の祖父。大企業のオーナーであり、大富豪。両親を亡くした陽を養育した。
その一方で、陽をマッハバロンのパイロットとするべくスパルタ教育を施しており、その為陽との関係はこじれかかっていた。
マッハバロン2号機の存在を察知したロボット帝国に襲撃され、その秘密を守ろうとして殺害される。
ロボット帝国
ゲオルク・ララーシュタインに率いられたロボット・アンドロイド集団。
作中ではサイボーグと表記されているが、描写はどう見てもアンドロイド(ややこしい事に、「本来の意味での」サイボーグも登場する回も有る)
太平洋上の何処かに本部を持ち、侵略の尖兵として、巨大な侵略ロボットを多数保有している。
最終話に於いて、巨大な移動要塞「移動秘密基地」が本拠地である事が判明する。
ゲオルク・ララーシュタイン(演:伊海田弘)
ロボット帝国の総統。
タンツ陸軍参謀(演:麿のぼる)
ララーシュタインの息子の一人で陸軍参謀。
スーカン海軍参謀(演:所雅樹)
ララーシュタインの息子の一人で海軍参謀。
ゲラー空軍参謀(演:桜木栄一 木村章平(第9話から))
ララーシュタインの息子の一人で空軍参謀。
演者の交替に関しては下記参照。
※ロボット帝国および構成員の詳細は、該当記事を参照
ナレーター:岸田森
ララーシュタインのロボット帝国に対抗する組織で、嵐田竜之助が私財を投じて設立した。
正式名称は「Kokusai Scientific Salvage(国際科学救助隊)」であり、劇中では「キス」と呼ばれる。「キスの浦」のマリンパークビルに本部を設ける国際救助隊として運営されていたが、ハイルV2号の攻撃によりビルごと破壊され、海底基地に本部機能を移した。
KSS海底基地は「キスの浦」の海底、深度300メートル前後に設置されている。より正確には「キス岬の真下」。ここは超合金バロニウムの原料となるバロニウム鉱石の鉱脈の上に有り、採掘基地も兼ねている。基地に攻撃を受けた際には、ディフェンスバリアーを張って基地全体を守る事ができる。
前作のSSIとは打って変わり、基地内のセットはポップなレトロフューチャー風の物となり、隊員の制服も緑とオレンジの派手な色遣いとなった。
隊員は復唱の際に「キッサー!」(KSSSAR)という言葉で返事を返す。
小杉愛を始めとするKSS関係者の大半は、海底基地の外部から通勤している。
陽が住む居住区は海底基地(のミニチュアセット内部)に有る、「ルイジ・コラーニ」の未来住宅を彷彿とさせる、「円盤型住居を数層間隔を置いて重ねた構造の建物」内部に存在する。
戦力
- キスバード
KSSの戦闘機。1人乗りで1~3号にそれぞれ、岩井明、白坂譲司、小杉愛が登場。
武器はバードミサイル。
26話では、愛の3号機の翼から刃を出して目標を切断する「ウイングカッター」という装備を披露する。設定では、機首が分離する予定だった。
- キスマリン
KSSの潜水艦。岩井と譲司、愛の三人が搭乗するが、譲司が一人で操縦したこともあった。
迎撃水中ミサイルを装備。上部のコックピットブロックは分離し、単独航行が可能。
2話、8話に登場。4話にもモニター越しに登場している。
- 専用車両
マッハトリガー以外に、KSS職員はいくつかの車両を所有している。
最も多く登場したのが「ジムニー」。キスバードに搭載されたこともある。ナンバープレートは「KSS-03」。
他に、ナンバープレートが「KSS-02」のブルーバードSSSや、オースチンFX4なども登場した。
- サテライトキス
16話登場。探知衛星で、ロケットにより打ち上げられる。
ロボット帝国により、その打ち上げを妨害された。
話数 | サブタイトル | 登場ロボット |
---|---|---|
1 | マッハバロン暁に出撃す | ハイルV1号、ハイルV2号、ワルターU0、メッサーM4 |
2 | 空の牙 海の罠 | ワルターU0、メッサーM4、ティーゲルGT |
3 | マッハバロン強奪計画 | ティーゲルGT、ユンカーズF2 |
4 | キス海底基地爆破指令 | ユンカーズF2、ハインケルSS |
5 | その一瞬に賭けろ! | ハインケルSS、レオパルトX1 |
6 | 東京爆破5時間前 | レオパルトX1、※ホッケウラーJ9 |
7 | 決断の10秒間!! | ホッケウラーJ9、デスマルクWO |
8 | 恐るべき自爆の軍団 | デスマルクWO、グラスルガーQ |
9 | ガラスのスーパーロボット | グラスルガーQ、スプリンゲルX |
10 | まぼろしのジャイアントバロン | スプリンゲルX、ジャイアントバロン、シュミットG |
11 | 裏切りの戦場ヶ原 | シュミットG、シュミットGⅡ |
12 | 無敵の超合金ロボット | シュミットGⅡ |
13 | 恐るべきUFOの正体 | ※ヤクートパンテル |
14 | 友にささげるマッハコレダー | スパングルKG |
15 | 戦慄!スナイパーQ | スナイパーQ |
16 | 密告者の海 | モーゼルジャガー |
17 | 絶体絶命!マッチ箱作戦 | プレッシャーケルン |
18 | 発明刑事の偉大なる発明 | エレファンターFF |
19 | 地獄から来た天使 | アンジェラスXY |
20 | トロイ作戦1対1 | シーヘルツェンU |
21 | 南南西へ進路をとれ | ワルサーキル、ワルサーキルα号 |
22 | 追跡!フェニックスの謎 | ワルサーキルα号 |
23 | ララー怒りの地獄作戦 | メガトンゲー |
24 | 水爆特急900キロ | メガトンゲー |
25 | 切り札はパイルX | ゼッターキングⅠ世、ゼッターキングⅡ世 |
26 | マッハバロンの超秘密 | ゼッターキングⅡ世 |
※「ホッケウラーJ9」と「ヤクートパンテル」は劇中では、それぞれ「ホッケーウラーJ9」「ヤクートパンテルUFO(ユーフォー)」と発音されている。
シュミットGの「G」の発音は「ゲー」、一方でシュミットGⅡの「Ⅱ」は「ツヴァイ」ではなく「ツー」である。他のロボットのアルファベットと数字は、普通に英語読みである。
- 次回予告
本作は第1~10話までラストのロボット帝国側の反省会と、そこでの次のロボットの紹介が次回予告を兼ねていた。
そのため、通常の次回予告は第12話巻末の「第13話予告」からエンディング前に入る形となる。
予告編のフィルムは、最初のDVDーBOXまでの時点では「第19話予告」以降の分しか発見できていなかったらしい(一部のDVDレビューに有る「そもそも予告編は無い」との記述は間違い)。
ナレーターの岸田森氏はオープニングクレジットでは全話登板しているが、実際には収録に参加していない回も有る。先述の次回予告の件も含めこちらを参照の事。
ゲラー役・桜木栄一氏の降板
- 降板理由は不明。しかし、二本撮りの7・8話での出演シーンが全てアフレコになっている為、撮影終了後、アフレコ作業に入る前に今後の参加が不可能な事態に陥った物と思われる(この当時は実写ドラマ等も、台詞入れはアフレコが基本だった)。
- ゲラー役の代役を勤める事になった木村章平氏は、第9話までの「戦闘員:その1」を演じていた人物。第9話の「RCS39(アールシーエススリーナイン※但し、正確な表記は不明)」が最後の戦闘員役である。
- 7・8話のアフレコの声は、声質から古川登志夫氏と思われるが詳細不明。
海外版
1975年には香港の映画会社・長弓電影公司が本作を基に『鉄超人』というオリジナル劇場作品を制作しており、テレビ版では『百変龍』と名を変えて放送されていた。
同人サークル「夜盗組」の調査によると、
:日本現代企画との共同制作。
:ガンさん、ジョージ、健一の三人はオリジナルキャスト(他の登場人物は香港や台湾の俳優)。
:セットも日本で実際に撮影に使われた物を使用。
:ロボット帝国の「移動秘密基地」がマッハバロンの攻撃で破壊され、ララーシュタインとの戦いに決着が付けられている。
……といった事実が判明している。
移動秘密基地の破壊シーンが、この海外版の為に新撮したのか、日本版の最終話で撮影されたもののカットされたのかは不明。
後にこの『鉄超人』は、ヨーロッパへと輸出。どういうわけかスペインでは、『マジンガーZ』のタイトルで放送されている。
セットの流用
本作と「ウルトラマンレオ」は、何度か互いのセットを流用し合う制作体制を採っていたと思われるフシが有る(どちらかと言えば、円谷プロ側の財政事情に因る所が大きい様だが)。
※パラダイ星人の記事も参照。
本作がレオのセットを流用したのは、
:第9話の中尾博士の「電送移動研究所」内部がMACステーション作戦室。
:第13話のヤクートパンテルUFOの内部が先述の作戦室上部の通路のセット。
第13話の撮影時期は、レオのババルウ星人のエピソード、並びに、あのシルバーブルーメのエピソードの撮影時期と重なっている。
侵略ロボット余談
本作の侵略ロボットは、着ぐるみ完成後、まず版権管理や商品利用(ミニカード等やミニソフビの造型資料)の撮影会が行われ、その後特撮シーンの撮影に回された様子。
この為か、ワルターU0やスパングルKGの様に「映像では全身が判らない(ワルターU0)」や「完品状態で登場していない(スパングルKG)」と言った事態が発生している。
若狭新一氏によると侵略ロボットの着ぐるみは「エバーソフト」と呼ばれる素材でエキスプロにより作製されていたらしい。
幻のアニメ版
1994年に前作『スーパーロボットレッドバロン』が大幅に設定を改変した『レッドバロン』としてアニメ化された際、今作もアニメ化が企画されていたらしく、当時のアニメディア等のアニメ誌でも文字情報のみで告知がされていた模様。しかしその後の情報が掲載、発信されることはなく企画は立ち消えになったらしい。