プロフィール
概要
志村菜奈の実子であり、志村転弧(死柄木弔)の父親。劇中では既に故人。
志村転弧が「死柄木弔」へと変貌する直接の原因を作った人物。
死柄木弔が装着する「家族の手」の中では、顔面を隠すように覆う左手が彼のものである。
作中では主に死柄木弔の幼い頃の記憶の中に登場しており、幼少期のトラウマによって人格形成に失敗した歪な大人としての一面が強調されている。
死柄木弔にとっては自らを縛りつける不条理な社会の象徴であり、父の存在を心に感じたとき、死柄木はひと際強い破壊衝動を表出させる。
人物
物心がつく前に父を亡くし、母である菜奈が彼を里子に出したことで、幼くして天涯孤独の身となる。
母との離別は、彼女がオール・フォー・ワンの魔の手から最愛の息子を逃がすための苦渋の決断だったが、この経験は彼の心の中に生涯癒えることのない深い傷跡を残すこととなった。
成人した後は若くして実業家として富を築き上げ、妻と2人の子供、1匹の愛犬に加え、妻の両親を自らの家に招いて暮らしていた。
自身の過去の経験からヒーローとは「他人の幸せのために家族を不幸にする存在」であるという考えを持っており、家の中ではヒーローの話をすることを禁止するというルールを設けていた。
こうした考え方は、「最愛の母が見ず知らずの他人を守るために命を落とした」というある種の認知の歪みによって生じたものであったと考えられる。
ヒーローに憧れる転弧にとりわけ厳しく接していたことも、「"無個性"ではヒーローになれない」という論理的な理由以前に、彼の心の奥底に根付いたヒーローへの嫌悪感、あるいは家族がヒーローになることへの恐怖心に由来するものだったと言える。
一家の稼ぎ頭として、経済的に家族を不自由させることは無かった反面、家庭内では子供達と心理的に深く繋がることを避けており、華や転弧の目には、彼の存在は神経質で近寄りがたい厳格な父として映っていた。
母である志村菜奈の写真を子供達に見られたことを知った際には、心の中のトラウマを不用意に刺激されたことで激しく狼狽し、衝動の赴くままに転弧に対して暴力を振るってしまう。
このとき「ヒーローを拒絶することで家族を守りたい」という彼の想いは、「ヒーローを拒絶するために家族を傷つける」という真逆の結果を生み出すこととなり、それが皮肉にも「息子の幸せのために息子と離別した」母の決断と同じものだったことに気づかされることとなる。
その後は母との思い出を振り返りながら自らの心を見つめ直し、再び彼は息子と向き合うことを決意したものの、時を同じくして、ストレスの限界を迎えた転弧が"個性"『崩壊』を発現させ、彼の築き上げた幸せは音を立てて崩れていく。
転弧の"個性"を目の当たりにした際、母である直がとっさに転弧を抱きかかえようとしたのに対して、弧太郎は高枝鋏で転弧を殴りつけるという対極的な行動を取っている。
彼は自身を傷つけたことへの怒りによって、転弧から明確な殺意を向けられることとなり、最期には実の息子の手によって非業の死を遂げた。
その後、身寄りを失った転弧はオール・フォー・ワンの元へと引き取られ、悪の道へと誘われてゆくこととなる。
転弧の思い出の中の父は、家族に対して笑顔を見せたり、愛情を表現するようなことはほとんど無かったが、単行本幕間の人物紹介で掲載されたプロフィールの中には、彼の「好きなもの」として彼の妻と子供達、義理の両親、そして志村菜奈の名が綴られていた。
家族に対する深い愛情を抱きながらも、それを表現する術を持たない、不自由な人間性が垣間見える。
関連タグ
出水洸汰:同じくヒーローだった家族を失ったことにより、ヒーローの存在そのものを否定するようになった境遇を持つ。ただし、自身を命懸けで守ってくれたヒーローとの出会いを機に、考えを改めている。
※ここから先はヒロアカ本誌No.417『志村』以降についてのネタバレに触れます。
OFA二代目継承者・駆藤立案の『OFA歴代継承者の意識(="個性")を強制譲渡して死柄木弔の深層意識に侵入し、志村転弧の人格を救う』作戦の下、転弧の記憶、つまり、あの惨劇が起こった志村家の寸前まで辿り着いた九代目継承者・緑谷出久と、ひとり譲渡を拒否され出久の側で残留していた七代目継承者・志村菜奈。
菜奈は何故、拒否されたのか?それは全面戦争時に死柄木が言った「安心しろよ、おばあちゃん。あんたもしっかり憎んでる」という台詞を思い出した上、過去にAFOの魔の手から守る為だったとはいえ、
「行かないでえぇ お母さああん」
最愛の息子を置き去りにしてしまった事、自身の善意が裏目に出てしまった事から弧太朗を傷付け、それが孫である転弧にも伝播してしまっていた事を悟った。
そして、出久が歩みを進めて見たものは弧太朗が転弧に虐待をしている姿だった。出久は急いで駆け寄ろうとするものの、透明の壁により接近出来ない。その傍らで弧太朗が転弧に
「あれは、おばあちゃんじゃない。子どもを捨てた鬼畜だ」
それを聞いた菜奈は改めて涙ながらに自身の過ちと置いてかれた弧太朗がどう思っていたのか?を知る事となる。
『そうか…持ちたくて持ってたんじゃない…』
「いいか、ヒーローというのはな…
他人をたすける為に 家族を傷つけるんだ」
『ずっと…ずっと捨てられなかったんだ…』
『私がつけた傷が死柄木にまで広がったんだ』
『AFOに勝って、お迎えに行けてたら──…』
『ごめんね弧太朗。』
『お母さん 弱くって…』
転弧が崩壊の個性に覚醒する原因となった弧太朗の平手打ちが振り上げられようとした時、透明の壁を壊して、母は息子を抱き留めたのだった。
「ごめんね、お迎えに行けなくて」
そして、菜奈は転弧にも謝罪の言葉を伝える。
「ごめんね、おばあちゃんのせいで──…」
死柄木の憎しみを浄化、内に秘めた転弧を救出し、永きに渡る憎しみの連鎖の全てが終わった。かに思われたが……
「僕もう やだよ モンちゃん」
転弧がモンちゃんを抱き締める時に
『ピキッ』
という、まるで壊れるような音が…………
※ここから先はヒロアカ本誌No.418『小さな心』以降についてのネタバレに触れます。
事実通りにモンちゃんが崩壊の個性で体がボロボロと崩れ落ち、姉である華ちゃんに触れようとした転弧。しかし、そこに出久が割って入り、崩壊によって掌から崩れ落ちかけるも己の精神力で抗い、その全てを壊してしまう転弧の手に手を差し伸べた。
「手を掴んでもらって 安心したから だから……来たっ」
出久と転弧はお互いに体が崩れ落ち、触れ合い混ざり合う事で転弧の原点(オリジン)を垣間見た出久。
みっくん ともちゃん…
「じゃあ、転ちゃんがオールマイトね?」
転弧は幼い頃に友達と遊んだ『ヒーローごっこ』を思い出しながら「ヴィラン役として、いじめられていた友達を救ってあげたい」という、その時に抱いていた自分自身のオリジンを思い出し、「ヴィランになってしまった人たちのヒーローになる」という、悪の道ではあるものの、そこには確かな思いやりや優しさを持ち合わせた信念を打ち明けた。それを聞いた瞬間。それは決して転弧が見るハズのない光景だった。
なんだ こいつは
その記憶は私服でバーを嗜む笑顔の弧太朗が誰かと喋っている様子。弧太朗は甲賀建設という建設業者に関わっており、その関係者に相談していたようだ。その人物の正体は……………