概要
『未来のイヴ』(みらいのイヴ、原題:L'Ève future) とは、1886年に発表されたフランスの作家ヴィリエ・ド・リラダンのSF小説。
人造人間に「アンドロイド」という呼称を最初に用いたことで知られ、ギリシア神話のピグマリオンをモチーフにしている。
物語は、美しくも卑俗な魂を持つ歌姫アリシヤに絶望し、「女性への嫌悪」に囚われた青年貴族エワルドと、そんな彼の話を聴きながら、「理想の女性」な人造人間ハダリーを作っていく発明家エディソンを中心に進行。
ハダリーはペルシャ語で「理想」を意味し、作中ではエワルドの理想と現実の女性とのギャップに苦悩する様子が色濃く描かれている。
主な登場人物
- エワルド: 物語の主人公である青年貴族。美しいが知性に欠けるアリシヤに失望し、理想の女性を求める。
- アリシヤ: エワルドの恋人であり、外見は美しいが性格は良くない歌姫。
- エディソン: 天才発明家である博士。
- ハダリー: 博士によって創造された人造人間。アリシヤの美しさを模しており、エワルドの理想を体現する。
後世への影響
『未来のイヴ』は後の多くのSF作品に影響を与え、人造人間やヒューマノイドロボットを指す「アンドロイド」という用語を一般化させた。
本作をモチーフにした作品
- イノセンス:押井守監督による2004年のアニメ映画で、『攻殻機動隊』の世界を舞台にした作品。物語内で『未来のイヴ』が引用されるほか、少女型アンドロイド「Type2052 “ハダリ(HADALY)”」が登場する。
- メトロポリス:フリッツ・ラングによる1927年の実写映画。顔役となる人造人間の在り方が本作と類似している。
- 屍者の帝国:伊藤計劃と円城塔による2012年に発表されたSF小説。2015年に劇場アニメ化された。19世紀末を舞台にしたスチームパンク作品で、エジソン博士が作り出した人造人間が登場する。