概要
ライトノベル『とある魔術の禁書目録』(以下、禁書と略)及びその外伝漫画『とある科学の超電磁砲』(以下、超電磁砲と略)の劇中で行われた計画。
『新世紀エヴァンゲリオン』の人類補完計画のとある版と呼ぶ人々も多い(エヴァと禁書はキリスト教がテーマ、最新鋭の大都市が舞台など共通点が多い為、度々比較される)。
学園都市の世界最高峰のスパコン「樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)」の予測演算の結果から、学園都市最強の超能力者「一方通行」を絶対能力(レベル6)へ進化させる実験。
しかし、その内容は後述(公式での説明)の通りまさに外道。
初出は禁書の旧約3巻だが、超電磁砲(妹達(シスターズ)編)はより詳しく解説されている(実際、アニメ「とある科学の超電磁砲S」(アニメ第2期)の主要はこの計画)為、超電磁砲中心の内容を記載。
なお、以下では本計画について、作中の表記に従い『実験』と記すものとする。
劇中での説明
禁書の旧約3巻(電撃文庫版)より引用
量産異能者「妹達」の運用における超能力者「一方通行」の絶対能力への進化法
学園都市には七人の超能力者が存在する。しかし、「樹形図の設計者」を用いて予測演算した結果、まだ見ぬ絶対能力へ到達できるのは一名のみという事が判明。他の超能力者は成長の方向性が異なる者か、投薬量を増やす事で身体バランスが崩れてしまう者しかいなかった
唯一、絶対能力に辿り着ける者は一方通行と呼ぶ
一方通行は事実上、学園都市最強の超能力者だ。「樹形図の設計者」によるとその素体を用いれば、通常の時間割りを二五〇年組み込む事で絶対能力に辿り着くと算出された
我々は「二五〇年法」を保留とし、他の方法を探してみた。
その結果、「樹形図の設計者」は通常とは異なる方法を導き出した。実戦における能力の使用が、成長を促すという点である。念動能力や発火能力などの命中精度が上がるという報告が多いが、我々はこれを逆手に取る。
特定の戦場を用意し、シナリオ通りに戦闘を進める事で「実戦における成長の方向性」をこちらで操る、というものだ
予測装置「樹形図の設計者」を用いて演算した結果、一二八通りの戦場を用意し、超電磁砲を一二八回殺害する事で一方通行は絶対能力に進化する事が判明した
だが、当然ながら同じ超電磁砲は一二八人も用意できない。そこで、我々は同時期に進められていた超電磁砲の量産計画「妹達」に着目した
当然ながら、本家の超電磁砲と量産型の妹達では性能が異なる。量産型の実力は、多めに見積もっても強能力程度のものだろう
これを用いて「樹形図の設計者」に再演算させた結果、二万通りの戦場を用意し、二万人の妹達を用意する事で上記と同じ結果が得られる事が判明した
(引用終)
つまり、超電磁砲こと御坂美琴のクローン「妹達」二万人を「製造」し、彼女たちを一方通行に「処理」即ち殺害させることで絶対能力に到達せしめる、常軌を逸するという言葉さえ生温い凄惨な方法が用いられているのである。
上述した様に、『実験』の内容は二万通りの一つ一つがそれぞれ異なるものとされており、各『実験』ごとに戦闘でこなすべき課題が付与されている(『妹達』には各々に該当する『実験』向けのチューニングが施されているらしい)。戦場は『実験』関連施設などの屋内や路地裏、操車場など多岐にわたるほか、殺害方法も各々異なっており、さらに一対一の戦闘とも限らず、時には多数の妹達による同時並行での『実験』進行も行われる様子。
なお、殺害された妹達の遺体の処分や現場復旧、証拠隠滅などは、その時点で生存している他の妹達により行われている。
当然ながら一方通行は桁違いの強さを誇るため、介入してくる第三者に敗北することはまず有り得ないとされているが、万が一にも途中で『実験』が破綻しないよう、徹底した対策が取られている。
まず、上述の証拠隠滅は勿論のこと、学園都市の監視カメラには全てハッキングなどが施されており、一部始終が映像を通じて公になることはまず無い。
また、妹達の容姿も当然ながら御坂美琴に瓜二つだが、外部研修または『実験』やその後始末という形でしか関連施設から出ないらしく、故に「美琴の関係者が彼女および妹達の両方に同時に遭遇して両者を見分けたうえで、『実験』の一部始終を目撃する」という余程のレアケースでもなければ、部外者は妹達の存在を知ることさえほぼ無い。
さらに、妹達は「製造」された時点で、死の恐怖などの『実験』に支障をきたす感情を持たないように人格を作られていることから、『実験』に恐怖するなどして役割を放棄する事態は万が一にも起こらないようになっているうえ、一方通行や『実験』に携わる科学者の側も妹達を「人形」と認識して『実験』に参加しているため、自然に止まることはほぼ絶望的と言って良い。
挙句、『実験』は学園都市に関わる数多の研究機関を巻き込んだ非常に大掛かりなものであるため、一部の研究機関が続行不可となっても残りが続きを引き継いだり他の研究機関にバックアップを取らせたりでき、関連する研究施設をいくら破壊しようが止めることは困難である。
なお、『実験』の存在を知った美琴は関連研究機関全ての破壊という形で、関係者の一人であった布束砥信は妹達に恐怖心のデータをインストールする形で、それぞれ『実験』の阻止を試みたが、いずれも失敗に終わった。
よって、『実験』に致命的な影響を与える「樹形図の設計者」では予測演算し得なかった事態を、再演算が及ばない状況で引き起こす事が、『実験』を止める唯一の方法となる。
そのための有効な手段の最たるものが、上条当麻が選んだ「一方通行を自分が倒す」という方法。
『実験』が「一方通行が如何なる敵にも敗北しない存在である」という前提のもと実行されていることを逆手に取り、「樹形図の設計者」が既に破壊され再演算が出来ない中で「一方通行はレベル0にさえ敗北し得る」事実を『実験』関係者に突きつけ中止せざるを得なくする、というものである。
この方法は見事成功し、一方通行が上条に敗北したことで妹達は『実験』による死を免れる事となった。それでも形式上「凍結」とされ再開の可能性は残されていたが、後日『実験』関係者たる天井亜雄が打ち止めを起点とした妹達による大規模破壊活動を試みた一件により、『実験』は完全に中止された。
なお、生き残った9969人(+打ち止め)の妹達は、学園都市で生活させるにはあまりに人数が多いこと、投薬による急激な成長で短縮されてしまった寿命を回復させる必要があることを理由に、世界各地にある学園都市の協力機関へと移送されている。学園都市に残っている妹達は一〇〇三二号(御坂妹)らカエル医者の病院にいる4人や『とある科学の一方通行』に登場した一〇〇四六号など、わずかしかいない。
なお、事情を知らない人間にその模様が目撃されることもあったらしく、常盤台中学に「御坂美琴らしき人物が路地裏でサバゲーをしている」という目撃談が寄せられたことがあるらしい(佐天涙子も御坂をショッピングセンターで見たと発言している)。一方、オリジナルである御坂美琴もこの実験は強烈なトラウマとなっており、現在もなお山のように積まれた物言わぬマネキンの中で溺れる悪夢を見ることがあるらしい。また、一方通行の能力そのものも若干トラウマになっていることが後に明かされた。
ちなみに、計算によると9982号が殺されてから10031号が殺されるまでに6日であり、これは6日で通算48人が殺されている計算になる。平均すると1日8人であり、去年の秋、10月中旬頃に実験が開始されたとして(一方通行の服装より判断)9ヶ月近くの間に10031人が殺されたのだとして1日平均36人は殺されているということになり、最大で1日に80人くらい殺された日もあると考えられる。あまりにも過密すぎるスケジュールなので殺しが無い日があったとしたら最大値はより膨れ上がる計算になり、おそらくは1日たりとも殺しが無い日は無かったと思われる。
よくスケジュールが過密すぎると言われる禁書だが、この実験はその最たるものであると言えよう。これ以上に過密かつハードなスケジュールは上条当麻とオティヌスの何億回もの戦いがダントツであるが、人物の死亡に限ればこれを上回るものはないと思われる。
関連タグ
木原幻生:『超電磁砲』にて本計画を主導した張本人であることが判明。かねてより様々な方法を用いて絶対能力への到達を試みており、『実験』の中止に伴い一方通行に到達の目処が立たなくなった事から、後に『実験』とはまた別の恐ろしい方法を用いて到達を試みた。最終的に、妹達の試作個体との再会を目的に動く食蜂操祈によって計画を阻止され、同時に自らの作成したプログラムによって自滅させられるという、因果応報と呼べる末路を辿っている。また、後に彼の方法では不可能だった、宝くじに当選するよりも低い確率だった、ということが判明している。
真相
禁書の旧約6巻(電撃文庫版)より引用
準備は、とうの昔に完成している。上条の手によって救われた一万弱もの人工能力者達「妹達」は、治療目的で世界中に点在する学園都市の協力機関に送られている
何故わざわざ「外」で体の調整を行う必要性があったのか土御門には疑問だったが、その答えはここにあったのだ。一方通行を使ったあの馬鹿げた「実験」の真意は、絶対能力進化計画などではない。
世界中に配置すべき人造能力者の量産にこそあったのだ。いかにも自然に街の「外」へ送るために
敢えて一度量産能力者計画を潰し、さらには隠れ蓑であるはずの絶対能力進化計画を潰して二重の偽装を得て妹達は全世界へ蔓延した。
世界全土を囲うように、虚数学区のアンテナたる能力者は配備された。
(引用終)
「絶対能力への到達」を目的とした『実験』はいわばブラフであり、上に記した「全世界への能力者の配備」こそがアレイスターの真の狙い。
二万人の妹達が「製造」された事も、彼女たちが一方通行によって殺害された事も、それが上条によって阻止された事も、全てアレイスターの思惑通りであった。
全ては、ある存在を世界に「現出」させる為の、壮大な下準備に過ぎなかったのである。
しかし、一方通行はアレイスターのメインプランであり、その心を闇に落として歪ませることは後の力を獲得するための布石だったとも言えるので正確には一石二鳥という奴なのかもしれない。