ハウス・オブ・ヘル
はうすおぶへる
「ハウス・オブ・ヘル」とは、社会思想社から発売されていたゲームブック、「ファイティングファンタジー」シリーズの第十巻「地獄の館」のホビージャパンにおける復刻版である。2009年に発売された。
タイトルは、原題「THE HOUSE OF HELL」の直訳となったが、最大の特徴は、「挿絵がアニメやライトノベルのような絵柄になった」事である。
カラーイラストおよび表紙、本文内の挿絵はSK氏が担当した。
マキ・ヒイラギ。
日本からイギリスに留学している、ごく普通の女子高生。
彼女はある日、友人となったイギリス人の女子高生・キャサリンに誘われ、仮装パーティに参加していた。日本のセーラー服を着て参加したマキだが、男の子に言い寄られ、ひっぱたいてその場を後に。
タクシーを拾い、ステイ先の家まで戻ろうとしたが……車内でうとうとしてしまい、気付くと……タクシーの運転手の姿は消えて、雨の中、自分と車だけが残されていた。
周囲には人気は無く、人家の明かりも無い。運転手がよからぬ考えを企み、それを実行するための準備をしているのではと考えたマキは、林の中に小さな明かりを見つけた。
運転手が戻って来たと思い込み、その場を逃げたマキは、別の方向に明かりを発見した。それは、大きく古い館だった。
しかしマキは、この時に色々と見落としていた。なぜタクシーは、自分をここに連れて来たのか。なぜこんなところに、館があるのか。
なぜ自分は、車のヘッドライトが照らし出したのと同じ方向に走り出したのか。
かくして彼女は、一生忘れられない夜を、過ごす事となった……。
「デストラップ・ダンジョン」と同時配本された、ホビージャパンによる「地獄の館」の復刻版。
挿絵が、「デストラップ・ダンジョン」同様に、日本のラノベやアニメなど、萌え系のそれに近いものになっている他、主人公=君がセーラー服の少女、そして冒頭の背景と、最終パラグラフによるアレンジされたエピローグの加筆が成されている。
こちらもまた、内容的には本家の原典と全く変わりは無い。登場する館の住民たちも、女性化や萌化などは行われておらず(唯一、原典で登場したある部屋の吸血鬼が、中年男性だったのが線の細い美青年に変わったくらい)、むしろホラーにふさわしく、それなりにおどろおどろしいものにされていた。
こちらもまた、初心者向けの入門的な作品としてプレイするのは悪くはない。ただし、原典からしてかなり難しく、クリアするのが困難である事も変わりはない。
マキ・ヒイラギ
主人公=君に該当するキャラクター。本作における読者の分身たる存在。
イギリスに留学中の、日本人の女子高生。
身長162センチ、B85、W59、H82(「デストラップ・ダンジョン」のフィリアよりちょっと胸が大きく、背も高い)。
髪は長く、後頭部下のあたりで長いツインテールにして、後ろに下げ伸ばしている。
運動神経は抜群だが、成績は中の上。好きな食べ物はおにぎりだったが、最近はホームステイ先の、イライザおばさんの作る手作りスコーンがありえないくらい美味しくてはまっている、との事。
英語は喋れるらしく、本編中では普通に会話をしていた。
仮装パーティーで、日本のセーラー服を着て参加したが、その際に男の子に言い寄られ、ひっぱたいてパーティ会場を逃げ出してしまった(この時パーティ会場にパーティー前に着ていた服と一緒に携帯電話も置き忘れてきている)。そこからタクシーに乗り、事件に巻き込まれる事に。
キャサリン
マキのイギリスでの友人。背景とエピローグにのみ登場。
日本のマンガのマニア。最初に片言の日本語で「マキ、おばんです」と声をかけて来たところから友人になった。歯の矯正ワイヤーを付けていたが、それが取れたとたんにクラスの男子から注目されるようになり、ラグビー部の男子に告白され付き合う様に(そこから、日本の少女漫画の心理面云々の話題が、男の話題ばかりに)。
更に、マキにも男を紹介するとおせっかいを焼き、仮装パーティにマキを誘った(そこから今回の事件が始まった。いわば彼女の行為が遠因ともいえる)。
エピローグでは、マキに手を出した男子……付き合っていたラグビー部の男子にしかるべき制裁を与え、別れたとの事。
マキの留学が終わるころに、お別れパーティを企画するが、マキからは仮装でないようにと注文を付けられる。
多少の固有名詞や、出てくる小物が変更されているが、全体的には大きな変更はされていない。
固有名詞の変更は、「ドラマー」が「ドゥルマー」に、「シーコウ」が「シェイクー」になっている。
また、マキが未成年であるため、原典にあった飲酒の描写も変更されている。
原典では最初の食事の際、食前酒に赤ワインと白ワインのどちらかを口にするが、本作ではトマトジュースとミルクに変更。食後のブランデーも削除されている(ただし1か所だけ意図しない形でわずかではあるが飲酒してしまうシーンは残っている)。
背景は、マキがイギリスに留学し、仮装パーティに参加し、抜け出してタクシーに乗り込み、そこからドラマー邸近くで運転手が消える……という導入部になっている。
最後の、解決した最終パラグラフでは、脱出に成功し、ステイ先に朝帰りした事が語られている。
原典では、最終パラグラフではクリアしただけでその後のエピローグは無かったが、本作では、マキは普通の学校生活に戻り、館の事を思う……という事が描かれている。
館は近くには存在せず、あれは夢か妄想だったのかとおぼろげに思うマキは、館の住民、ケルナーの事などをふと思う……という、「現実にあった出来事なのか、それともマキの妄想か悪夢だったのか」と、どちらともとれるエンディングになっているのだ。