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デストラップ・ダンジョン

ですとらっぷだんじょん

「デストラップ・ダンジョン」とは、「ファイティングファンタジー」シリーズの第6巻「死のワナの地下迷宮」のホビージャパン復刻版である。
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概要編集

「デストラップ・ダンジョン」とは、社会思想社から発売されていたゲームブック、「ファイティングファンタジー」シリーズの第六巻「死のワナの地下迷宮」のホビージャパンにおける復刻版である。2009年に発売された。

 タイトルは、原題「DEATHTRAP DUNGEON」の直訳となったが、最大の特徴は、「挿絵がアニメやライトノベルのような絵柄になった」事である。

 カラーイラストおよび表紙は空中幼彩氏、本文内の挿絵はあっと氏が、それぞれ担当した。


作品解説編集

 チアンマイ北部の、ごくありふれた田舎町、ファング。

 コク川に面するこの町は、いつもはのどかだが、一年のうちこの日だけは賑やかになる。

 サカムビット公が開催する、「最強戦士決定戦」が行われるからだ。

 そしてその日、一人の美少女の冒険者が、このイベントに参加するためにファングに赴いていた。彼女の名はフィリア、まだ若く無鉄砲だが、凄腕の冒険者である。

 彼女は五年前より、この催しに興味を引かれていた。莫大な賞金にも興味はあったが、何よりもスリルを求めていたのだ。

 剣を片手に、彼女はファングのこの迷宮に、死のワナに挑戦する。



 ホビージャパンは、2005年に、ゲームブック「ロストワールド」の日本語版として「クイーンズブレイド」を発売した。

「ロストワールド」は、元々はアルフレッド・レオナルディが考案したアメリカの対戦型ゲームブックで、1983年に、ノヴァ・ゲームデザイン(Nova Game Designs,Inc.)より発売。以後、様々な出版社から発売された。

 日本でも、1985年に日本ソフトバンク出版事業部(現・ソフトバンククリエイティブ)から、海外の絵柄のままで邦訳され、発売。

 ホビージャパンは2005年より、基本システムはそのままで、日本国内のイラストレーター、アニメーターが描く、美少女キャラクターの絵柄に置き換えた「クイーンズブレイド」を発売。同作は人気を得て、アニメ、コミック、ゲーム、小説と、様々な展開が行われる事となった。


 過去の作品に、現代風のビジュアルを付加してリメイクする。この手法を「クイーンズブレイド」で成功させたホビージャパンが、次の展開として着目したのが、過去に人気を集めたゲームブック「ファイティングファンタジー」と思われる。

「デストラップ・ダンジョン」の他、同シリーズの「地獄の館」=「ハウス・オブ・ヘル」、「サムライの剣」を「サムライ・ソード(この作品のみ、原題の「SWORD OF THE SAMURAI」とは異なるタイトルになっている」)として、同様に復刻し、販売した。


 しかし残念ながら、「クイーンズブレイド」のようなムーブメントは起こしたとは言い難く、逆に往年のファンからは否定や苦言を寄せられる事も少なからずあった。

 何より、原作者であるイアン・リビングストン氏本人からも、発売して6年後、2015年に、困惑する旨のツイートを行っている。

https://twitter.com/ian_livingstone/status/610163633818087424


 ホビージャパンからのファイティングファンタジーシリーズの復刻は、三冊目の「サムライ・ソード」で打ちきりになったのか、2020年現在に至るまで出ていない。


 しかし、逆に言えば、絵柄・挿絵以外は、基本「死のワナの地下迷宮」そのままでもある

 それに、海外の濃いめの絵柄がとっつきにくいという人にとっては、遙かに親しみやすい挿絵にイラストである。

 最初と最後に、日本のラノベ風に若干のストーリーが加えられているが、これも原典の「死のワナの地下迷宮」とは異なるものの、大きく逸脱しているわけでもない。

 本作は基本的な内容および展開は原作そのままなので、昨今の初心者向けの「入門編」としては、そう悪くはないものと言える。


主な登場人物編集

「死のワナの地下迷宮」に登場したキャラは(当然ながら)全て登場する。

 中には、原典では男性だったり老人だったりしたキャラが、女性化していたり、妖艶な美女になっていたりして登場もしている(レプラコーンが、原典では男性だったのが、本作では美幼女化していたりなど)。


フィリア(主人公=君)編集

センシティブな作品センシティブな作品

 読者の分身たる主人公。身長160センチ、B83、W58、H82。足甲にビキニ状の鎧(いわゆるビキニアーマー)を着て、両手は手袋状の手甲、首にマフラー。武器は剣。やや撥ねたショートカットの髪形に、アホ毛が出ている。口絵イラストでは、背中に盾を背負っている。

 ちょっと食いしん坊で、冒険中に変な食べ物を見つけると口に入れてしまう悪い癖がある(口絵の説明より)。また、普段から大食漢らしく、最初に書き加えられた物語の背景「地下迷宮に至るまで」では、酒場に立ち寄って料理を大盛りで頼んでいた。

 迷宮に入る順番は、原典では五番目だったのが、本作では最後の6番目となっている。


スロム編集

 今年の「最強戦士決定戦」に参加する、参加者の一人。

 隻眼で、上半身は裸で、腕には腕輪、毛皮の腰布とブーツを身に付けている。武器はバトルアックス(ただし、イラストを見るとやや小ぶり)、左足には短剣を差している。

 原典同様の姿であるが、キャラデザインは若干スマートで、顔つきも若く丹精になっている。また、最初に迷宮に入る前にあたり、フィリアの登場にも眉一つ動かさずに迷宮入り口を睨み付けていた。

 フィリアも、最初に彼を見て気になったらしく「熟練の戦士は雰囲気だけでその実力のほどが伝わってくるものだが、この隻眼の戦士はフィリアが出会った中でも別格の威圧感を放っていた(「地下迷宮に至るまで」より)」と感じていた。

 原典でクロムに該当するバーバリアンと差別化するためか、本作では彼の事をバーバリアン(蛮人)とは言われていない。


鉄仮面編集

 参加者の一人。原典の「鎧の騎士」に該当する。

 鉄仮面で顔を覆い、巨大なハンマーを背負った巨漢。その風貌に似合わず、しきりに天を仰いでは神に祈りを捧げている(どこかの神殿に仕える騎士なのだろう、と、地の文で言われていた)。


バーバリアン編集

 参加者の一人。原典におけるクロム、スロムの兄のバーバリアンに該当する。

 毛皮を纏い、裸の胸をさらしている。獣と呼んだ方がいいような格好で、片言でしかしゃべれないらしく係の人間を困らせていたらしい。

 カラー口絵を見ると、歯が欠け、赤い眉と髭と髪を持ち、肌は茶褐色、兜を被っており、どこかドワーフに似た雰囲気も漂わせている(武器は描かれていなかったが、原典同様に斧を所持していたものと思われる)。

 本名は不明。また、この当時は日本国内ではクロムの存在はあまり知られておらず、原典においてもスロムとの関係は不明であったため、「スロムと無関係のバーバリアン」扱いされていた。ゆえに本作における彼もまた、スロムとは兄弟ではなく面識もない。

 表紙裏では「筋肉バカのバーバリアン」と言われていた。


エルフの少女編集

 参加者の一人。原典における女戦士に該当する。

 幼い顔立ちと身体つきの少女で、フィリアが見た印象では『年の頃なら自分と同じか少し下だろうか、つややかな髪に猫のような青い目、丸みを帯びた幼い顔立ち』。それらに加え、エルフの特徴である尖った耳も持つ。

 表紙裏では「ロリエルフ」と言われていた。

 フィリアを子供扱いし、本人曰く「あなたの十倍は長く生きてると思うわよ」。薄緑色のワンピースを着て、帽子をかぶり、武器は短剣のみ(劇中では見られなかったが、おそらくは呪文を用いての戦いをメインにしていたと思われる)。

 原典同様に、パンと猿の形をしたお守りを持つ(所有していたのは、パン種抜きのパンではなく、普通のパンらしい)。


ニンジャ編集

 参加者の一人。原典における忍者に該当する。

 こちらは女性で、イラストに描かれたキャラデザインでは、フィリアより若干年上の美少女に見える。黒い髪は長く、ポニーテールのように後ろにまとめている。着ている服も、昨今のゲームにおける女忍者のようなデザインになっている。

 表紙裏では「クールなクノイチ」と言われていた。

 文章の描写では、「長めのナイフや拘束具などを腰ベルトから下げている」とあるが、イラストでは描かれていない。また、忍者刀も描かれておらず、苦無を武器として手に持っている(ただし原典同様に、戦闘では長い刀を用いているように描写され、選択次第では主人公=フィリアが忍者刀を入手すも事が可能なので、恐らくは有していたものと思われる)。


「背景」と「最終パラグラフ」における追加要素編集

 ファイティングファンタジーシリーズの、本編の最初にある、主人公が冒険に参加する動機と、物語の導入部と背景を描いた「背景」。

 これが本作では、「地下迷宮に至るまで」とタイトルが付き、主人公=フィリアがファングに辿り着き、酒場の主人に料理と酒を注文して会話する事で、状況を説明する、という、ラノベの導入部に似たものになっている。

 そして、クリア後の最終パラグラフでも同様に、酒場の店主がフィリアを称賛したり、迷宮を突破されたサカムビット公が驚愕のあまりに椅子からずり落ちる様子などのシチュエーションが記されていた。

 フィリア自身に関しても、迷宮内で死した参加者たちの事を思い、サカムビット公に対して怒りを覚えたり、賞金を手に入れた事の達成感と、心高ぶる冒険を知った事など、そういった彼女自身の心情も描かれていた。

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