概要
紫色の衣服のことです。歴史的には権威の象徴として扱われる衣服ですが、単に紫色の衣服のことを言う場合も多いです。
日本においては袈裟(僧侶の衣服です)に使う衣服にたいして使うことが多い言葉です。
かつては日本の朝廷が高位の僧侶に与えた袈裟であり、権威の象徴でした。この風習の起源は海を隔てた隣国「唐」に遡り、唐の女帝「武則天」が始めた地位に応じた色の服を与える慣習を日本が取り入れたのが始まりです。
これは僧侶を朝廷の支配下に置くために非常に有用な仕組みだったのです。そのためただ服を与える以上に重要な意味が存在する権限であり、江戸の時代にはこの権限を巡って幕府と朝廷の間で「紫衣事件」と呼ばれる利権争いが発生する程でした。
他にもビザンツ帝国時代のトルコでは紫の宮殿(ブルケラナエ宮殿)で生まれた王侯貴族は「紫衣」と呼ばれ、他の貴族たちよりも強い権限を持っていました。今日でも英語圏において日本における「親の七光り」に該当する言い回しに「born in the purple(紫生まれ)」がありますが、この語源だとも言われています。
遠く異なる文化であったにもかかわらず紫色が権威の象徴として共通していたのには実に簡単な理由があります。古代においては紫の染料は希少であり、その製造方法も秘密の多いものでした。そのため紫とは権力と富を併せ持つ者だけが得られる高級品だったのです。
今日では何色の服だろうがリーズナブルに手に入れることが出来、紫衣は権威の象徴としての意味合いは薄れています。しかし、私たちはエアコン、パソコン、スマートホン、世界中の珍品など古代の王侯貴族をしのぐ贅沢を簡単に享受できるのですから紫色の服に袖を通す資格は十分にあるのではないでしょうか?