分類方法によっては前装式で施条(ライフリング)を持つフリントロック式の物をマスケットと呼ぶ場合もある。
マスケットという単語自体に銃の意味を持つため、正確にはマスケット。フランスで銃剣が発明されたことにより、槍としての機能も持つようになる。
特徴
前装式の銃なので、熟練した射手でも射撃速度は1分に2発程度、ライフリングを持つ銃であればさらに遅くなる。
滑腔式である通常のマスケット銃は口径より小さい径の弾丸は銃身に密着せず、発射ガスが漏れることで有効射程が非常に短く(条件が良くて平均80m程度、条件が悪ければそれ以下で殺傷力がなくなってしまう)、弾丸も球形が主流であったため、集弾性を上げるためには現代と比べ物にならない精度が必要。
要するに一般的には精度が悪く、飛距離も無く、更に黒色火薬の燃焼時に生じる煙と刺激性ガスで視界も悪くなる為に相手の白目が見える距離という、現代からすると至近距離といえる距離での集団戦術が基本である。
(至近距離のため、すぐに乱戦に突入する事から視界が悪い中での同士討ちを防ぐ為に派手な軍服が主流となった)
アメリカの独立戦争や南北戦争時には複数の銃身を並べ、一つの火皿で同時発射する大型のボレーガンと呼ばれるものも作られている。
また、多銃身同時発射のノックガンのように携行可能なものも作られており、ボレーガンも銃身数を減らして携行可能ものも作られている。
パーカッションロック式が主流となると多薬室多銃身でリボルバー構造を持つペッパーボックスピストル、パーカッション式リボルバーのような連射可能なものも登場していた。
射程も威力も弓矢に劣る非常に使い勝手の悪い武器であったが、射手の育成が容易であるという利点があった。
後装式の近代銃(ライフル)に比べ性能の悪さが目立つものの、現代にも通用する利点はある。
煙草の吸殻を束ねた物でも至近距離であれば十分に殺傷能力を持つことが実験で証明されたことから、柔らかかったり砕けやすかったりと一見殺傷力のないような物でも距離次第では十分な殺傷力を持つ事が明らかになった。
このためマスケット(前装銃)は「どんな弾でも撃てる銃」どころか「火薬さえあれば何でも銃弾に変えられる武器」とも言える。
歴史
誕生した16世紀の頃、主流であったアルケブス銃(火縄銃)に対し大型の銃のことをマスケット銃と呼んでいた。これはアルケブス銃と比べて威力は高い反面、重いため叉杖を必要としていた。
またこれらの火種を用いる方式を、後述のフリントロック式に対してマッチロック式と呼ぶ。
17世紀にはマスケット銃は軽量化されアルケブス銃と大して変わらなくなり、アルケブス銃もまたマスケット銃と呼ばれるようになった。この頃にはフリントロック式(火打ち石による着火方式)が発明され、18世紀にはこの方式が主流となった。
ナポレオン戦争後には雷管による着火方式(パーカッションロック式)が使われるようになるが、19世紀後期には薬莢の発明により後装式の銃が主流となり、マスケット銃は使われなくなった。
マスケットはライフリングのない滑腔銃として知られているが、ライフリングが施されたマスケット銃も存在する。
ライフリング自体は15世紀末から16世紀半ばにかけて発明、改良され狩猟用として広まっていたが高い製作費、遅くなる発射速度、増える弾込めの手間により軍では普及せずに主に猟師が使用しており、戦争ではアメリカ独立戦争当時の民兵が狙撃用に使っていた程度である。
しかし、1849年にフランスでミニエー弾丸と呼ばれる椎の実型の銃弾が開発された。
旧来の丸い弾丸ではライフリングに食い込ませる為に大き目の弾丸を押し込める必要があったが、クロード・エティエンヌ・ミニエーが設計したこの弾丸は内径より小さい弾丸ではあったが発射時の圧力で銃弾後部が膨張してライフリングに食い込む構造となっていた。
ミニエー弾丸は1857年にフランス陸軍に採用され、他国も追従し採用することとなった。
最近はとあるトラウマ魔法少女が乱射していたため、急激に日本での知名度を増している。
そのほか、HELLSINGで魔弾の射手ことリップヴァーン・ウィンクル中尉も愛用している。