概要
初代皇帝の名前が、日本語的にはあまりにもアレなことで有名な古代文明の帝国である。
西暦1200年前後に、そのマンコ・カパックによって興された、というのが一般的。
そして、首都の名がクスコ。
……とかいうのはさておき、真面目に説明すると、南アメリカのアンデス山地のうち、現在はペルー領になっている辺りの高原地帯で生まれた国。
周辺の地域を征服し、征服した民族を盛んに強制移住させ、北はエクアドル、南はチリの中部あたりまで版図を広げた。
ヨーロッパ人が到来する前のアメリカ大陸では、アステカ王国と並んで強大な国であった。
文字文化を持たず、「キープ」と呼ばれる結び縄による記録が存在し、これで暦法や納税などの記録を行った。
また、クスコやマチュピチュなどに代表されるような、高度な石造りの建物でも有名である。
製鉄技術を持たず、おもな武器は頭部に石をはめたメイスのような棍棒であり、当時の人骨から見られる「人為的に穴を開けた頭蓋骨」は、打撲による脳内出血に対する治療処置であったと考えられている。
だが、アメリカ大陸にスペイン人が到達し、旧大陸の流行病が免疫を持たないインディオの諸民族に急激に蔓延し、遠征に出ていた皇帝と皇太子が感染して急死。残された皇族が内戦を始めたのがきっかけで、1533年、スペイン人の征服者フランシスコ・ピサロによって皇帝アタワルパが殺害され、呆気なく滅ぼされることとなる。
だが、スペイン人に名目上のみ擁立されていたマンコ・インカ・ユパンキ(マンコ・カパック2世)が逃亡し、名目上の皇帝はその後もしばらく存在したが、彼が一般的に最後の皇帝と言われる。
つまり、マンコに始まりマンコに終わった帝国であった。
だが、逃亡した皇帝は亡命政権の新インカ帝国を築き、トゥパク・アマルが敗北して殺されるまで存続する。