その名は「凶鳥」
フォッケウルフTa183 ペットネームは「フッケバイン」
その名はヴィルヘルム・ブッシュが書いた「ハンス・フッケバイン (Hans Huckebein)」に登場するカラスの名に由来する。
開発の経緯は英国を偵察中のドイツ軍偵察機がアメリカのB-29を偶然発見した事に遡る。
高性能で迎撃が極めて困難なB-29実戦投入の事実はドイツ空軍を周章狼狽させ、革新的なジェット戦闘機の新規開発を余儀なくされる事となった。
そして計画されたのがこの機体、Ta183であった。
40度の後退翼を持ち、機首に空気取り入れ口があり、ジェットエンジンを胴体後部に収納する新世代のジェット機。
供給を合理化させるため主翼は左右に互換性があり、エルロンとラダーは共通部品。
胴体下には窪みが設けてあり、搭載時にはその部分の外板を外して半埋め込み式に増槽や爆弾を搭載することができる設計となっている。
エンジンはハインケル HeS 011を採用し、航続距離、最高速度ともに優れた機体に仕上がっている。
…はずだった。
…この機体が完成していたならば。
時代に消えた「凶鳥」
実際にはこの機体は16機の原型機が発注されただけにとどまっており、更にイギリス軍にフォッケウルフの工場が抑えられてしまったため、試作機すら作られることはなかった。
そう、この機体は未成機だったのだ。
そして生まれるはずだった凶鳥は、時代の闇へと消えていった…
「凶鳥」の末裔
しかし、そのコンセプトと設計は優れており、後にアルゼンチンへと移った当機の設計者は、Ta 183の設計をもとに、プルキーⅡを設計した。
また、戦後に流出した設計図を元に作り上げたスウェーデンのサーブ 29 トゥンナンやロシアのMiG-15などが後の世の空を飛んでいる。
(ただし、MiG-15への設計の流用はロシアの航空歴史家により否定されている。)
凶鳥は消え失せども、その末裔は蒼穹を飛んでいたのだ。
関連タグ
ヒュッケバイン:当機がモチーフの人型機動兵器。此方も時代や様々な事柄に翻弄されども眷属を後の世に残している。
プファイルⅢ:機体の説明に際して当機とプルキーⅡの経緯が語られている。