概要
天満星の生まれ変わりで、序列は第十二位の幹部。髭の長さは腰まで届くほどであり、かの名将関羽になぞらえて「美髯公」のあだ名を授かっている。
不器用な漢
もとは鄆城県の騎兵都頭を務めていた。親友の雷横は同僚でもある。初登場シーンは県知事から夜間巡察を命じられるシーンで、梁山泊の二代目総帥になる晁蓋とも関わりが深い。後に晁一派が盗み(都の悪大臣への献上品強奪)を起こした時は彼らをうまく逃がしており、人情派の描写が早くも見え始めている。
自分も恩義を受けたことがある地元名士宋江が愛人の閻婆借と痴情のもつれから彼女を殺してしまった時、出動してはいるものの、宋江が慕われている人間であることであったので見逃してしまう。それでも、知事や民衆は朱仝の人柄を愛し続け、罪を問うことはしなかった…が、徐々に運命は狂い始める。
冤罪
朱仝の平和な日々が崩れたのは、皮肉にも親友雷横の元から起きた事件だった。旅芸人の白玉喬と娘の白秀英が営む見世物小屋でチップを払えなかった事をバカにされた雷横は激怒、父の玉喬を殴る。恨んだ秀英は恋人でもある知事に告げ口し、雷横を晒し者にさせてしまうのだが、見舞いに来た彼の母をいじめたために雷横が暴れて撲殺されてしまう。朱仝は雷横を護送する際、過失と見せかけて彼と母を梁山泊へ逃がす。
知事は朱仝を無罪にしたいと思ったが、白玉喬の訴えもあったので滄州牢城に彼を流罪にした。流罪先である滄州の長官は朱仝の性格と風貌が気に入り、雷横を庇ったのだと知って優しく扱い、彼に懐いた坊ちゃんのお世話係を任せた。しかし、7月15日に朱仝と坊ちゃんが灯篭見物をしていると雷横と呉用が現れ、彼を呼んだ。
「坊や、おじさんはちょっと用事があるから良い子にしてなさい。飴を買って来ますからね」
「うん。髭のおじさん、早く戻って。ぼく、橋の上から灯籠が見たいなぁ」
それが、二人の永の別れになってしまうのだった。
悲壮の美髯公
呉用と雷横は、朱仝の人柄を評価した幹部達の依頼で梁山泊入りを勧めに来たのだった。真面目な朱仝は拒否し、戻ると坊ちゃんがおらず、李逵が現れる。彼の言葉通りに探してみると、哀れにも坊ちゃんは死んでいた。朱仝を長官閣下の下に帰れなくすることで梁山泊に入れる作戦だったのだ。当然、朱仝はしばらく李逵を憎んで揉めるが、最終的には同志として互いを許しあって和解する。
その後、朱仝は盧俊義・史進を助ける作戦を始め、各地の群雄や官軍と戦う。朝廷に帰順した後も、方臘の反乱軍や金朝との戦争に出征して勝利し、最後には太平軍節度使にまで出世した。迷惑をかけてしまった長官や坊ちゃんに対して償い続けるかのように戦い抜いた人生だった。