概要
「水滸伝」の主人公。字は「公明」。
天罡星三十六星の天魁星の生まれ変わりで、序列第一位の好漢。
北宋末期の梁山泊に集った好漢達の頭領であり、あだ名は「呼保義」「及時雨」。梁山泊が山賊紛いの集団だった頃から数えると、三代目の頭領にあたる。
元は役人だったが、旧知の仲の晁蓋が、宰相の蔡京へ贈られる財宝を強奪したのが契機で、アウトローの世界へ足を踏み入れていく羽目になる。
そして、梁山泊の晁蓋達の仲間となった後も、近隣の豪族や山賊との戦い、晁蓋の戦死と頭領への就任、朝廷の討伐軍との戦いを経て百八星が集い、招安を受けて朝廷に帰順する。
元梁山泊の好漢達を引き連れて、官軍として反乱軍や遼国軍を打ち破るが、方臘との戦いで好漢の大半が死に、宋江も後に高俅達から贈られた酒に毒を盛られて、自分の死後に李逵が暴走する事を危惧して道連れにした。
主人公で、しかも反政府組織の頭領でありながら、武勇に優れたわけでなく知略もさほど目立たず、性格も軽はずみでうっかりミスが目立ち、名声と人徳とカリスマだけで渡り歩いているような、「三国志演義」の劉備や、「西遊記」の玄奘三蔵(三蔵法師)を非常に劣化させた、主要登場人物が活躍する場を提供しているだけのような存在、いわば主人公(笑)の古典的な例として挙げられやすい。無論、本国での人気も壊滅的。
しかも人徳者という割にはえげつない策をいくつも講じている。
もっとも、本人はアウトローになりたくてなったわけではないし、性格も朝廷の正統性にこだわり続けるあたりなど、いかにもアウトロー向きでないような気もする。一応、洞察力が乏しい第二位や、策士策に溺れる第三位よりはマシとも言えそうだが。また、宋江のダメっぷりは意図的に描かれているという見方もあり、よく引き合いに出される劉備や三蔵法師が「なんだかんだ言いながら主人公らしく優秀な部分を見せている」主人公像をカリカチュアライズさせたもの、或はアンチテーゼに近いものとして描いたのではとも言われている。
横山光輝による漫画版・水滸伝では人物像がかなり改変されている。囚われた際に命乞いなどはせず堂々とした態度を貫き、また剣と飛剣の使い手として武勇もあり山賊や役人と渡り合ったりするなど、如何にも主人公らしく描かれた。卑劣な策を使う話も改変されるか丸ごとカットされている。
さすがに原典のままでは少年漫画の主人公に相応しくないと判断されたのだろう。尚、山賊に捕まっても名を名乗った途端に「貴方があの宋江様でしたか! 失礼しました!」と解放され歓迎会が始まる、というパターンは原典通りである。尚、見た目だが初期は横山三国志の登場時の趙雲を小さくした感じだが後期は初期の曹操に近い見た目となっている。
ちなみに現実では、同時期に三十六人で仲間を組み反乱を起こした首領と、方臘を討伐に向かった軍の将校に「宋江」がいるが、「時期が合わないので別人だろう」との見解が強い。
関連タグ
劉備…同類扱いされがちだが、こちらは(「演義」でも)それなりに活躍もする。