シベリア送りとは、長くて忙しい党員生活に疲れた同志諸君に、田舎での悠々自適な生活を勧める党および指導者からのとてもありがたい指令である。
シベリア(Сибирь)では、都会の喧騒を離れて綺麗な空気のもと、原生林の見事な木の数を数えたり、美しいオーロラを眺めながら党に関する教養を深めたり、純白の大地に鉄道を敷いたりと、非常に風情に富んだ生活が約束されている。
シベリアから帰ってきた者は、このありがたい指令に報いるために党と指導部に一層の忠誠を誓うと言われているが、多くの者はシベリアから離れることは無いという。
実際は…
上級貴族に関しては、一応管理職という立場で送られる事もあったというが、もちろんシベリアには生産的な産業など無いので、やる事も無く文字通り「木を数えて過ごす」しかないくらい暇であったという。当然、産業が無いので功績など上げられるはずも無く、一度送り込まれると政治の表舞台には殆ど戻れる見込みのない約束された左遷の地である。
重大な政治犯罪者や、不正を働いた下級官吏、脱走兵、捕虜などは、労働力として、鉱山、炭鉱、鉄道や港湾施設の建設などに従事させられた。
労働環境は頗る劣悪で、労働災害で多くの犠牲者を出し、また多くの者が再び故郷の土を踏むことが叶わなかったと言われている。