解説
星団四大ファティママイト(AFガーランド)の一人で、物語のヒロインであるアトロポス、ラキシス、クローソーの製作者。
不世出の天才科学者であり、主人公アマテラスの無二の親友でもある。
元々はデルタベルン星エラン連邦のフェイツ公爵家(のちにエランを脱退し天照王朝に加入)の11代目当主。バランス家は代々科学者を輩出する家系で、ファティマの基本理論を発案したウラニウム・バランスと、その孫で史上最初のファティマを製作したリチウム・バランスを先祖に持つ。
幼少時より天才的な才能を発揮するが、気難しく頑固で人間嫌いな性格や、自分の探求心を世間の倫理より優先させるマッドサイエンティスト的研究方針のため、学会を追放されるなど周囲からは異常者扱いされて不遇の日々を送っていた。
星団暦2629年、戦争中のアドラー星サン・ローのファティマ・ファクトリーでソープ`(アマテラス)と出会い、彼をパトロンとしてファティマ・マイトとしての名声を確立する。
同じアドラー星のトラン連邦のバストーニュに研究所を兼ねた居城を構え、老化が進むとファティマの体組織で作ったボディに自らの脳を移植して延命させてまで研究に没頭していたが、その真意は不老不死の存在であるアマテラスとなるべく長く一緒にいたいとの思いからであった。
アマテラスの肉体についても調査・研究を行っていたため、彼の正体が高次の存在たる「神」であることにうすうす勘づいていた。また、その分身であるソープには恋愛にも似た感情を抱いており、特に女性体であるソープ’との仲は周囲からは夫婦同然に扱われていた。
表立っては見せないがファティマに対して深い愛情を注いでおり、ラキシスの「ダブルイプシロン」化や星団初の4ファティマの一人「インタシティ」のハルペルとしての再生など彼女たちの頼みを断りきれない一面を持つ。
しかし一方では星団法を無視して禁忌に踏み込む過酷な実験や研究(クーンに対する生殖機能付与、アトロポスに騎士と同等の能力を持たせる、ラキシス達のダムゲート・コントロールを除去するなど)を行っており、ドラゴンについて常軌を逸した理論を発表するなど、世間からは狂気のマッドサイエンティストとして扱われている。
だが、時に倫理を無視したこれらの研究は全て「たとえ姿形は変えようとも、この宇宙に人類のいた証を残したい」という彼独自の人類愛によるものである。
ダグラス・カイエン、プリズム・コークス、ミース・シルバーらを養子として引き取り、ミースについては彼女の持つマイトとしての才能を見抜いて自らの後継者に推している。しかし、カイエンについては彼の出自もあって折り合いは良いとはいえなかった。
46番目の作品となるはずだった「MAXIMUM」の基礎理論をミースに託し、2989年の冬、ソープの最後の見舞いの後に老衰と薬物中毒のため死去。この際、ソープが神の力で延命させようとするのを「お前の力はこの世界で使ってはならない」と押し留めている。
ソープは彼の死によって、ようやく本当の『悲しみ』という感情を知ることになった。
バランシェ・ファティマ
バランシェの製作した『バランシェ・ファティマ』はそのいずれも最高ランクの基礎能力を持つだけでなく、何らかの特性を付与されているのが特徴で、その超高性能さと箔の高さからお披露目の時は騎士であれば誰もが憧れる最高のブランドの一つである。
しかしその反面、精神面以外の能力自体は全ファティマ中でもかなり高いにもかかわらず、精神面は本来ならば星団法で廃棄処分指定を受けるレベルで不安定だったり、一方向に特化し過ぎて融通が利かなかったり、クセの強い性格をしていたり、全ファティマ中でも規格外の「運命の三女神」を除けばトップと言っても良いほどの高いレベルでバランスの取れた能力にも関わらず、「あえて特に弱い騎士をマスターに選ぶ」事で自己鍛錬を図ろうとするよう造られていたりととにかく非常に扱いづらく、ファティマの兵器としての信頼性を重視する騎士からは「銘ばかりの欠陥品」と揶揄されている他、嫁いでいった先でトラブルを起こして出戻る者も少なくない。さらに自作のファティマを、その特性や情報を敢えて秘匿したまま野に放つ常習犯でもある。
ちなみにアマテラスの腹心で共通の友人であるファルク・ユーゲントリッヒ・ログナーからは、こうしたバランシェのファティマの製作スタイルについて「はっきり言って性格悪い」と評されている。
ファティマ製作において、唯一バランシェと対等足り得たのは同じく四大マイトの一人で親友でもあるモラード・カーバイトのみであり、二人は若い頃は互いに製作したファティマの性能を競い合いあっていたこともあったライバル同士でもあった。