「グリースガン」は、本来「機械に粘度の高い潤滑剤を注入する工具」を意味する単語である。
しかし、本来の意味で投稿された作品が皆無であること、「M3」と名乗る物品が非常に多岐にわたることから、アメリカ製の「M3サブマシンガン」に関する項目とする。
概要
第二次世界大戦時に、アメリカ軍はトンプソン・サブマシンガンを制式採用していたが、トンプソンは性能重視であったため、生産性が悪かった。
ドイツ軍のMP40のようにプレス加工と溶接だけで製造でき、安価で大量に生産できる短機関銃の開発が求められた。
そこで完成したのが、M3サブマシンガンである。
製造はゼネラルモーターズ。
特徴
見た目は、機械に潤滑油を挿す機材に形が似ていたため、愛称としてグリースガンと呼ばれた。
その他の愛称として、クリームを絞り出す道具にも似ているからケーキデコレーターや生産地を示すデトロイト・サブマシンガンとも呼ばれている。
弾薬はトンプソンと同じ.45ACP弾が採用され、サイドアームのM1911との互換性が維持されていた。
生産性を重視したためシンプルな構造になり、そのため故障が少なかった。
連射速度はトンプソンよりも遅かったが、むしろ連射時の制御が容易なため前線の兵士達には評判が高かった。
フルオートオンリーの武器ではあるが、前述の通り発射速度が低い銃なので扱い慣れればセミオート撃ちやバースト撃ちも容易であったという。
初期のM3は本体右側面にクランクハンドル型のコッキングレバーがあったが、これは手荒に扱うとすぐに壊れてしまうという欠点があった。
その為、改良型のM3A1はボルトにくぼみを付けて指で直接引くという風に変更された。
しかし、今度は撃発で熱くなったボルトを素手で触れなくなるという問題が発生した。
だが、これに関しては耐熱手袋をはめて扱うという策で解決している。
排莢口の蓋は安全装置を兼ねており、射撃時にはこれを開く必要がある。蓋を閉じた状態だとボルトが前進も後退もできなくなるので発砲が出来ない。
もし本銃で射撃中及び射撃後のイラストを描く場合はここらへんに注意である。
また、この蓋は薬室内へ砂埃や泥が入るのを防ぐ役割も兼ねていた。
第二次世界大戦後の朝鮮戦争にも使用され、現在でも自衛隊の小火器として使用されている。(11.4mm短機関銃M3A1)
磨かれすぎて銀色になっているせいか使っていた米軍から日本製の新型SMGと勘違いされる、壊れたから入れ替えで89式になると思ったら新しいグリースガンが届いた、といった笑い話もある。
フィリピン海軍や一部の特殊部隊は、2004年に改めてM3サブマシンガンを制式採用して話題となった。
当初、M4カービン等の取得が計画されていたものの、極度の財政難からこれらが調達されることは無く、アメリカでデッドストックとなっていた本銃に白羽の矢が立った。
アメリカは要請に答えて供与し、ダットサイトやレールマウント、消音器を取り付ける等の改修を施して使用されている。
データ
全長 | 571mm/743mm |
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銃身長 | 207mm |
重量 | 4000g |
口径 | .45ACP |
装弾数 | 30発 |