茜ヶ久保もも
あかねがくぼもも
声;釘宮理恵(OVA4)
概要
遠月茶寮料理學園高等部3年。
およそ高校3年生とは思えないほど小柄で幼児体型な少女で、いつもクマのぬいぐるみの「ブッチー」を持ち歩いている。熱いものを持つ時はブッチーの両手を捥いでミトンにしている。
そんな外見とは裏腹に学園の最高意思決定機関である「遠月十傑評議会」の第四席であり、洋菓子やケーキを中心としたスイーツ作りを得意とする。その繊細な技術と華やかな美的センスを生かした菓子作りで十傑入りを果たしたことで、遠月学園当代きってのパティシエ(菓子職人)と呼ばれている。
中枢美食機関(セントラル)発足後は薙切薊の方針に賛同しなかった第三席の女木島冬輔が除名されたため、新たに第三席となっている。
美作のトレースによると、"かわいい"のカリスマとされており、彼女が「かわいい」と認識した物は、前評判はどうであろうととんでもない勢いで売れたらしい(当時チョイスしたものはいわゆるキモカワイイというようなもの)。
中学卒業の際には、玩具メーカーやアパレルデザイナーなどの誘いもあったが、もも本人は「お菓子を作っている自分が一番可愛い」という理由でこれらを断り、遠月学園に転入した経緯を持つ。それ故に彼女は自分が可愛いと思うスイーツを作り続けて、スイーツ作りではほぼ負け無しの状態であった。
人物
一人称が「もも」であったり、見た目同様に言動も幼いが、根暗でコミュ症で毒舌家な性格。会話が成立するのに一ヶ月を要するが、慣れてしまうと饒舌になる。
パティシエとしても高い才能を持つが、あらゆる物に対する「かわいい要素」を見抜く事の出来る観察眼と感性の才能を持ち合わせていると言っても過言ではない。SNSの扱いにも精通しており、食戟に勝った一品には自分のスマホを片手に自撮り写真を収める癖があり、更に自分の料理を全国に拡散させている。
しかし、幼少期より両親から徹底的に甘やかされ、更に自らの天性の才能から周囲の殆どから賞賛されてきたという、挫折知らずで何でも思い通りになっていた環境で育った結果、見た目によらずにとって興味の無い事には徹底的に冷淡・薄情になり、自分の考えだけが常に正しいという司瑛士にも通じる傲慢さを持った自分至上主義に陥ってしまい、いつも抱いているブッチー以外の物に心を開こうとしなくなった。
気に入った相手に対しては「○○(名前)にゃん」(名前の最後にマ行が来れば「~みゃん」タクみゃん、めぐみゃん等。創真の場合は斎藤と被るため「幸ひゃん」)と呼び可愛がるとのことだが、一色の見解によれば可愛がるということは相手を見下してることへの裏返しであり(そうなると自分より席次が下である斎藤綜明のことは格下と見做してることになり、実際席次が上の者に対しては渾名はつけていない)事実、連帯食戟の対戦相手である田所に対して渾名で呼びながらも獲物を狩る目線を送り付けている。
来歴
遠月学園での学園祭「月饗祭」では、山の手エリアでスイーツ店を開いており、初日の売り上げでは第1位と薙切えりな以上の成果を出している。
自分に興味の無い事にはどうでも良い感性の為か、薙切薊の思想にも早くから賛同していたらしく、薙切仙左衛門や一部の十傑・学生達の追放やセントラルによる支配体制も受け入れている。しかし、「残党狩り」は面倒でしかなかったらしく、叡山枝津也の様に不戦勝で決着をつける事を望んでいたが、結局は渋々と一色ルールに従う形で、残党を完封に勝利している。
連帯食戟では3戦目に登場。田所恵とテーマ食材「りんご」で対決を迎える。
かつて落ちこぼれだった恵が相手に観衆からは「捨て駒」と比喩され、更にテーマ食材「りんご」はスイーツに生かしやすい点から、勝負は試合前からももの優勢で動く。
彼女が作った料理は「女王さまの林檎タルト」という薔薇の形をした林檎のタルトで、クレオパトラも愛用したダマスクローズを香りづけに使用している品(ちなみにカゴもパンで作られているため食べられる)。
ダマスクローズを香りづけに使ったことで極上の香りを実現させて恵を追い詰めたが、対する恵は外見の華やかさでは負けているが、内側の表面にフランスの調理技法「モンテ・オ・ブール」を用いたりんごバターを塗り白餡をベースに真ん中に角切りりんごと針生姜を組み合わせた『林檎のどら焼き』で勝負する。真ん中を食べる直前まではももの林檎タルトにあと一歩まで迫られたが針生姜と白餡の組み合わせが噛み合わず、2-1で恵の追撃を振り切った。試合終了後、えりなが恵の元に駆け寄り気丈に振る舞うも最後に悔し涙を流す恵の姿を見ていたももは「かわいくないなぁ、田所恵」と恵を突き放しつつも、呼び捨てしてる頃からそれなりに実力を認めた上で会場を後にした。
続いて行われたえりなとの4戦目では無性にイライラすることを料理で発散させようとしており、作り上げたのは極上のロールケーキを積み上げることで作り上げた巨大な城(中には塩キャラメルと似たような発想で黒糖と醤油を組み合わせるという全く新しいものもあった)だった。
一方でえりなが繰り出したのは恵のどら焼きの意図を組み込んだスフレ状のパンケーキ「スフレ・レジェ・ドゥ・グラース(実は日本語訳で軽いスフレの恵みと言う意味)」。一見二枚のパンケーキが挟んだものにしか見えないが、この間にテーマ食材である黒糖と圧力鍋で煮た十勝産の小豆を練り込んだ『神妙のこし餡』仕込まれていた。パンケーキ自体にもコーヒーフィルターで水切りした即席のギリシャヨーグルトが隠し味として入っていた。
審査員からは「神が降りたような啓示的回答」と絶賛。そしてえりなの薦めでパンケーキを食べたももはあまりの旨さに言葉が出ず、目がハートになっている光景に叡山たちからは他人の作ったスイーツでメロメロになる姿に衝撃を受けた。
えりなから苛立ちの正体は恵が満点を捨てて120点を目指した品だった事を指摘され、えりなは恵のどら焼きがなければ今回のパンケーキは作れなかったと説明。これに「えりにゃんだって氷の女王と呼ばれていたくせに!」と負け惜しみに近い形で反論するも「今の私はもう上座でふんずり返っている女王ではありません」と看破される。
自分が可愛いと思ったものは絶対だと思っていた。それ故にえりなのパンケーキもといどら焼きの存在が許せなかった。だがその美味さに逆らうことが出来ず、「このどら焼き、超かわいい!!」と叫んでしまい3-0で完敗を喫した。
ももの招いた敗因はズバリ「スイーツの女王」が故に慢心を知らず知らずに生んでいた事であるが、えりなのパンケーキを食べた直後の十傑側の反応からして彼女は自分より美味いスイーツを食べた事がない人間でもある。
その思考自体は概ね初期のえりなにも近い考え方だった思われるが、えりなは数多くの出来事を経て仲間の大切さを学び、極星寮に匿われて以降寮生や仲間を気遣う描写が見られるようになっていったのに対し、ももは何一つ変わろうとせず「自分が良ければ他はどうでも良い」という考えのままだった為に、そこから傲慢と同時に過信が生まれてしまい、目に見えない決定的な「差」が生じる事になってしまったのだろう。