概説
2007年ポプラ社より発行。
元ホストで占い屋「陰陽屋」の主のイケメン陰陽師と、人の世に紛れて生きるアルバイトの化け狐の少年のコンビが、店に舞い込んでくる奇天烈な以来の数々に挑む。
ジャンル的には、謎解き要素が強いため推理小説と言えるが、一方で狐少年の学生生活を軸にしているため、青春ドラマとしての側面も強い。
各巻・各章ごとに区切られたオムニバス形式を採ることが多いが、後半になるにつれて一巻そのままを使い切ってストーリーが展開されることも多くなった。
あらずじ
東京都北区王子稲荷神社のお膝元、王子稲荷商店街の雑居ビルの地下1階に、「よろず占い処 陰陽屋」という小さな占い屋が店を構えていた。
沢崎瞬太は担任からの臨時の進路相談を終え、母・みどりと共に商店街を歩く中で、陰陽屋の看板を発見する。陰陽師ファンの母に推されて入店すると、店主イケメン眼鏡の陰陽師安倍祥明が顔を出した。
「不幸続きで何かに憑かれているのでは」と相談するみどりに、祥明は占いを用いて進言するが、祥明が相談料として2万円を請求してきたのを聞いて、瞬太は我慢できずに祥明をぶん殴ってしまう。
そして自分が化け狐であることを明かし、彼の占いがトリックであることを理由に請求を拒否。
しかし流石に祥明も黙ってはおれず、相談内容から見えた沢崎家の問題を容赦なく突き付け、理路整然と喝破する。
さらに瞬太に殴られて壊された眼鏡の代金5万円の請求の代わりに、瞬太をアルバイトとして陰陽屋に通わせるよう請求してくるのだった。
画してここに、イケメン陰陽師(もどき)と化け狐少年の凸凹コンビが誕生する。
そしてこの日以来、二人の前に珍妙な依頼の数々が舞い込んでくるのだった。
登場人物
「陰陽屋」
王子稲荷商店街にある雑居ビルの地下1階にある占い屋。
薄暗く陰陽道にまつわる古書と専門書、占い道具がひしめき合う店で、奥の応接間で相談に乗る。
各種占い、命名相談、心霊相談、霊障相談、加持祈禱など、陰陽術に関連する占時を取り扱う。
またお守りなども販売している。
祥明目当てにくる女性客が多い。
沢崎瞬太(さわざき しゅんた)
茶褐色の髪がトレードマークの小柄な少年。本作の主人公。
実は本物の化け狐であり、赤ん坊のころに王子稲荷神社の境内で遺棄されていたのをみどりに拾われ、そのまま沢崎家の一人息子として育てられた。
性格は一言でいうとアホの子。一端に物は言うが、まったくの無計画かつ無思慮であるため、周囲からも容赦なく天然ボケや能天気などと断じられてしまう。オマケに意思が弱く自堕落で、追い詰められると後先見ずに逃げ出す癖がある。食べ物の誘惑にも弱い。
狐の夜行性体質からなのか、学校でも無遠慮に昼寝をするため、成績は常に地の底を張っている。
しかしお稲荷様の加護と形容されるほどの強運も持ち合わせており、この運のお陰でどうにかこんにちまで平穏に過ごせている。
上項のいきさつから陰陽屋にアルバイトとして転がり込むことになる。仕事はマスコット兼雑用係。
安倍祥明(あべのしょうめい)
歳は20代後半で、流れるような長い黒髪に銀縁眼鏡が似合うイケメン。
占いや陰陽道は我流で、実は陰陽師もどきでしかないのだが、知識に関してはそこらのにわか陰陽師よりも造形は深い。陰陽道だけでなく、卜占・タロットカード・人相・手相など、大方占いと呼ばれるものはひとしきりおこなえる。
実は元ホストで、近在では伝説といわれたNo.1イケメンホストだった。さらに実家は裕福な学者の家系で、陰陽道に興味を持った際にはプロの陰陽師に弟子入りしたことさえあった。
相談者の前では終始爽やか美青年を演じるが、本性は自堕落で冷淡。割と気が短く、よく内心で毒づいている。ただ勉学好きなのは本当で、暇さえあれば陰陽道の専門書を読み漁っている。自己中心的ではあるが、親しい間柄には非常に徹しきれなお人好しな部分もある。
ときに依頼人の欠陥を正確かつ容赦なく抉り出し、そこから理路整然と相手を言い負かしてしまう。だがかえって事件解決につながることも多い。
複雑な経歴の持ち主だが、この原因は彼の母親にある。
ドラマ
2013年10月からの同年末まで、関西テレビのドラマとして放送された。
主演は安倍祥明役の錦戸亮。沢崎瞬太役はHey!Say!JUMPの知念侑李。
基本は原作に沿っているが、オリジナルキャストや独自設定も多く、最終回はドラマオリジナルとなっている。