オーストリアの理論物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが提唱。
猫の登場する思考実験である事から、「シュレディンガーの猫」と呼ばれる。
内容
一匹の猫を、内部が外から観測できないようにした箱に入れる。
箱の中には、一定量の放射性物質・放射線検知器・検知器と連動するように設定された毒ガス発生装置が仕掛けられている。放射性物質が放射線を出すと、放射線検知器と毒ガス発生装置が作動し猫が死亡する。
以上のように仮定した上で、例えば放射性物質が放射線を出した確率が50%の時点において、猫は生きているだろうか死んでいるだろうか。
解説
量子力学における一般的な解釈では、放射性物質が放射線を出したか否かは、観測されるまでは確率でしか記述できない「重ね合わせ」の状態にあるとされる。これは、「放射線の出た確率がx%」という事ではなく、「放射線は『出た、かつ、出ていない』状態で、観測されるとx%の確率で『放射線が出た』状態に収束する」という事である。
しかし、シュレーディンガーの猫においては、放射線の「出た/出ていない」が即ち猫の「死んでいる/生きている」となる。上述の解釈では、猫は「生きている、かつ、死んでいる」状態とされてしまう。
つまり、「シュレーディンガーの猫」とは、ミクロの世界を対象とする量子力学の解釈を容易な方法でマクロな実験系にできる事を示し、そこから得られる結論の異常さを提起した、一種のパラドックスである。
ちなみに、量子力学から切り離され「観測されていない事象はあらゆる可能性を持つ」というような使われ方をする事もあるが、正確ではない。
解決案
「シュレーディンガーの猫」には、整合性を求めて様々な解決案が提起されている。言及される事の多い主な解釈を以下に挙げる。
- コペンハーゲン解釈
量子力学における一般的な解釈を維持し、「生きている、かつ、死んでいる猫」の存在を認める解釈。詳しくは上述。
- エヴェレット多世界解釈
量子力学における一般的な解釈を維持しつつ、猫を観測した時点で観測者が「生きている猫を観測した観測者」と「死んでいる猫を観測した観測者」の重ね合わせの状態になるとする解釈。パラレルワールドに似ているが、世界全体が分岐するとは限らない。
- 量子デコヒーレンス
マクロな実験系である「シュレーディンガーの猫」は外部からの影響を受けるので、猫の生死は観測前に決定されているとする解釈。
サブカルチャーの世界での解釈
pixivにおいてはスカートの中身が見えないことで、はいているのかはいてないのか、はっきりと確認できないイラストにこのタグが付けられることがある。
詳しくは、シュレディンガーのパンツを参照。
また、既存のエンターテインメント作品の中でも、作者独自の解釈を織り交ぜてこの理論が語られる時がある。
主なシュレーディンガーの猫関係の作品
とある魔術の禁書目録(ライトノベル)
自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を開拓するヒントの代表例として扱われている。
うみねこのなく頃に(同人ゲーム)
ある島で起こる幻想的な事件について、『島の外の人間が何が起きているか知らない間、島の中では現実と幻想が両立されている』という形でこの理論が持ち出された。
ウルトラマンメビウス(特撮ヒーロードラマ)
この理論を能力に応用した『ディガルーク』なる怪獣が登場している。
パワプロクンポケット10(野球ゲーム)
ある彼女のシナリオにおいて、彼女が好んで「箱の中の猫」という表現を使用。終局に至る過程においてはこの言葉が重要な言葉となる。