「食休みかと思えばこの有様。美食だの悪食だのどうでもいいのに……本当、私たち以外は食事のなんたるかが全然わかってない」
「私たちの名前は、魔女教大罪司教『暴食』担当、ルイ・アルネブ」
「いい、いいわ、いいわね、いいわよ、いいじゃない、いいじゃないのさ、いいだろうからこそ……私たちも、あたしたちも、『食す』価値をあなたに見る」
プロフィール
性別 | 不明 |
---|---|
名前の由来 | うさぎ座α星アルネブ(Arneb) |
能力 | 『暴食』の魔女因子 |
概要
魔女教大罪司教『暴食』担当。
「ライ・バテンカイトス」とは別の『暴食』担当。
第5章にてオットーらに追い詰められたバテンカイトスの能力、『月食』によって突如現れた存在である。
姿はバテンカイトスと全く同じであったが、直後に姿を変え四十路に迫ろうかという厳つい顔つきをした筋骨隆々な大男へと変貌した。
それに反して話し方はオカマ口調。
そしてその瞳には渦巻く狂気と怨嗟を宿しており、バテンカイトスとアルファルドのそれとは段違いにどす黒いものを感じさせるという。
本人曰くバテンカイトス、アルファルドとは兄妹(兄弟?)である模様。
暴食の中でも『飽食』であるとされている。
人物
狂気を孕んでいるとはいえ子供っぽく、常にハイテンションなバテンカイトス、アルファルドとは違い酷く達観した物言いをする人物で、空虚で気怠げな雰囲気を纏っている。
「美食家」「悪食」の二人を兄弟としているが、二人の主義に「なァんにもわかってない」と否定的であり、同時に「出来の悪い兄弟を持つと苦労する」と評している。
シリウス曰く暴食の中では『飽食』であると称されており、
その主義通り「何を食べるか」に重点を置いておらず、「誰と食べるか」を重要視しているという。
行使する権能も恐らく二人と同じであるが、戦闘能力は少なくともその二人以上に凄まじいものであり、短時間のうちでもその圧倒的な力量を感じさせる程。
既にオットーらとの戦闘で満身創痍となったバテンカイトスの肉体でもその気になれば全滅に追い込むことも可能であったらしい。
その性質も二人と同様に悪辣、またそれ以上に邪悪なものであることが窺える。
余談
- 三大魔獣との関係
くじら座が名前の由来となっているバテンカイトスは「白鯨」をペットにしている。
ところでアルネブの名前の由来はうさぎ座である。うさぎと言えば三大魔獣には「大兎」が存在しているが、果たして…
関連タグ
ライ・バテンカイトス(美食家)
ロイ・アルファルド(悪食)
※ネタバレ注意※
※ここから先は第6章のネタバレを含みます。※
第6章にて、バテンカイトスに記憶を奪われたクルシュ、名前と記憶を奪われたレム、アルファルドに名前を奪われたユリウス、その他同じく『暴食』に人生を奪われた人達を救う為、『プレアデス監視塔』へ赴いたスバル一行。
しかし、プレアデス監視塔には誰かが仕掛けていた『試験』の存在があった。
塔の第二層の試験官はなんと現在では既に故人であるはずの初代剣聖『レイド・アストレア』。
その圧倒的な実力の前にユリウスですら全く歯が立たず、一行の目的は暗礁に乗り上げる。
その過程でスバルは『死者の書』と呼ばれる書物を発見。その本は、現在では故人となっている者の人生を追体験できるという代物だった。
レイドを攻略できる手がかりをつかめるかもしれない。そう思ったスバルはレイドの「死者の書」に目を通すが…
その本を読んだ直後、スバルは何故か異世界に来てからの記憶全てを喪失してしまう。
全ての記憶を失ってもなお、それでも変わらずに自分を気遣ってくれるエミリア達であったが、自身の記憶喪失が足枷となり事態は何一つ好転しない。
スバルはまるで足手まといの自身を責め、記憶喪失を隠して周りが求める『ナツキ・スバル』を必死に演じようとする。
が、記憶喪失を起こしてからというもの、スバルは全く記憶にないままメィリィを自らの手で殺害してしまうなどといった不可解な行動を起こすようになる。
やがてとうとう仲間からも疑いの目で見られるようになり、「偽物」の『ナツキ・スバル』呼ばわりされる事となってしまう。
訳もわからず、自分のことすら信じられず、ひたすらに『ナツキ・スバル』に対する羨望と自己否定を重ねるが、
それでもスバルを信じ続けたエミリアから自己の存在を肯定され、スバルも自分自身を信じようと何とか精神的に立ち直る。
そして『死に戻り』後、自身の記憶喪失のことも仲間達に打ち明け、もう一度試験攻略のためレイドの『死者の書』に目を通すが…
「ここは、寂しく白い、魂の終着地点。オド・ラグナの揺り籠。――記憶の回廊」
「――あたしたちは、魔女教大罪司教『暴食』担当、ルイ・アルネブ」
「どうせまた、短い間だけど、よろしくね、お兄さん」
レイドの人生を追体験するつもりだったはずが突如として何故か『記憶の回廊』と呼ばれるリゼロ世界の「輪廻転生を司る場所」に飛ばされる。
その場に現れたのは真の姿の魔女教大罪司教『暴食』担当、ルイ・アルネブであった。
概要
年齢は13,4歳程で、透き通った金髪を足元を埋め尽くすほど恐ろしく長く伸ばした美少女。
身体には薄布を継ぎ合せたような粗末な服を纏っている。
一人称は「あたし達」「私達」。
プレアデス監視塔にてスバルが記憶を失う原因となった張本人。
バテンカイトスとアルファルドの妹であるらしく、二人を「お兄ちゃん」「兄様」と呼んでいる。
人物
外の世界を自由に蹂躙している兄達と違い、理由は不明だが彼女は魂と『暴食』の魔女因子だけの曖昧な存在であり、記憶の回廊に「閉じ込められ」て外に出られない模様。
そのため、彼女は外で他者の記憶や名前を権能で自由に選択することができないが、その代わり兄達が奪ってきたものから分けてもらっているらしい。
そういった生活から彼女は二人が奪ってきた人生の「美味しいところ」だけを喰らってきた。
結果、彼女は他人の人生に目新しさを感じることができなくなってしまった。どんなに輝かしい人生であろうと、他人の人生のいいとこ取りをし続けてきた彼女にとってそれはありふれたイベントであり、退屈で古臭い代物であると感じられてしまうのである。
彼女は他人の人生を食らうことに飽いていた。故に、彼女は『飽食』。
ありとあらゆる存在の経験を堪能し、味わい尽くした、人生の飽食者である。
こんな境遇のためか兄達がもってくる目新しさのない記憶にはいい加減飽き飽きしており、普段こそ「お兄ちゃん」「兄様」と呼んでいるが「頭の足りないダメ兄弟」と吐き捨てていたりと根本的には見下している。
外でも自由に活動できる兄達と違い、自身は兄達の体を借りることでしか外で存在できないため、嫉妬に近い感情も抱いていたようである。
ちなみに彼女は兄達を見下しているが、一方の兄達は(彼らなりに)彼女を大事に思っているようで、
彼女の身に危険が迫ったような状況になった際は、普段の振る舞いが嘘のような激昂っぷりを見せている。
彼女も二人と同様に『暴食』の権能を振るうことができるが、二人と決定的に違うのは『日食』を利用できるという事。
『日食』は他者から奪い取った名前から他者の存在を自身へ丸ごと再現できる、という非常に強力な能力であるのだが、デメリットとして長時間使用すると他者の存在に自分自身が乗っ取られ、自我を喪失してしまう恐れがあった。
そのため兄達は『日食』を恐れ利用する事を避けており、優秀な知識や技術を持ってこそいたが、その経験を完璧に生かすことができないという欠点があった。
が、兄達と違いアルネブはもともと確立された自己を持たず曖昧な存在であったため、むしろその性質がアドバンテージとなり、全く問題なく『日食』を利用することができた。
彼女の戦闘能力が二人と比べ段違いである理由はこのため。
彼女はこの性質により、英雄級の戦闘技術を完璧に再現することが可能。
むしろそれどころか他の記憶との応用により元の記憶の持ち主を上回りかねない圧倒的なまでの力量を見せつける事ができる。
言うまでもないが初登場時、外の世界で現れた筋骨隆々の大男の姿はこの『日食』によるものである。
そんな彼女の目的は、兄達と同じく幸せな「最高の人生」を生きること。
しかし、兄達から他人の人生の美味しいところのみを飽きるほど堪能してきた彼女にとってのそれは、
『なんでも思い通りにできる人生』という極めて傲慢で身勝手なものと化している。
「――お兄さんさァ、人生が不公平だって思ったことない?」
「生まれが選べたら、親が選べたら、環境が選べたら、未来が選べたら、全ての選択肢が思うままだったら、誰でもより良い人生を選ぶ。――だから、あたしたちは、時間をかけて一生懸命、私たちにとっての最高の人生を捜してる」
「きっと、どこかにあるッ! あたしたちが胸を張って、私たちらしく! この人生を生きてよかったって、そう思えるバラ色の未来が! その、運命の人生に巡り合えるそのときまで、食って、齧って、食んで、ねぶって、しゃぶって、貪って、暴飲ッ! 暴食ッ!」
スバルを狙った理由は、『死に戻り』の権能を我がものとしたいがため。
いくら素晴らしい人生を送っていたとしても、必ず浮き沈みがある人生で「失敗すれば死んでやり直せばいい」「飽きたらまた別の生き方をすれば良い」というスバルの能力は、彼女から見れば魅力的なものに思えたのだろう。
ちょっと脱線
関連用語
- 『プレアデス監視塔』
リゼロ世界の最東端、『アウグリア砂丘』に存在する、巨大な塔のような建造物。
全知全能の存在と謳われる賢者『シャウラ』の根城とされている。
第6章にてスバル達は『暴食』によって人生を奪われてしまった人々を救うべく、シャウラを目指し監視塔へ赴いた。
その正体はこの世のありとあらゆる理を記した大量の本を保管する巨大書庫。
正式名称は『大図書館プレイアデス』である。
地下1階から上へ上がるごとに若い数字が振られており、
最上階、第一層『マイア』
第二層『エレクトラ』
第三層『タイゲタ』
第四層『アルキオネ』
第五層『ケラエノ』
地下1階、第六層『アステローペ』
と名称がつけられている。
第三層『タイゲタ』から書庫となっているが、同時に試験会場でもあり、書庫を利用するにはその試験に合格しなければならない。試験内容も階層ごとに異なる。
…因みに、この他にも隠された階層『メローペ』が存在するようであるが、詳細は不明である。
- 『死者の書』
第三層『タイゲタ』の書庫に大量に保管されている書物。
一冊一冊に過去の存在した人物の名前がタイトルとして記されており、内容を読むとその人物の人生を追体験できるという謎の代物。
スバルは『エレクトラ』の試験官であるレイド攻略の糸口を掴むため、レイド・アストレアの『死者の書』に目を通す。
- 『記憶の回廊』
別名『オド・ラグナの揺り籠』。四方何もない真っ白なだだっ広い空間。
死亡した者の魂はここに送られ、今まで生きてきた中で培われてきた記憶や経験を落とされて「浄化」され、再びまっさらな魂として現世に送り返される。
落とされた記憶は新たな『死者の書』に事実として残り、『タイゲタ』の書庫へと保管される。
簡単に言えば「輪廻転生を司る場所」である。
アルネブの唯一の住処であり、彼女はここから出られずにいる。
スバルがレイドの『死者の書』に目を通した際、レイドの人生を追体験できずにこの『記憶の回廊』へと飛ばされた理由は、
レイドの記憶が『死者の書』から現世に引っ張り出され、空っぽになっていた本とこの場所が直接繋がっていたため。
関連人物
- シャウラ
ホットパンツに黒ビキニを付け、その上からマントを羽織った美少女。
400年以上も前から存在し、全知全能とされる『賢者』である…
と、目されていたのだが、実際はお世辞にも賢者とは言えないアホの子。現に世間的に噂されている賢者とは全くの人違いであるようで、彼女が話す所によれば彼女の師匠がそれに当たるらしい。
師匠の名は賢者『フリューゲル』。
彼女は何故かスバルのことをその師匠と勘違いしているが…
初代『剣聖』。通称「棒振りレイド」。
アストレア家の中でも突然変異であるラインハルトを除き、最強と評される男。
400年前の『嫉妬の魔女』封印の立役者の一人であり、神龍ボルカニカをも下したという伝説を持つ人物。
当然、現在では既に故人であるのだが、第二層『エレクトラ』の試験官として突如出没。
試験内容は「レイドを一歩でも動かす」という至極単純なものであるにも関わらず、スバル達はそのあまりの規格外っぷりから手も足も出せない状態となってしまっている。
閑話休題。
経緯(※更なるネタバレを含みます※)
劇中、初めにスバルがレイド・アストレアの『死者の書』に目を通し、自分たちの住む『記憶の回廊』に迷い込んだ際に、スバルの記憶を喰らった。
そこで彼の記憶から『死に戻り』の存在を知る。
強い興味をもったアルネブだったが、さすがに相手の魂に取り憑いている魔女因子は『暴食』の権能を持ってしても引き剥がせるものではなく、奪うことは出来なかった。
更に言えば『暴食』の権能は一度喰らった相手を再度喰らうことは出来ない。
そこで彼女は「奪う」のではなく自分たちがスバルに「なればいい」と考え、なんと自身の存在を二つに分割。
片方は『記憶の回廊』に居残り、片方を魔女因子としてスバルの中へ忍ばせ、『記憶の回廊』から解放させた。
そうして記憶をなくしたスバルが『ナツキ・スバル』と別々の存在になることを狙い、再度喰らえる状態になったところを、スバルの魔女因子となったアルネブごと喰らい、『死に戻り』の権能を手に入れる…
これが彼女の計画だった。
劇中でスバルが異世界に来てからの記憶をなくし、自分自身すらわからなくなっていたのはこの計画によるもの。
メィリィを全く記憶にない状態で殺害していたのも、アルネブがスバルの人格を一時的に乗っ取り、メィリィを襲ったため。
スバルに『ナツキ・スバル』への猜疑心を植えつけさせ、「最も身近な他人」と認識させようとしたのである。
計画は順調に進み、スバルが『ナツキ・スバル』を否定するあと一歩というところで、
スバルは自分自身の『死者の書』を発見。
異世界に来てからの『ナツキ・スバル』を追体験し、ようやく『自分』を取り戻し、自分の存在を肯定することができた。
その過程で魔女因子としてスバルの中に潜んでいたアルネブは異物として吐き出された。
アルネブはスバルの中で、念願の『死に戻り』を体験していたのだが…
「――ぁ」
「ぃ、やあああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁああぁああぁぁぁぁ――ッ!!」
「死にたくない! あたしたちは、死にたくない! 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 嫌だ! 嫌だぁッ!!」
彼女が『死に戻り』に感じたのは、幸せに満ちた人生に導いてくれる素晴らしい権能どころか、ただ理不尽かつ不条理に、そして無意味に凄惨な「死」を何度も体験させられる狂気に満ちた呪いであった。
そもそも、人は身体的にも精神的にも、自分の「死の感覚」なんてものに耐えられるわけがない。
スバルが今まで何度も『死に戻り』を繰り返して発狂せずにいられたのは、エミリアを始めとする「自分を支えてくれた人たち」の存在があったからである。
しかし、肉親である実の兄たちですら自分にとってただ利用するための道具でしかなかったアルネブには「それ」が無かった。
今まで単なる「やり直しが出来る権能」だとしか考えていなかった彼女は、故にこそ本当の『死に戻り』に激しく恐怖、更にそれに耐えているスバルの精神性に狂気を感じついに精神が崩壊、見る影も無いほど怯えてしまう。
完全に自業自得だが、このショックは彼女の記憶や精神を完全に塗り潰すほどのトラウマとなってしまい、「幸せになりたい」という彼女の人生目標は、今や「死にたくない」というただただ恐怖に満ちたものへとすり変わってしまった。
彼女は最早自分にとって恐怖の対象でしかないスバルを『記憶の回廊』からなんとか追い出すも、『記憶の回廊』に居残っていた片方のアルネブが現れて計画の進捗を問い質される。
居残っていた方のアルネブは当然『死に戻り』の実態など知らず、『死に戻り』を体験した方のアルネブと再度一つになろうとするが、本当の「死」を理解してしまった今のアルネブには理解していた。
それは『ルイ・アルネブ』が真に『死の恐怖』を知る=『自分』の『死』を意味するということを。
当然スバルの中にいた方のアルネブは涙ながらに拒否するも、居残っていた方のアルネブはあろうことか「『死に戻り』を独り占めしようとしている」と解釈し激昂。
「――ナツキ・スバルは私たちのモノだ。この、泥棒猫」
「――ナツキ・スバルを知ってるのはあたしたちだけだ。この、馬鹿女」
「あたしたちにも味わわせろ――ッ!!」
こうして抵抗むなしく無理やり半身に襲われる形となり、逃れようがない絶望の中でアルネブは再び一つとなってしまうのだった。
自らの快楽に溺れ他人の『幸せな人生』を文字通り『食い物』にして欲望の赴くままに『暴食』の限りを尽くし、自らの『心』を殺してまで『自分だけの人生』を独占しようとした彼女の末路は、皮肉にも自分自身が「最も身近な他人」となり、自分自身を否定することになり、そして自分自身の手によって破滅するという、因果応報ながらどこか寂しくどこか悲しく、そしてとてつもなく恐ろしいものだった。
「――死にたくない」